消費者金融大手の武富士がついに会社更生法の適用を申請するようだ。


賛否両論あるだろうが、ある意味「必要悪」であった時代を否定することはできないだろう。



「利息制限法」の上限金利は年率18.00%。(但し100万円以上の貸付においては15.00%)


対する「出資法」の上限金利は段階的に引き下げられ、当初の年率54.75%から40.004%に、その後29.


20%に引き下げられて現在の18.00%に至り、俗に言われる利息制限法との金利格差の「グレーゾーン」を撤


廃させている。



ノンバンクの利益は言うまでもなく「借入金利」と「貸付金利」の差益である。この上限金利が29.20%に下げら


れた時点で、そもそも一部の上場会社以外の個人金融業者は経営危機に瀕していた。


上場企業には当然優遇金利(低利)が適用されるが、一般業者にはその適用がないことと、顧客内容(債権内


容)に著しい格差が生じ、正管比率や貸倒率・利息入金率等は大手と零細では比べるまでもない。


公務員・上場会社勤務の「ホワイトカラー」の申し込みは原則大手ノンバンクに集中するから、それ以外の業者


は必然的に「ブルーカラー」をターゲットとせざるを得ない。借り入れ件数・金額も多い顧客層で当然延滞も多


いだろう。


実際に上限金利が18.00%に引き下げられた時点で、殆どの零細金融業者は「アウト」であったと思う。


現に全国貸金業協会(当時)に貸金業登録をしていた業者は以前は1万5千社以上あったのが、現在の日本貸


金業協会に登録する業者数は1500社程度と言われている。


現実に何十万人というノンバンク就労者が失業し、現在は他の業界に転職を余儀なくされている。



上記に加え、死命を刺したのがいわゆる「過払い請求」である。過去の初回取引にまで遡り、グレーゾーン金利


全ての返還を貸金業者に義務付けたのである。平成18年の最高裁判決が出た時点で、ノンバンク業界がほぼ


ほぼ消滅に近い状態になることは容易に想像できたであろう。また実際に帳簿の保管義務期間が貸金業規制


法で定められた期間や商法で定められた10年を超えるものについても請求を認めたことで、当然データが廃棄


済のものまで提出できる筈もなく、事実上営業停止に追い込まれた会社も少なくない。




武富士が破綻した直接の理由は、銀行傘下ではなく独立系であった為の資金繰りの悪化と言われているが、ま


さしく影の暗躍者は「大手都市銀行」であり、永らくの間そしらぬ顔をしてノンバンクに貸付け煽っていたことは疑


いようもない事実だ。



そもそも銀行の貸付規制業種にノンバンクは含まれていた。バブル後期に無担保個人金融(消費者金融)の分


野に銀行も参入したが当時はノウハウがなかっ為散々な結果となり撤退、その後タブーと言われたノンバンクへ


の貸出しに踏み切り、現在に至る。


その間プロミスやアコムは上場を果たし、また世間を騒がした商工ファンドや日栄も上場した。銀行は間接金融


に徹し、その結果ノンバンクから大幅な利益を搾取した。現在生き残っているノンバンクはほぼ100%銀行の傘


下に入っているが、無限に続く「過払い請求」負担は、ある意味銀行の罪滅ぼしとも言えるのかもしれない。



元々何故ここまでノンバンク業界が発展したのかを考えても、そこには「使えない日本の金融業界」が見え隠れ


する。つまり、わかりやすく言うと日本の銀行はまず困っている人にはお金を貸さない。国も経営状態が芳しくな


い会社には貸さない。最低過去3期分の黒字決算と一定の売上が、貸出金額等の審査の基準となるからだ。


故に担保のない中小事業主や経営者は、やむを得ずノンバンクに運転資金の用立てをお願いするしかなかった


のが実情であり、その状況は今も変わっていないのだが・・・今後はいったい誰が零細事業主を助けるのか。



バブル崩壊後の10年間は俗に「失われた10年」と呼ばれる。景気は低迷し、まさしく底の見えない景気の悪化


・低迷に、世の零細事業主はどれだけ眠れぬ夜を過ごした事だろう。


その間消費者金融業界が社会に供給した無担保資金は10兆円以上に上る。これを「必要悪」と呼ばずして何と


言おうか。



現在新任の弁護士会の会長は、この過払い請求や出資法の金利引下げに尽力した人である。


この人のおかげで、新米の弁護士やいわゆる「落ちこぼれ弁護士」は、過払い請求訴訟の続く当面の間喰いっ


ぱぐれずに済む訳であり、いわば会長は「恩人」と言える。


大義名分は「弱者救済」だが、弁護士や司法書士の収入確保の為に一方では業界を取り潰し、何十万人もの失


業者を生み出している。そして中小企業に対する貸し渋りは、今も解消されないままだ。



そして、本年6月に改正貸金業規制法は完全施行された。更に融資額の総量規制が盛り込まれている。


これからの時代、法人・個人共々本当に困った「弱者」は、どこに、誰に相談しに行けば良いのだろう。




P.S  高杉良の「欲望産業」(上・下)は、武富士を題材にして書かれたものといわれている。面白いので興味


ある方は是非読んでみてね。