初めての入院の目的は、治療はもちろんだが、自宅でも同じ治療方法を自分でやれるようになることだった。


当時のクローン病の治療は、絶食したうえで、エレンタールという水に溶かす栄養剤を摂取する、という方法が第一段階であった。


このときは2003年の夏。

レミケードが、日本でクローン病による使用が認可されたのは2002年。


認可されていたとはいえ、まだ当時は絶食が主流で、レミケードはかなり慎重に扱われていた。


同室の20代の女性がクローン病で、なかなか治療がうまくいかず、手術も数回しているようだった。

ある日、その人の主治医が、新しい薬(レミケードのこと)をやってみる?と、難しい顔で女性に聞いていた。

女性もかなり迷っていて、簡単には選択できない薬なんだな、と思ったことを覚えている。


そのくらい慎重な薬を、初期の治療に選択するわけもなく、私の入院生活は絶食+エレンタールというものだった。


やり方としては、エレンタールの粉末を一定量の水に溶かし、それを鼻から入れたチューブに流して胃に直接届ける、といったもので、まずはチューブを入れる練習から始まった。


幸い、私はすんなりとチューブを入れることができ、1週間もすれば問題なくできるようになっていた。

その他、色々と覚えるべきことも、1週間でほぼマスターしていた。


つまり、今回の入院の目的である、自宅でもできるようになることはクリアしたわけだ。

そうすると、もう退院したい。家に帰りたい。という気持ちが強くなり、当初は1ヶ月間の予定を切り上げて、2週間で退院することになった。


退院した時は家に帰れる嬉しさしかなかったが、病院とは違い、食の誘惑に耐える日々が始まった。