勿忘草 -2ページ目

勿忘草

【勿忘草(ワスレナグサ)】
川を流れる美しい花。
あなたのためにその花へと手を伸ばし、しかしそのまま川の流れに足を取られてしまう。
せめてこの花だけでも…そしてもしも叶うなら…
―― 私を忘れないで ――

さあ空を飛びましょう。



あなたの背中にある筈の
真っ黒で歪な翼を広げて
排気ガスと二酸化炭素に
まみれて汚れたこの空を
悠々自適に舞いましょう


今あなたは自由です。
誰にも何にも縛られず
好きな言葉を吐いて
好きなように振る舞って
想像したものを創造し
それに正解も不正解も無く
もちろん善悪だって無く
ただ心の求めるままに。



歪な翼は長くは飛べず
いつかは墜落する運命だとしても。
固い地面に叩き付けられ、
無様に内臓を撒き散らすのだとしても。
排気ガスと二酸化炭素の中
大きな声で叫んだ想いは
世界に爪痕を残すのでしょう。






かつて神だったあなたの姿は黒く汚れて
醜悪に笑うその容姿は悪魔と例えられる他はなく。
それでもどす黒い内臓を吐き出した抜け殻はきっと
天使に支えられて在るべき場所に還るのでしょう。
純粋無垢な心は汚い世界に耐えられず
自我が芽生えたその瞬間から泣きはらしてもはや見る影もなく。
あなたを悪魔足らしめたこの世界に唾を吐きかけながら
浄化された魂は天へと昇るのです。




誰よりも純粋で臆病な天使。
このクソつまらねえ世界で諦める前に
どうか、どうか。
あなたの叫びを聞かせてください。