前回のあらすじ

 

 ピンチだ。 



 ドゥエルガル達の横暴な要求に対し、一党はじりじりとマグマの部屋の奥へと後退する。
 最早抵抗する意志も力もない。
 そう思ったのだろう。嵩にかかったドゥエルガル達は哄笑を浴びせかけてきた。
「さあ、ヒスイを渡せ。命が惜しいだろう?」
 だが、一党はその間にこっそりヒーリングポーションを飲み、HPを回復していたのだ。
「おいおい、やる気かよ? バカな奴らだ!」
 ドゥエルガル達の理不尽な脅しには屈せぬ。と、一党は今再び武器を構えた。
 ドゥエルガルのリーダーが正面から突っ込んでくる。それを、一党の前衛が受けて立った。リーダーは武器を振るうだけでなく、毒針をも撃ち込んでくる。
 他のドゥエルガル達は鎧の薄そうな後衛を狙ってきた。具体的にいうと、ウルヴェント狙い。マグマ地帯に入ることも厭わず、ウルヴェントを攻撃できる位置へと移動してくる。
 だが、それが誤算であった。
 思ったより、ウルヴェントが固い。
 棍棒を振るおうとも、礫を放とうとも、ウルヴェントにかわされてしまう。
 逆に、隊列を崩してバラバラになってしまったため、各個撃破。
 重傷になったドゥエルガルリーダーがマジギレして巨大化したりしたものの、ろくにダメージを与えることなく倒されてしまった。
 気付いてみれば、ドゥエルガルの斥候が1人生き残るだけとなり、その斥候は、
「わ、わかった、悪かった。もうお前らには手出ししないよう族長にも伝える。だから、助けてくれ」
 と命乞い。
 一党はボードン家のドゥエルガル達を完全に打ち破ったのだった。


 さて、ヒスイを手に入れ目的を果たした一党。スキップも軽やかに地上へと戻る。
 その途上で、である。
 長く続く地下通路。その先に何やら人影が見えるではないか。フードを目深にかぶり表情は見えない。暗闇の中、何か擦れるような音が通路内に響いている。
 どう考えても怪しい。
 一党は更に戦闘が続くのかと警戒する。
 と、その人影は手を掲げて挨拶してきた。
「やあ、君達が勝ち残ったというわけか」
 何のことであろう? 一党は顔を見合わせ、眉をひそめる。
「他にもヒスイを求めて地下迷宮に潜り込んできた者達はいたが、結局生き残ってヒスイを手にしたのは君達だけだったということさ」
 フードの男は訳知り顔である。その顔はフードで見えないわけだが。
「そのフードを取れ。まずは顔を見せろ」
「フードを取ったら、君達驚いちゃうと思うんだ」
「いいから」
 一党の言葉に男は、ならば、とフードを外す。そこで露わにされたのは、
「蛇人間か……」
「ユアンティだよ。そして、後ろにいるのは僕のペット達だ」
 そのユアンティの背後から聞こえた擦れるような音は蛇達の這いずり回る音であったようだ。一党の手が武器にかかる。だが、
「まあ待ってよ。別に君達とやり合うつもりはないんだ。ただ、君達のその腕前に敬意を表してプレゼントを持ってきただけさ」
 ユアンティはそういうと、一党の足元に巻物を一束投げてきた。見れば、それは地下迷宮の一角を示した地図のようだ。
「その地図に記されている部屋に宝物が隠されているんだ。もともとは僕達ユアンティのものだけどね。それを君達に上げるよ。好きに持っていってくれて構わない。ただ、その宝物の中に魔法の旗が一竿あるはずなんだ。それを僕にくれたら、お礼をしよう。ヒスイ鉱石を1つ上げようじゃないか」
 地図の通りに進めば、問題無くその部屋まで行きつけそうである。だがしかし、旗一本持ってくるだけでヒスイをくれるというのはあまりにうますぎる話。当然、理由があるわけで、
「ただその部屋には宝を守る番人がいる。でも大丈夫、きっと君達なら持ち帰ることができるよ」
「自分で取りに行けば?」
「いやいや、とても僕なんかじゃ敵わない」
「そんなことないって。まずはあなたが先にその番人と戦って、その後我々がその部屋に乗り込めばきっと倒せるよ」
「君達は本当に面白い人達だな」
 ユアンティは友好的な蛇の顔で告げてきた。


 一党は一旦ティールの街に戻る。依頼を果たした報酬を受け取るためだ。
 まずはワビール家へ。
 ヒスイは2つあったのだが、そのうちの1つは鍛冶屋で鎧と交換してもらうために取っておくこととする。
「そうですか、1つしか手に入れられませんでしたか」
「俺達もすごく頑張ったんだけどね!」
「わかりました、報酬をお支払いしましょう」
 というわけで、1人当たり300GPを手に入れる。さらにクエスト達成。パーティ全体で600EXP。更にドゥエルガル達を倒したことで、ウィンストンの個人クエスト達成分150EXPが加点された。
 次は鍛冶屋。ヒスイを渡してデスカットアーマー+1を入手して、それをワンコに。その他各人自分にあった+1アーマーを購入して防備を整えた。
 他にも、この世界では文字が読めると殺されてしまうはずなのに、ついつい図書館ロールに成功。かつてユアンティ達がカラク王によって地下の奥深くに封印された邪悪な種族であり、いずれ蘇ってくるであろうという伝承を知った。


ドゥエルガルの突撃兵(経験値250)×1=250
ドゥエルガルの衛兵(経験値175)×2=350
ドゥエルガルの斥候(経験値175)×2=350


クエスト達成(ヒスイをワビール家に届ける)600
個人クエスト達成(ドゥエルガル達を見返す)150


1人当たりEXPは425EXP


 前回の分のEXPとここまでの分のEXPで各人のEXPは3883EXPとなりL4にレベルアップ。
 だったのだが、一党は生き急いでいたのでレベルアップ作業をしないまま、ユアンティから示された宝のある部屋へと向かってしまうのだった。
 ある意味致命的など忘れであって、困ったな。
 でも進める。
 一党が辿り着いたのは大きな部屋だった。天井も高い。
 部屋の真ん中あたりに彫像が立っている。その付近にうずたかく積まれた骨の山。床には大きな穴が二つ、ぽっかりと開いていた。
 部屋の縁には段々と高くなっていく通路が続いている。部屋を四角く囲うような形だ。まず階段を上って5フィートの高さの通路が続き、その先に更に階段があって通路の高さは10フィート、15フィートと上がっていく。最終的には高さは25フィートにはなるだろう。見上げれば、その最も高い通路部分の壁に小さな扉が見えた。ついでに怪物達も。
「侵入者~!」
 そう叫びながら半透明の人影が舞い降りてきた。ファントム・ウォリアーだ。更に燃え盛る骸骨が高い通路の上から火の玉を投げつけてくる。他にポンコツスケルトンが壁際でじっと立っていた。よく見ればそのポンコツスケルトン、壁から出ている2本のレバーを掴んでいるようだ。
 戦闘が開始される。燃え盛る骸骨、ブレイジングスケルトンの攻撃は鬱陶しいものの、ファントムウォリアーは何なく撃破。これは楽勝か、と思われたその時、うずたかく積まれた骨の山が軋んで動き出した。「侵入者~」という叫び声に反応して、ボーンゴーレムが起動したようである。
 このボーンゴーレム、恐ろしく嫌な気配がする。どのくらい嫌な気配かというと、レベル10精鋭モンスターみたいな嫌な気配である。まともにやったら絶対に勝てない相手だ。一党は距離を置いて遠距離から安全に攻撃するために、段々高くなっていく通路上へと移動した。いざボーンゴーレムが接敵してきたら、通路から押し出して落下させようという腹積もりもある。
 思った通り、ボーンゴーレムは一党のあとを追ってくる。一党は距離を保つために通路を進んでいった。
 と、イモコが通路のとある地点に足を踏み入れた途端、ポンコツスケルトンが手にしていたレバーの一本を引くではないか。
 がこん、と通路がばねのように弾け、その上にいたイモコを宙へと放り出す。イモコ、STに失敗して落下。そして、その落下先は丁度床に開いていた穴の中であった。落下ダメージ。さらにその穴の中には粘々した液体が詰まっていて動けない状態に。
 罠であった。
 それから色々やってイモコも何とか抜けだし、そこから登攀で通路上に戻る。
 だが、このままではポンコツスケルトンにまた罠を作動させられてしまう。一党は標的をポンコツスケルトンに変える。
 そうやっている間にもボーンゴーレムは近付いてくるわけで、何とか足止めしようと距離を詰めると骨爆発してくるわ、接敵すると尖った骨が刺さってきて無条件でダメージ食らうわと酷い敵である。ACも高く、こちらの攻撃がなかなか当たらない。こりゃぁいかんな、と1日毎パワーやアクションポイントを駆使してダメージを相当重ねてもまだ重傷になっていないというタフさ。
 一度通路から叩き落としてもみたのだが、わさわさと通路を登攀してくる。全然効いていないのか。
 一党は25フィートの高さの通路上でそれをどう迎え撃つか、というところで時間切れとあいなった。
 たぶん、みんな死ぬんじゃないかな。