ブラックベリーの苗を買った。


私が初めてブラックベリーを見て口にしたのは7年前。

旅行先のドイツ、ケルンの中心部にある市場で購入し、ベンチに腰掛け食べたのが一番古い記憶だ。


初めて目にするブラックベリーは深いブルーに輝き、光沢のある黒い色はちょうど指にはめていたオニキスの指輪とよく似ていた。



こんなにきれいなフルーツがあるのかと感動しながら食べた事を思い出す。


職人の国と言うだけあり、街を歩くだけでも芸術と物作りの文化が色んな所で垣間見え、初めてのヨーロッパ旅行は刺激的で圧倒されっぱなしだった。


そしてその頃は内戦を逃れたシリア難民がドイツへと流れ込んできた時期で、駅の一角で荷物を抱え静かに並ぶそれらしき人達や、激しい口調で演説をするスキンヘッドの集団なんかとも遭遇し、少し怖い思いをした。


そして宿泊したホテルのベッドで日本のニュースを見守る中、当時世間を賑わせていた〝安保法案〟は国会で強行採決されたのだ。


一体これから日本はどうなってしまうのだろうと言う不安な気持ちで眠りについた。


今やスーパーに並ぶブラックベリーだが、見かけるとそれらの特別な旅の記憶がふと蘇り、不思議な気持ちになる。


ほんの7年もの間に、異国の地で見つけた宝石は巡り巡って今や私の庭の鉢で眠っているのかと。