相続トラブルを避けるために⑧ 遺留分とは何か
こんにちは。弁護士アサコです。
相続のご相談で、実はとても多いのが、
「父は長男にすべて相続させるという遺言を残していました。これは有効なのでしょうか?」
というものです。
結論から言うと、遺言は原則として有効です。ただし、ここで重要になるのが、今回お話しする 「遺留分(いりゅうぶん)」 です。
遺留分とは何か
遺留分とは、一定の相続人に法律上保障されている、最低限の取り分のことです。
被相続人(亡くなった方)は、自分の財産を誰にどれだけ残すかを原則として自由に決めることができます。しかし、その自由を無制限に認めてしまうと、残された家族の生活が立ち行かなくなる場合があります。
そこで法律は、
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配偶者
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子(代襲相続人を含む)
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直系尊属(親など)
に対して、最低限確保される相続分=遺留分を認めています。
※兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の割合はどのくらい?
遺留分の割合は、相続人の構成によって異なります。
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配偶者や子が相続人の場合:
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法定相続分の 2分の1
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直系尊属のみが相続人の場合:
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法定相続分の 3分の1
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例えば、 「配偶者と子1人」が相続人で、遺産が2,000万円の場合、
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法定相続分:
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配偶者1,000万円、子1,000万円
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遺留分:
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それぞれ 500万円ずつ
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が最低限保障される、という計算になります。
遺留分は「もらえる権利」ではなく「請求する権利」
ここはとても誤解が多い点です。
遺留分は、自動的にもらえるものではありません。
遺留分を侵害する遺言や生前贈与があった場合、 相続人が自ら「遺留分侵害額請求」をしなければ、何も起こりません。
請求しなければ、 「長男がすべて相続する」という遺言も、そのまま実現してしまいます。
判例で確認された重要なポイント
ここで、遺留分をめぐる重要な判例の考え方をご紹介します。
遺留分は「物」ではなく「金銭」で請求する
以前は、 「不動産の持分をよこしてほしい」 といった形での請求が問題になることがありました。
しかし、現在の考え方では、
遺留分侵害額請求は、侵害された分に相当する金銭を請求する権利である
とされています。
つまり、
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家そのものを共有にする必要はない
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評価額を基に、金銭で精算する
という形になります。
この考え方は、相続人同士が不動産を共有して、かえって紛争が長期化することを防ぐという点で、非常に実務的な意味を持っています。
遺留分には「時効」があります
遺留分侵害額請求には、厳格な期限があります。
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相続開始と侵害を知った時から 1年
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相続開始から 10年
この期間を過ぎると、たとえ遺留分を侵害されていても、請求できなくなります。
「知らなかった」「納得できない」では済まされません。
まとめ:遺留分は最後のセーフティネット
遺留分は、
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相続人の生活を守るための制度
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ただし、行使しなければ意味がない権利
です。
遺言を書く側にとっても、 遺留分を無視した内容は、結果として相続争いの火種になることが少なくありません。
「想いを伝える遺言」と「争いを防ぐ相続」 この両立のために、遺留分の理解は欠かせません。
次回は、遺留分をめぐる実際のトラブル事例についてお話しする予定です。
原稿をキャンバスに用意しました。
今回の構成は、
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遺留分の基本的な考え方
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数字を使った具体例
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「自動的にもらえるわけではない」という実務で一番誤解されやすい点
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判例で確立した 「金銭請求になる」 という重要ポイント
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時効という落とし穴