特定秘密保護法は、与党の強行採決によって可決された。
徹底した議論を尽くす誠意もなく、参議院の存在意義も皆無となってしまった。


個人的に問題視しているのは、「特定秘密」を扱う人間の「資質」と「姿勢」についてだ。

過去の歴代総理大臣に、国民が納得する一定の判断のできた人間が一体どれだけいたことか。

そもそも、今でも都合の悪い情報は十分過ぎる位国民には共有されていないし、「密約」に従い、先にゴールが決まっていての強行採決の連続が現実に行われているのに。消費増税然り、TPP然り、原発再稼働然り、そして秘密保護法然り。。


実質的に、官僚が特定秘密かどうかを判断し指定することが、国民主権の全体の「知る権利」に抵触するのではないか。また、国民の代表である国会においても、野党側の議員に適切に情報共有されるのかという疑念もあります。

当たり前の話として、満足に情報共有が為されなくなれば、国会での議論など成り立たなくなってしまいます。

また、「官僚」対「政治家」の構図も、今後は徐々に成り立たなくなってしまう。


単純に福島原発関連の情報も、テロの危険性有りと広義に秘密指定されれば、国民には今後一切情報開示されなくなる恐れもあります。

例えばの話、テロ対策として考えた時に、福島原発の情報をどこまで一般的に開示可能なのか。


万全を期すならば、当然「全て非開示」になりますよね。


では次に「テロの危険性」とはどの程度を指すのか。

国策として、今後テロ多発地域でのPKO負担を同盟国として増やしていく計画が「特定秘密」として既に存在していれば、日本国内でのテロの可能性も必然的に高まる。

また、中国や韓国・北朝鮮との万一に備える「必然」が、既に「特定秘密」として同盟国から確かな情報として共有されていれば、当然強行採決してでも「その時」に備えなければならない。

要するに「国家のリスク管理」として秘密指定を考える時、恣意的ではなくても「広義」にならざるを得ないということだ。
それが結果として、多くの情報非開示に繋がり、国民は正しい判断を行う機会を徐々に喪失していくことになる。

おそらく、今回の残念な内容で「特定秘密保護法」に賛成した方々は、民間であればリスク管理経験のない一般層であり、多くは公務員や准公務員なのだろう。


将棋では、重大な「手順前後」というものがある。
一般の人から見れば何のことはない一歩の突き捨てが、一局の行方を左右してしまうことなど、将棋の盤上では日常茶飯事だ。

先に突き捨てておくことは、戦線拡大した際に貴重な一歩を補充する為でもあり、またその将棋の命運を左右する急所に先にアヤをつけておくという意味合いもある。

しかしながら、そのタイミングを誤ると手抜きをされる恐れもあり、逆に先行を許し、致命的な手損となる可能性もあるのだ。

今回、過去の「西山事件」が示す通り、「特定」される部分の懸念材料は法律を制定する前にしっかりと議論され、細部を明記した上で「制定」されなければならなかった。特に多くの文化人が懸念を表明し、大規模なデモにまで発展した理由はまさにその部分の補完が不十分であったからであろう。

それこそが、重大な「手順前後」だったと、なぜ今もって気付かないのか?


冒頭でも述べた通り、問題なのは、それを扱う人間の思考であり、スタンスなのであって、例えば秘密保護法の細部を決める気が全くないのが明らかであるから「廃案」を目指したのであって、細部を詰めることが先決との認識があれば、とことん議論を尽くした筈だが、やはり「目的」がそこではないのはもはや明確で、洞察力に少し長けた人なら、すぐに理解した筈だ。


大事な法案の採決を「議論を尽くさずに」急ぐ理由は何なのか。

この国は、既に今でも「国民主権」ではないけどね。

「西山事件」を見てもわかる通り、国民不在の密約は裁判で明らかにされることなく、今後は秘密保護法違反を争う裁判内容にすり替えられることになる。

「西山事件」は、現在も「特定秘密(密約)」は存在し、厳格に運用されていることを証明している。

あえて、「特定秘密保護法」を制定する本意を、もう一度じっくりと考えてみたいと思います。


それほど差し迫っているリスクが、現実にあるということなのだろうけれども。