今国会成立を目指す安保法案について、世論大勢は慎重論が根強いものの、政府自民党は最近お約束の「数の暴力」で会期内強行採決を目指す。


安保法案については、「集団的自衛権」行使の具体事例や守備範囲等々、細部を議論する作業も勿論重要なのだが、そもそも論として安保法案そのものが、憲法学者の9割が「違憲」と断じているものを、時の政府が都合の良い勝手な解釈をして、それを数の暴力で成立させてしまうという暴挙を認める訳にはいかないとする廃案論者が、多数を占めているという現実があります。


対中国、対北朝鮮といった近隣有事の想定は、従来の枠組みの中で「個別自衛権」で十分対応は可能な訳で、現実に領土侵攻を受けた場合も、「生存権」は「交戦権の否認」より優位な「基本的人権」であり、現行憲法で十分対応可能と考える。


何より「交戦権」すら否認をしている中で自衛隊は存在しているのであって、既に矛盾は矛盾なのだが、安保法案成立目的のひとつに「米軍負担の軽減」があり、この部分の範囲のせめぎ合いというのが実際の論点なのであって、まずは「集団的自衛権」の前に駐留米軍に撤退してもらい、負担軽減してもらったら如何なものかと思う。


但し、現実に撤退した場合に有事が発生すれば、米軍はグアムから「出動」となる訳で、とりわけ中国の過度な海洋戦略による極東有事が勃発した場合には如何にも遠く、結局本土はともかくとしても沖縄駐留米軍は極東地域の抑止力として要衝にあり、撤退は有り得ないのが現実だったりもする。


あえて言えば、沖縄方面の無人島ひとつ米軍に提供して、移設してもらう位しか方法はないと思うのだが。


今回「集団的自衛権」が強行採決された場合、例えばフィリピンと中国の地域紛争が勃発した場合や、北朝鮮と韓国の紛争についても、米軍の後方支援を現実には行うことになるのだろう。


言うなれば、アメリカにとって都合の良い「手足」になるということで、現実に運用されるようになれば、いずれ自衛隊に多数の死傷者が出るのは必然であり、結局の所なし崩し的に徐々に解釈拡大が進み、最終的には「戦争のできる国」というより「戦争している国」になっている可能性が高いのである。


現在自民党総裁選に立候補を画策している野田聖子には、安倍政権に反旗を翻すことなく安保法案を廃案に持っていく思惑が、密かに進行していると考えられる。

総裁選になれば、日程的に非常にタイトになる為、野党が総裁選を理由に安保法案審議を拒否する可能性が高くなり、審議なくして強行採決を行えば、世論による安倍政権への不信任は確実なものとなる為、野党は内閣不信任決議案を提出、自民党が割れれば新政権誕生となる。

この際、解散総選挙となった場合の争点は「安保法案廃案」となる為、新政権誕生となる可能性が非常に高くなる為、選挙のことしか頭にない三流政治家が安倍を裏切る可能性も高くなるのである。

本来は現段階で、自民党内でもっと異論が出ないとおかしいのであって、もっと野田を取り巻く環境が勢力を拡大しているのが正常な状態の筈。

このことからも既に自民党は自浄能力を失ってしまっており、政権担当政党に相応しくない状態と言える。

今の自民党にある優位性は、選挙の基盤となる組織票のみであり、それのみで自民・公明は共闘しているのであって、本当に始末が悪いと言える。

対抗勢力の結集には、相当の能力とエネルギーが必要となるだろうが、政治家として「天下を取る」気概を持つ数少ない意欲ある政治家の方に、大いなる期待を込めて、エールを贈りたいと思います。