それまでの呪術王が死に、奴隷解放がなされたティールの街。
 そこへ砂漠を越えて辿り着いた、食い詰め者の一党があった。
 ドワーフとヒューマンの特性を受け継ぐムル族のファイター、一時的ヒットポイントもりもりウィンストン。
 黒き肌のドラウであり、いつも通り酷い秘術使いソーサラーのウルヴェント。
 水の元素を体現するジェナシのウォーロードで、綺麗な手をしているイモコ。


 一党はティールの街の中堅商家の1つホルミーク家の護衛として雇われる。そして、その屋敷への襲撃を撃退することに成功した(主にウルヴェントが1人で。使っちゃいけない秘術バンバン使って)。
 呪術王の死後、ティールの街を支配する各商家の間では勢力争いの不穏な空気が漂っているようであった。


 そんな中、ホルミーク家も傘下に収めている大商家のワビール家から一党に声がかかる。ホルミーク家襲撃事件での一党の手際を見たワビール家番頭ムラービトより、荒事の頼みごとである。
 番頭ムラービトは言う。
「ティールの街で一番の商家ボードン家は街の北に鉄鉱山を持っている。その鉱山の様子を探ってきてはくれまいか」
 聞けば、呪術王ティシアンの死後、ボードン家は自らの所有する鉄鉱山を立ち入り禁止にし、警戒も厳重にしているのだという。
 鉄といえば大変な貴重品である。ボードン家は鉄鉱石の流通を独占して莫大な富を得ているらしい。
 その商売敵の鉄鉱山を探ってこい、とはワビール家番頭ムラービトには如何なる意図があるのだろうか? なんてことは全然考えず、
「いいっすよ」
 と簡単に引き受ける一党。
 探るべき内容は主に4つであった。
 ①鉱山にいる奴隷は解放されているか?
 ②働いている奴隷の数は?
 ③警備の人数は?
 ④採掘状況。具体的には鉱山の外観を調べて見取り図を作成、といったところか。
「最近、街の外では『ガチムチの花園団』なる解放奴隷の盗賊集団が跋扈しており治安が悪化している。気をつけて行くのだな」
 番頭ムラービトの警告を背に、一党はワビール家を後にした。


 『ガチムチの花園団』は恐ろしい集団で、奴隷解放を旗印に活動しているらしい。一党は以前にも彼等に遭遇したことがあるので知っていた。
 彼等に賛同しない者は食料にされ、彼等が過酷な砂漠を生き抜くための糧とされる。
 一方、彼等に賛同した者は尻を差し出さなければならない。
 いずれにせよ、食われてしまう。恐ろしい人食い集団だ。


 それはさておき、一党は鉄鉱山についての情報を集めることにした。
 こういうときは鉄鉱山に関する過去の逸話を顧みるべきであろう。と、ウォーロードのイモコが歴史を紐解くと1の目が出てファンブルで頭が爆発、お利口トムの称号を得た。
「歴史的にみて、鉄鉱山では鉄が採れるらしい」
 イモコの博識に一党は深く感じ入り、さっさとウィンストンが事情通で調べたところによると、鉄鉱山は一名を鬼の哭く山として知られ、奴隷達から恐れられていたという。過酷な労働を強いる鉱山であるようだ。
 一党は鉱山のことをより詳しく知る者を求めて、ティールの街を彷徨う。
 職人街では、お喋りハーフジャイアントの武器職人カーレンから色々買い物してやったのにこれといったことも教えてもらえず仕舞い。「おまえらが一仕事終えたら何か教えてやるよ」といった、次の冒険に含みを持たせることを匂わされたに留まった。
 旅の隊商が行きかうカバーン通りにある酒場はでかい。ブイブイいわせている。そのうちの一軒、『おめえなんじゃ?マハラジャ』亭なる酷い名前の酒場では、鉱山方面から来た商人は居ないということを確認する。
 商家同士のいざこざ関係の話なら、商家に聞くのが良い。そう考えた一行は以前護衛したホルミーク家も訪れ、鉱山には重罪人が送られていたこと、ボードン家がその利権を守るためティールの街の神官に莫大な賄賂を渡しているらしいことを聞く。
 そこで一党はいよいよ鉄鉱山に乗り込むこととした。だが、この人数ではいささか心もとない。そこで一党はエロ詩吟の師匠ザーマスに助勢を求める。イモコの詩吟の師匠であり、その卓越した“全く秘術でも何でもない”パワーには一目置かれていた。
 一党が鉄鉱山に行くことを告げると、ザーマスは渋りだす。
「なんでそんなところへ行くんじゃ」
「鉱山でかくれんぼするのが流行ってるんですよ」
 ドラウのウルヴェントがいけしゃあしゃあとうそを吐く。
「気が進まんのう。気分が乗らん」
「そんな心なんか後からついてくる。ていうか心なんかいらねえ」
 ウルヴェントの熱意あふれる説得に負け、ザーマス師匠は快く同行を承諾するのだった。


 さて、そうして準備を整えた一党は鉱山へ急ぐ。と、先の方に街道が岩に囲まれている場所が見えてきた。その岩の陰で何やら大きな物が動いている。
 一党が警戒しながら近付けば、そこにいたのは2匹の大グモ、クリスタルスパイダー。頓挫した馬車の周りで倒れ伏す者達を食らっているようだ。
 一党は馬車の積荷を頂くことを目的として、クモどもを倒すことにした。全然、馬車の周りで倒れている連中の安否など気にしない。
 ザーマスの“秘術でも何でもない”パワーやウルヴェントの遠距離攻撃でクモ達は傷つき倒れ、ウィンストンのハンマーで止めを刺された。今回もイモコの手は綺麗なままだ。
 そうしてお楽しみの身ぐるみはぎはぎタイム。馬車は日用品や雑貨を積んでおり、どうやら鉱山へ向かう途中だったらしい。馬車の周りで倒れていた者達は大変とても残念なことに既に全員死亡していたので涙をのんで武装をはぎ取る。うち1人が胸から木札をぶら下げていた。そこには黒いダイヤモンドの絵が描かれているではないか。黒いダイヤといえばボードン家の紋章である。これを身分証明として差し出せば、鉱山にも入り込めるかもしれない。
 一党は戦利品に満足し、亡骸を埋めもせず、馬車だけは後日持ち帰るために物陰へ隠し、先を急いだ。


 いよいよ鉱山の姿が見えてくる。高台で露天掘りされているのがそれだ。
 と、そこでウルヴェントが砂漠の片隅に人影を見る。どうやらどこぞの斥候のようだと見てとったウルヴェント、あほの子のようにその斥候へ嬉々として走り出す。脈絡がなく、一党の残りはそれを追いかけるしかない。
 その斥候は砂丘を駆けおり、その麓に待機していた中型砂上帆船へと向かって行く。その帆船に掲げられた紋章は『ガチムチの花園団』のそれではないか。
 何人かのガチムチがうっそりと現れ、そのうちのリーダー格がゆっくり歩み寄ってくる。それに向かってあほの子のように手を振るウルヴェント。
「俺はガチムチ35人衆の1人、パイプ・カツだ。おめえらは何もんだ? 俺達がガチムチの花園と知ってて近付いてきたのか?」
「知ってる知ってる。ガチムチ35人衆の1人とは友達だし」
 ソーサラーのウルヴェントはその高い魅力を生かして、彼等から情報を引き出そうとする。
「あの鉱山を見張ってたってことは、あなた達も鉱山のことを探ってたんでしょう? 仲間仲間」
「35人衆の1人と知り合いだぁ? 誰だ、言ってみろ」
「そんな昔の話を蒸し返されても困るな」
 前々回ぐらいのプレイの記憶を求められても困るのである。
「10数えるうちに思い出せ。さもないと……。いーち、にーい……」
 パイプ・カツは無情に時を数えだすではないか。このままでは食われてしまう。一党はキャラシーをひっくり返して、前々回のプレイの記録をどこかに書き残していないか探すのだった。
「あった。そいつの名前はマイぺイランだ。ここに、ティールの街のコロシアムでその名前を出せばいいことしてくれる、って書いてある」
「ああ、昆虫人間の……そんなのいたね」
 マイぺイランの名前を聞いたパイプ・カツは一党を信用したようだ。
「そうか、マイぺイランの知り合いか。あいつは元気だったか?」
「まるでカマキリみたいに元気だったよ」
 そうやってガチムチ団からとりあえずの信用を得た一党は、彼等から鉱山の話を聞くことができた。
「あの鉱山には千人からの奴隷が未だこき使われている。俺達はあそこを襲って奴隷達を解放したいんだが、いかんせん警備が100人ほどいて手が出せない。せめて、あそこを守ってる拠点兵長のハートキャッチ様ってのをぶっ殺してやりたいんだが……」
「そのハートキャッチ様ってなんだよ」
「心の種を植え付けてくるらしい」
 どうやら強力な意志攻撃を仕掛けてくる相手のようだ。
 一党はさらにガチムチ団から鉱山の見取り図まで手に入れた。
「鉱山は北鉱区と南鉱区に別れていてな。北鉱区には奴隷達の住居やらがある。南鉱区が実際の採掘現場だ。ただ、南鉱区では最近夜に死人が徘徊してるとか噂があるらしく、奴隷達がそこへ行きたがらないらしい」
「まあ、そんな細かいことまでペラペラ教えていただいてどうもありがとうございます」
「で、俺達はおめえらを信用してここまで教えてやったんだ。そっちはあの鉱山の何を教えてくれるっていうんだ?」
 対価を求められて俄然雲行きが怪しくなってきたのであった。このままでは食われてしまう。
「じゃあ、俺達はこれから鉱山に潜入して情報を探ってきますよ。それをあんた達に教えるってことで」
 危機回避のために後先考えずそう約束する。ガチムチのパイプ・カツは、ならば、と、
「潜入するってんなら俺達が夜中に陽動で北鉱区を夜襲してやるよ。その隙におめえらは南鉱区から入り込め」
 なんだか引き返せない風に話が進んでいくのだった。
 実際問題、もうここで番頭ムラービトからの依頼は達成したようなものである。奴隷の人数や警備の状況、採掘状況もある程度判明した。であるから、ここは潜入するという話だけ合わせて実際にはとっととティールの街に帰ってしまえばいい。いいのだが一党は、なんかせっかくだしこのまま帰るのももったいなく、なら鉱山内部に入り込んでみようかな、という論理的に欲の皮のつっぱらかった気分になったのでそうすることとした。


 さて、夜半も過ぎ、手筈通りに北鉱区で夜襲が始まる。
 一党は見張りも姿を消した南鉱区へ、まんまと潜入したのだった。
 然るに、師匠ザーマスはいかにも渋々といった態。何か懸念することがあるらしい。どうもこの地について知っていることでもあるのではないか。その疑問にザーマスは是なりと応える。
「実はこの鉱山には古代の遺跡が眠っておる。そして、それを守る連中もな。ここ最近の噂を聞くに、ここの鉱夫達は何か掘り当てちまったんじゃねえか」
 何かって何だ。
「たとえば、そこのそれとか」
 ザーマスが指差す。道の先にふらふらと揺れ動く人影あり。ゾンビだ。正式名称は忘れた。しかも前方だけではない。左方右方おまけに後方より一体ずつ。囲まれているではないか。
 これは挟撃される前に各個撃破するのが望ましい。
 一党はそう判断すると、手早く手近の一体に狙いを定めた。攻撃を開始する。その最中、
「私にいい考えがある」
 コンボイ司令官よろしくイモコが言う。そしてすぐさま、ファイターのウィンストンにマイナーアクションで戦術を授けた。これでウィンストンは1ラウンドの間ダメージロールに+5の修正だ。そのあとイモコは移動開始。が、どういうつもりか、あえてゾンビの脇を横切るではないか。
「あたいを攻撃しますかい?」
 イモコの問いに、マスターは殺意をむき出しにする。当然行われる機会攻撃。だがしかし、そのゾンビをマークしていたウィンストンがそれに割り込む形で、先にゾンビの隙を突き一撃した。
「あえて機会攻撃を誘発することにより、ファイターの攻撃機会を増やすという策よ。しかもゾンビはマークされているから、私を攻撃する際攻撃ロールに-2のペナルティがつく。当たらなければどうということはない。見よ、この知略」
 ゾンビはペナルティを食らっていても易々とイモコに痛撃を与えてきた。
「あれ……? だが、まだだ。一気に畳みこんでくれるわ」
 イモコはゾンビに切られながらもそのまま移動を続け、そのゾンビをウィンストンと挟撃できる位置についた。
「ここで槍をツンツン、コマンダーストライク。ゾンビの注意をこちらに惹きつけている間にウィンストンに近接基礎攻撃してもらうパワーを発動。その際、私の知力修正分さらにダメージを上乗せできる。先程のダメージロール修正分と合わせて+10ダメ。それと、挟撃による戦術的優位に、さらに味方に攻撃させるパワーを使用した際その味方の攻撃ロールに+1させる特技も発動されるので、攻撃ロールにも+3の修正だ。勝った」
 当たったけど、ゾンビは死なないのであった。
「まだだ。まだ終わらん。さらにアクションポイントを使って、もう一回コマンダーストライク」
 意地でも自分で攻撃しないイモコ。いつも綺麗な手をしている。極力ダイスを振りたくないという業病を患っているので仕方がない。
 でも、死なないゾンビ。
「……」
 イモコの行動は終了した。
 あとはウィンストンとウルヴェントが危なげなくゾンビ達を各個撃破して終了。
 特にウィンストンは一回攻撃するごとに一時的HPを6とか10とか得るという、血に飢えた酷いファイターなので、1発2発ゾンビから食らっても痛くもなんともないようであった。別に、イモコがあえて機会攻撃を受けてまでウィンストンの攻撃回数を増やさなくても、普通に殴りあっていれば一党はほとんど無傷で終っていたであろう。


 そんなことより、ザーマスによればここには古代の遺跡があるという話であった。遺跡といえばお宝。ということで一党は任務とは全然関係ないような気もするが、このゾンビ達の存在は遺跡が確かにあることの証明である、と極めて論理的推論に基づき、欲の皮をつっぱらせるのであった。遺跡を探し始める。
 どうもこのあたりからマスターの意図していたシナリオから逸脱し始めたような気がしてならない。少なくとも、今の時点で遺跡内に入るのは想定されていなかったのではないか。その証拠に、師匠のザーマスはますます気乗りしなさそうである。
「本当に中に入るのか?」
 一党が人の顔みたいな岩山に奇妙な入口を見つけた時、彼はそう言ったものだ。
 当然、そんな声は無視して遺跡の中へ。
 と、そこには未開部族ヒジュキンの一団が巣食っていた。
 困ったことに、ヒジュキン達はドワーフ語を解するようであった。そしてさらに困ったことに、こちらにはドワーフ語を解するウィンストンがいる。
 言葉が通じなければ心おきなく皆殺しにできたのだが、言葉が通じるとなれば仕方がない。交渉する。それに、ここで戦闘になって時間を取られるのも嫌だったというのもある。そろそろ帰らないといけない時間が見えてきていたからだ。
 さて、ヒジュキンの長老は遺跡の奥に続く扉の鍵を持っていた。長老の言うには、その扉の奥は大変危険で、おぞましいものがいる。決して扉を開けてはならぬ、とのこと。
 しかし、鍵を開けてもらわねば遺跡の奥に進めぬ。一党はなんとか鍵を得ようと試みる。
「欲しい物は無いか? 苦痛のない死か、苦痛のある死か」
 最も魅力の高いウルヴェントが交渉術を駆使する。だが、ダイスの目が振るわない。ウルヴェントは交渉ではなく皆殺しでの解決をお望みのようであった。
「とにかく、扉を開けると中から悪いものが出てくるから開けたくない」
「じゃあ、俺達を入れたらすぐ閉めて良いよ」
「すぐ閉めて鍵かけるぞ? それでもいいか?」
「いいよ。中から出るときは合図として3回ノックするから、そしたら鍵開けてくれ」
 ということで妥協点を見出し、ようやく奥へと進む扉を開けてもらう。
 早速一党は遺跡の奥へと侵入した。その際ヒジュキン達は怯え、速攻で扉を閉め逃げ去ったようだ。
 試しに3回ノックしてみた。応答は無い。しかも当然、外側から鍵はかかっている。
 出られなくなってしまったわけだが、しばし待てと。
 先程のゾンビ達はこの遺跡の奥のどこかから湧いて徘徊していたわけで、となると必然的に抜け道の可能性が考えられるのであった。ヒジュキン達が鍵をかけている扉以外に出入り口が無ければ論理的におかしいのである。だから全然、閉じ込められたとか心配しなくていいのだ。
 以上のような論理的帰結により、一党は少しも慌てず奥へと進む。交渉なんかしないでぶっ殺して鍵奪っとけばよかったなんて少しも思わないのであった。


 遺跡の奥は暗い。明かりを灯し透かし見れば、通路の先に大きな部屋が見えてくる。その中央には骨。どうも恐竜の骨のようだ。
 ああ、これは絶対動き出すな、という予感の元、出入り口付近から部屋内の様子を窺う。と、中には炎に包まれたスケルトンやら塩漬けゾンビやらがうじゃうじゃいるではないか。
 広い場所で戦うのは囲まれて不利。そう判断した一党は通路を後ずさりつつ、中央の恐竜の骨を攻撃。その正体は何だかわからないが、これを破壊する。
 一方、アンデッド達もにじり寄ってくる。炎スケルトンが火の塊を投げつけてきた。イモコが炎に包まれる。
「継続火ダメージ5、セーブで終了」
 とのマスターからの言葉なので、イモコは通路の陰でセービングスロー。8。失敗。燃える。
 次のラウンド。イモコは通路の陰でセービングスロー。8。失敗。燃える。
 次のラウンド。ダイスを変えてセービングスロー。8。失敗。燃える。
 20面ダイスで3連続同じ目とか、実に8000分の1の確率ではないか。何もしていないのに、イモコはもう死にそうである。
 イモコが1人、篝火のように燃えて視界を提供している間に、ウルヴェント達の遠距離攻撃は次々とアンデッド達を撃ち滅ぼしていく。で、もう戦闘終わりとなったところで、ようやくセービング成功。そして、イモコは自らの過ちに気付いた。
「……あ! 俺、継続ダメージのセービングスローに+2の修正持ってる生き物だった!」
 忘れてた。
「じゃあ、最初のセービングスローで成功してたんじゃ……」
「マスター、というわけでこの火傷によるhp減少は無かったことにしていい?」
「だめ」
 鬼アクマ鬼畜マスターの所業のせいで、イモコは深い傷を負うことになったのであった。


 さて、そんな間抜けは放っておいて部屋内を調べる。もちろん、金目の物を探してのことだ。だが、期待したものは得られず。ただ碑文のようなものを見つけたのみである。曰く、
『はじまりの頃、原初の時。
 ウルアスラとその遣いの者達が世界を創造した。
 しばらくしてプライモーディアルが形のない空間の支配権を要求した。
 風と怒りの創造物であるウルアスラは嵐の力で支配を続けた。
 ウルアスラは自分の力をクラウン オブ ダストに込めた。
 ウルアスラが世界を去った時、クラウンの破片が残った』
 それらの言葉と共にレリーフが彫られており、それは王冠を表しているようであった。
 何やら実にいわくありげな様子ではあるが、一党にとってはどうでもいいのであった。金にならない。
 一党はその部屋を後にし、その奥へと続く扉を開ける。


 そこは、いかにも怪しげな大釜が据え付けられた部屋であった。部屋内には蛇人間の彫像が幾体も林立し、どこからか風の音がする。そして、部屋の隅には見上げんばかりの巨躯をした骸骨が。
 どう考えてもこいつ動くな、という予感の元、一党は部屋内に入り込む。と、部屋の反対側から屑デーモンが2体湧いて出た上に、やっぱり骸骨は動き出したではないか。
 戦闘開始。骸骨はボーンコンストラなる名前のアンデッドで奇妙なオーラをその身に纏っていた。が、その効果はもう忘れた。なんか思ったより脆かったのを覚えているのみ。楽勝ムード。残りはデーモン達だけである。
 で、どうも部屋内に罠が仕掛けられているらしい。そのため、イモコは挟撃位置に移動しようかどうか迷っていたのだが、マスターの言葉「大丈夫、入っても死んだりしません」を信じて中に入り込む。と、蛇人間の彫像の下から猛烈な風が吹き出して、イモコをコロコロ転がした。そして、部屋に据え付けられていた大釜にそのままダイブ。
「継続死霊ダメージ5、継続火ダメージ5、さらに動けない状態になります。セーブで終了」
 普通に死ぬではないか。とんでもない嘘つきがいた。だが、イモコ少しも慌てず。
「もう学習した。俺は継続ダメージのセービングスローには+2の修正がつく生き物。今度は8の目が出ても成功よ」
 ダイスの目は1。もう死ね。イモコ死ね。
 でも人生という名の冒険は続く。