前回までのあらすじ
 わさわさと登ってきたボーンゴーレムが一党を追い詰める。
 ところで、ボーンゴーレムは大型のクリーチャーであった。一生懸命登ってきたところで、2×2マスのスペースが通路上に無いのであった。しょうがないので、『無理やり入り込む』を行い1×1マスのスペースに立つのであった。そこは一党のど真ん中なのであった。挟撃されるのであった。しかも、『無理やり入り込む』状態だとボーンゴーレムは攻撃ロールにマイナス5の修正を食らうのであった。敵には戦術的優位を与えるのであった。タコ殴りなのであった。イモコに槍でツンと突かれて落下するのであった。落下ダメージ2D10で丁度死んでしまうのであった。ボーンゴーレムは死ぬと爆発して骨を撒き散らし、周囲に大ダメージを与えるのであった。でも、25フィート下に落下して爆発したから一党には何のダメージも与えられないのであった。
 なぜ、登ったし。
 ボーンゴーレムが通路をぐるっと回って段々近づいてくるよりは、いきなり真下の壁を登って接敵してきた方がみんなびっくりするかなー、という軽い気持ちで登ってしまった。今は後悔している。田舎のカンサスに帰りたい。
 こうして一党はボーンゴーレムを討ち果たし、その部屋に隠されていた魔法の物品を幾つか手に入れた。近接攻撃のダメージを+2するアイアンアームバンド(材質は鉄じゃないけど)の他、お守りや手袋を手に入れた。そのいずれにも蛇の紋章が入っている。そして、蛇を象った軍旗。これこそがユアンティの欲していたものであった。
 でも、これ渡すのは不味いんじゃね? 悪に加担することになるんじゃね?
 と、自分達以外の悪には非寛容な一党はユアンティに軍旗を渡すことを躊躇。ユアンティのことをもっと詳しく知ってから対応を練ろうと地上へと戻ってしまう。
 そこで伝手を辿ってユアンティの脅威を訴えている元神官の存在を知る。
 その元神官は世界平和研究所なる看板を掲げたボロ屋にすんでいた。
 一党はユアンティのことをその元神官に尋ねる。と、元神官は、ユアンティは恐るべき邪悪な敵であり対抗するには強大な力が必要だ、と強く訴えてきた。
「実はそのための秘策がある。わしが突き止めたところによると、地下迷宮内に飲んだ者に強大な力をもたらす秘薬があるのじゃ。そこで相談なのじゃが、わしをそこまで連れて行ってくれまいか。わしがそれを飲んで強大な力を手に入れればユアンティもおそるるに足らず。むしろ、その力でわしが呪術王になってわしを追いだした神官のクソどもを皆殺しにして世界平和を達成するのじゃ。協力してくれるな?」
 熱弁をふるう。その手には秘薬の存在を書き記した書物を大事に抱えている。その書物、どう見ても深淵語で書かれているのであった。
「だめだこいつ」
「異形の力じゃねーか」
 とかやっていると、そこへならず者達が雪崩れ込んでくる。
「なんだ、爺だけじゃねーのか?」
「かまわねえ、やっちまえ」
 どうやらユアンティの手の者達のようであった。ユアンティの存在を喧伝する元神官が目障りらしい。巻き込まれた一党は降りかかる火の粉を払う。
 難なく撃破。
 話を聞こうと1人を残して皆殺し。最後の1人を手加減攻撃で倒すのであった。そこへ、ひいひい言って逃げ回っていた元神官が駆け寄ってくるのであった。
「このクソが!」
 倒れたならず者の頭を蹴り飛ばすのであった。ならず者は死んでしまうのであった。
「よし! 殺そう!」
 一党はすっきりした顔で世界平和研究所を後にしたという。




 といったところで、ようやく本筋に入る。
 前回までの冒険における問題は全て解決され、伏線も解消され、何もかもうまくいったのである。ユアンティとの接触や異形の者の秘薬のことなど、もう綺麗に終わった。
 実にまっさらな気持ちであろう。気分を一新して新たな冒険を始める。
 さて一党は『黄金のイニックス亭3号店』にて逗留を続けていた。
 この宿屋、一党の師であるスプリンターと浅からぬ関係にある。ゆえに、一党は請われて住んでやっている。しかも、タダでだ。なんという心広き者達であろうか。三杯目にはそっと出すぐらいの奥床しさだ。
 その日も金も払わず酒などを嗜んでいると、ぴい、と鳴る笛の音が聞こえてくる。どうも貴族の街区から聞こえてくるようであった。
「おや、なんでしょうか? 衛兵の呼び子のようですが……」
 店の主人がそう呟いた。これはもう冒険に出るきっかけ、興味を惹くための引きのテクニックであろう。一党が能動的に冒険へ乗り出すため用意された仕掛け、いわばツッコミ待ちのボケといったところか。一党は大人であるから、そういう細かな配慮を素早く察し、
「お前、見てきて」
 ウルヴェントが台無しにするのであった。一党は自分から動こうとはしないのであった。実に奥床しい。
 しょうがないから店の主人が外行って調べてくる。そしてわかったことは、死んだ婆さんが化けて出た、とのことらしい。貴族街でその婆さんが人を襲ったという。しかも、ここ最近、そのような怪事が頻発しているのだそうだ。
 話を聞いてウルヴェント、
「死んでも生き返るか試してみようよ!」
「なんかオレのこと見てる奴がいるんだけどどうしよう」
 イモコは仲間からの熱い視線を受けて、不安を隠せないのであった。


 生き返った婆さんが誰を襲ったのか、詳細は不明である。ここはもっと詳しい事情を知る者に聞くのが良いであろう。
 ということで、衛兵詰所に乗り込む。衛兵なら詳しいことも知っているだろうという考えだが、別に衛兵に知り合いもいないのに無茶である。
 仕方ないので、衛兵達に酒でもおごって気持ち良くなってもらうこととした。
 黄金のイニックス亭3号店に衛兵達を引き連れ酒食を振る舞う。お値段は30GPほどだと言われたがあまりに過大であろうということで6gpに負けさせた。というか、どんだけ吹っかけてんだこの店。
 ともかく甲斐あって、衛兵頭のナヌーフなる人物との親交を得た。
「つい最近、死者の生き返りがよく起きている。そいつらは近くの人を襲うのだ。今日も貴族の使用人が襲われた。もっとも、襲った婆さんとその使用人は顔みしりでもなんでもなかったらしいが」
 ナヌーフはそう語り、さらに宴席の礼を言ってくる。
「うちらも仲間を失ったばかりでね。くさくさしていたんだ。いい憂さ晴らしになった、ありがとう。……ああ、そうだ。街外れの家宅捜査に行った連中が戻ってこないんだ。ティールの郊外に貴族のアジトを探しに行ったんだが……」
 他にも、物見遊山の若者がカタコンベに確かめに行ったら確かにその婆さんの死体はなかったという話を聞く。死者がアンデッド化していることは間違いないようであった。
 問題は何故そんなことが起きているのか、その原因である。が、めんどくさいから寝た。


 翌日、衛兵頭のナヌーフが一党を呼びに来た。
「お前らは何者なんだ? 法務神官のテホイジァン様がお呼びになっている。すぐにご案内いたしますから昨日はホンマすんませんでした」
 急に平身低頭するのであった。テホイジァンはティールの街の治安責任者であるという。
 一党はあれよあれよという間に神官街区へと連れられ、そこでパレスガードに引き渡され役所の一室へと案内された。
 そこには高位の神官が待っていた。この者がテホイジァンであろう。ザーマス師匠よりはるかに上の位であるようだ。
 さて、テホイジァン。一党に2つのお願いをしてきた。
 1つはティールの街の大貴族ダイアン卿が関わっているらしい『真理』というグループについてである。『真理』はカラク王の復活を目指しているグループなのだそうだ。ザーマス師匠はそのダイアン卿の暗殺を企てたとかで謹慎処分になっている。というようなことを決して口外するな、というのがテホイジァンからのお願いであった。一党はそもそも『真理』なんてグループ名も知らなかったのだが、わざわざ詳細を教えてくれた上に口止めをお願いしてくるとはどういうことなのか。
 2つ目は一党の所持する武器についてである。
「鉱山で得た鉄鉱石から武器を作ったそうですな?」
 テホイジァンは取り澄ました口調で言ったものだ。
「それをお返しいただきたい」
「なんで?」
「治安維持のためです。そのような物を持っていると、あなた方もいつ夜盗に襲われるやもしれません」
「なるほど。では、夜盗に襲われなければいいんですね?」
「いえいえ、街の秩序を守るためにとにかく返していただきたい」
 どうあっても一党から鉄器を取り上げようという魂胆か。だが、一党が拒否の姿勢を貫くと、では……、と待ち構えていたように、
「鉄の武器の所持を当面許可する代わりに仕事を引き受けてもらいましょうか」
 こうきた。
 無茶な難癖つけてきて、相手がそれを拒むと譲歩したように見せかけて面倒事を押しつけてくる。
「こいつ絶対ヤクザ」
 そういうことに詳しいウルヴェントが断言した。
 ……今考えてみると、これって一党も良くやることなのでブーメラン戻ってきたという気もしないでもない。
「先程のダイアン卿がティールの外にアジトを持っておりまして、そこを探る手練のエージェントが必要なのです」
「なるほど。そのエージェントを探して来いということですね! わかりました!」
「違います」
 一党に行けということであった。唯々諾々と従うのもアレなので、
「それにはザーマス師匠の力が必要だから、謹慎解いて?」
 盾にしようという意図である。テホイジァンはそれを受け入れた。解放されたザーマスをこの場へ連れてこさせる。
 久しぶりに見たザーマスは傷だらけのぼろぼろで、
「マジやべっすよ」
 開口一番警告を発するのであった。
「幸福だなあ! ティールの街に貢献できるなんて、我々は何て幸福なんだ!」
 一党はザーマスの警告を受け入れ、自らの幸福さをアピール。不満などこれっぽっちもないことを過剰に表現するのだった。


 さて、ダイアン卿のアジトを探ることを了承した一党。ザーマスを連れて退出す。
「そのアジトに、ダイアン卿が『真理』と関わっている証拠がある、とテホイジァンは睨んでるらしい」
 ザーマス師匠は神妙に語り、
「お上に逆らうのは諦めよう」
 と、地獄を見てきた人間としてもっともなことを言うのだった。
 こうなっては仕方がない。一党はアジトへと向かう。街から半日ばかりの場所だ。
 夕方近くになって、おっぱい型のドームが2つ見えてくる。その2つのドームの間にトーチカのような建物が付随していた。トンネル状の通路でドームと繋がっているようだ。
「これって、衛兵達が帰ってこなかったアジトだよね?」
 何で帰ってこなかったか、その理由はこの後すぐ。
「サメだ!」
 砂漠の砂中から尾びれが突き出し、こちらへ迫ってきていた。
 2匹出てきたが何とか撃退する。これで邪魔者もなくなり、一党はアジト内へと侵入する。ザーマス師匠を先頭に。ザーマス師匠、不満そうである。
「不満なの? ティールの街のために役立つことが幸福じゃないの? 反逆者なの? 死ぬの?」
「幸福だなあ! 幸福だなあ! でも、何でわしが先頭なんじゃよ」
「敵が出てきたら困るじゃん」
「たぶん、敵出ないよ」
「敵出ないなら前でいいじゃん」
「それに、目立っていいじゃん」
「えー目立つのヤダー」
「じゃあ、目立たなくていいから前へ」
 どうあっても前に立たせること、ソビエト共産党督戦隊の如し。
 一党は、まずは右側のドーム内へと入る。
 そこは、焼き物教室のような窯のある部屋となっていた。そこの灰の中に羊皮紙を燃やした跡がある。
 焼け残りを解読する。今思い出したが、字読めたら死刑だったような気がするが気のせい。
『○○するのに確かな方法であるかはわからない○○……しかし生命力の吸収には危険な○○……』
 読み取れるのはこのくらいか。
 あと、部屋の隅には素焼きの粉末が散らばり、その粉の中に赤いものが混じっているのに気付く。どうやら、この赤い粉末、儀式魔法の触媒の一種らしい。
 何かここで儀式が行われていたことが類推された。それが何かはわからない。一党は更なる手掛かりを求めて左側のドーム部分へと向かう。
 そこは木のゲージが並んだ部屋であった。ゲージ内にはミイラ化した動物の死骸が入っている。そして、部屋の中央。そこには木の台があり、その上には干からびた人の死体が横たわっていた。その犬歯は、鋭く長い。
 なんかいやな予感がするのであった。予感は当たるのであった。早速中央の死体が起き上がる。
「たーべちゃーうぞー」
 レベル12クリーチャーだそうです。勝てるかこんなもん。
 一党は部屋から通路へと退く。起き上った死体は後を追って扉を打ち破ってきた。
 一党の攻撃は敵の高い防御値に阻まれて中々届かない。
「アダプティブ・ストラタジェムでワンコにダメージ+5付けてからコマンダーズストライク。ワンコ先生! お願いします」
「ダイス目は17で修正入れてこれだけ」
「それで丁度当たります」
「おいいい!? 17で丁度当たりってどんだけ固いんだよこいつ! こんなん勝てねーよ! でも、しょうがないからアクションポイント使ってもう一回コマンダーズストライク。お願いします!」
「クリっとしました」
「素晴らしい!」
「続けてワンコのラウンド。攻撃して……当たり。アクションポイント使ってもう一回攻撃……当たり」
「おお!?」
「で、一巡してきて……もう一回ワンコでコマンダーズストライクお願いする」
「当てますた。続けて、自分のラウンドで攻撃。当たりです」
「一連の攻撃でダメージ100近くいったんだが……」
 ダイス目17以上で当たりの攻撃を、6回連続で当てるとかマジチート。キャラクターがチートとかよくあるが、プレイヤーがチートだった。
 最後はザーマス師匠が止めを刺し、戦闘は終わった。
 そのクリーチャーは倒れると赤い粉と化して消え去る。これは先程の触媒と同じもののようだ。
 一党はゲージの部屋から、その赤い粉が詰まった素焼きの像を回収。
 これが何なのか詳細は不明ながら、一旦ティールの街に戻ることにしたのだった。


 続きは後日。