いきなりですが昔語りをしたいと思います。
あれは寒さ厳しい冬の夜でした。
僕は勝手の知らない街で1人焼き鳥をつついていました。その頃の僕はとにかく忙しくて、出張先の夜だけが1人落ち着ける時間でした。
客は僕1人。ビールをぐいとあけながら大将と取り留めの無い話をしていたら1組のカップルが来店しました。
ひとりはおじいちゃん、もうひとりは褐色の肌にカタコトの日本語の女性。すぐにフィリピーナだと分かりました。聞き覚えのある外国語が耳に入ってきたからです。
当時の僕は某県に移り住んで2年が経過した頃で、以前は名古屋市に住んでいました。
当然、界隈と呼ばれる池田公園にもちょくちょく足を伸ばしており、フィリピンパブも経験済みでした。ただ、この頃の僕はフィリピンパブにそれほど興味が無く、3〜4年くらいご無沙汰だったと思います。焼き鳥屋でカタコトの日本語とタガログ語を聞いた時、なんだかとても懐かしい気分になったことを覚えています。
焼き鳥屋を出た後、このままホテルに戻るのも味気ないと思い、夜の街をうろつくことにしました。ネオンはすぐに見つかりました。
看板にはフィリピンの国旗🇵🇭が描かれています。
先ほどのフィリピーナを思い出し、僕は大きな扉を開けてみることにしました。
フィリピンパブに1人で入店することはこの日が初めての経験でした。
イラシャイマーセー❗️❗️
その一声で妙に浮かれた気分になり、酒の力も手伝ってかいつもと違う自分になった感じです。
店はまだ開店直後で閑散としており、女の子も5〜6名しかいませんでした。
ママが来て、この店は初めてか、好みの女の子はいるか、何を飲みたいかを聞いてきます。
店内の隅でiPhoneを手にした細身の女の子が目に留まりました。くたびれた印象の店内にそぐわない顔立ちとスタイルで、とても興味がわきました。
「彼女がいい」
しかしママは、彼女はまだ日本に来たばかりで隣に付けることができないと言います。
(その本当の理由は後から知ることができました。)
じゃあ誰でもいいと答え、隣に女の子が着きましたが顔も覚えていません。覚えているのは、僕の態度に嫌気をさした女の子が「好きな子選んで。ママに言うから。」と僕に伝えたことくらい。
それほど、僕の目は店の隅にいるフィリピーナに釘付けになっていました。空いたテーブルに座ってノートを広げながら何やら勉強している様子でした。
こちらをチラチラ見やりながらママと何か言葉を交わした後、席を立って別のフロアーに消えました。ママが来て「少し待って」と言付けます。僕は隣に着いてくれた女の子にありがとうと声をかけ彼女を待ちました。
メイクアップを済ませた彼女は、はにかんだ表情でこちらへ歩いて来ます。
「ハジメマシテ、 Lです。ヨロシク お願いシマス😌」
アッシュブラウンのロングヘアーに、大きな瞳と少し口角の上がった唇。そして、とてもとても小さなお顔。まさに天使そのものでした。
カタコトの英語と日本語を交えながら、お互いの質問タイムが始まりました。
Lちゃんは日本に住んでいるお姉さんを頼ってやってきたこと、以前にタレントとして関東圏に住んだ経験があること、そんな感じの当たり障りない会話でした。
「さっき、俺の席に来る前にノートを広げて何をしていたの?」
「日本語の勉強をしていました。日本は久しぶりだから言葉をなかなか思い出せないです。」
「じゃあ、今からLessonしようか。」
こんな流れで最初はマジメな会話だったんですが、1つのノートを目の前に置き、スマホのtranslationをお互いに持ち替えながらとなるので、自然と距離は近くなります。僕が右手に持っているスマホを覗き見るために、左側から僕に身を預けるような姿勢となります。
Lちゃんの柔らかい胸の感触が左腕に伝わり、そしてperfumeの香りとあいまって、もう僕は我慢できなくなりました。
おもむろに彼女の額にキスをし、ほっぺにもキスをしました。
そして唇に顔を近づけると、彼女は微笑みながら「駄目よ。」と言いました。
そこから火がついた。
僕は彼女をひと目見た時の感激と、彼女の背中に羽が生えていて天使に見えたこと、怒涛のように頭の中に浮かんでくる言葉をぎごちなく紡ぎながらひたすら口説いていました。
僕らの席は暖房が効いておらず、Lちゃんが寒そうに見えたので、彼女の正面からコートをかけてあげました。
コートの中で手を繋ぎながら、腰に回した他方の手はゆっくりと上に這っていきます。彼女の大きな瞳は僕を見つめている。
彼女のいちばん柔らかい場所に僕の手のひらが触れても彼女は目をそらさずに、僕の言葉の数々に耳を傾けていました。
何を喋っていたのか、ほぼ記憶にありません。
生utongを触ったら、さすがに少し怒られたような。
現実と乖離した2時間はあっという間に終わりを告げました。
このお店はエントランスから出たところにエレベーターがあり、2人きりの空間となります。
エレベーター前まで見送りに出て来てくれたLちゃんが、おもむろに僕の首に両手を回して唇を合わせて来ました。
「どこにも行かないでね。」
あぁ楽しかったあ〜とスキップ交じりでホテルへの帰路に着く。
この時の僕はまさか数ヶ月後にフィリピンの地を踏むことになるとは夢にも思っていませんでした。
続く
