ジントニック&ウォッカトニック
君は、僕の隣で 僕の好きなジントニックを
嬉しそうに飲んでいた
「もっと、飲みやすいのにしたら?」と言うと
君は「あなたと同じがいいの!」と 無邪気に笑った 。
でも、いつ頃からか
君は、ウォッカトニックを飲み始めるようになっていた…。
「そんなの、さっぱりしすぎて、味気ないだろう?」
と聞くと
「シンプルで無駄がないから、いいのよ」と
君は、冷たく答えた。
それから 間もなくして、突然別れを告げて去っていった君 。
その理由さえわからないまま、
僕は、彷徨いつづけていた
そんなとき
偶然、君とバーで出会った
君は、僕の知らない男と
同じウォッカトニックを飲んでいた
僕は、あの時の
別れのわけを 今夜知った…
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【ジントニック ~Gin & Tonic #7】
ジンとトニックウォーターが見事に調和し、
シンプルでさわやかな定番カクテルです。
イギリスの熱帯の植民地でマラリアよけにキニーネを水に
たらしたものが飲まれていたが、そこにジンを加えたのが
始まりと言われます。
ベースのジンを ウォッカにかえると ウォッカトニックに…。
さらにシンプルなカクテルとなり トニックとライムだけの
味と香りを生かしたカクテルになります。
ドンペリ・ミモザ
女の私には少し重いこの店のいつもと同じ扉を
いつもと同じように体の重みをかけながら
ゆっくりと押し開ける
いつもと同じ空気 いつもと同じバーテン
でも、今夜は何かが違った
私をみた瞬間
若い方のバーテンが
「いらっしゃいませ」の言葉を喉につまらせた…
私が戸惑いを見せると
オーナーが彼をカウンターの奥へ静かにおいやった
オーナーは、いつもと同じ優しい笑顔を見せながら
「ひとり?」と聞いた
私は、何かしっくりしないままうなずき
そして、何というわけでもなく
店の中をゆっくりと見渡した
奥のテーブル席の男と女に目が止まる
見慣れた横顔の男
今夜私とのデートを
急な仕事が入ったからと、申し訳なさそうに電話をしてきた男
見間違えるはずはない
私が贈ったシャツを着ているのだから
私は、呼吸を整え
彼らから死角になるカウンターの隅に
静かに腰をおろした
「取り乱したりなどするものか…」
そう心の中で、呪文のように唱えた
遊びなら許す?
一度だけなら許す?
言い訳に納得をすれば許す?
どんな質問を自分に投げかけても
答えは全てノー
だって、今日は、私の誕生日なのだから…
取り乱した哀れな女になりたくないだけの、
強がりかもしれない
けれど
二人の女が傷つくことはない
傷つくのは、私だけでいい… そう思った。
「ねぇ、マスター ドンペリ置いてる?」
声が通らないように、静かに低い声で話し掛けた
マスターは、ただうなずいた
「それを奥で静かに開けてきて、ミモザつくってくれない?」
少し甘えた声をだした
「でも、サラを一本あけちゃったら、すごく高いミモザになっちゃうよ…」
マスターは、ちょっと困った顔をする
「いいの。高くって。なんなら、そのドンペリ一本分の値段とっていいわよ」
私は、かるく笑顔で答えた
爽やかなオレンジの香りと、はじけるシャンパンの泡に
今日までの思い出を閉じ込めてしまおう
「ドンペリ一本分の値段でも安いくらいよ…」
誰に聞いてもらうわけでもなく、小さくつぶやいた
ゆっくりとカウンターを流れるようにして届けられた
ドンペリをつかったミモザ…
私は、惜しげもなく
ビールジョッキをあけるかのように一気に飲み干した
マスターも若いバーテンも 目を丸くしている
私は、今、傷ついているのか
わからなくなるほど、笑い転げたくなった
そして
まだ目を丸くしたままの二人にむかって
カウンターを離れながら 言った
「今夜の勘定は、あいつに払わせて。別れの慰謝料だって伝えてほしいの」
重いはずだったいつもの扉は、なぜか軽くなっていた
私はふりむかず店を後にした…
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【ドンペリ・ミモザ ~Dom Perignon・Mimosa #02~】
ミモザは、シャンパンとオレンジジュースを同等の量づつ割ったもので、
「この世でもっとも贅沢なオレンジジュース」として、フランスの上流
階級に属する人々が好んで飲んでいたという。
ドンペリミモザは、そのシャンパンをモエ・エシャンドン社の超高級
シャンパンを使用し更なる高級感を漂わせる。
ホワイト・レディ
この店のカウンターで
僕と彼女は、出会った
彼女との運命の出会いは
僕の一方的なまでの一目惚れから始まった
その冷たく真っ白な肌に
細く長い足
気品あふれるオーラを放つ彼女…
あの瞬間、僕の全ての時は止まり
彼女から視線をはずせなくなった
そんな僕に
小悪魔のような笑顔で 彼女から声をかけてきた
「いつまで私を眺めてるつもり? 私に触れてみない?」
彼女は、僕の視線だけで
僕の心の底まで見透かしてしまう
その凶器なまでの美しさに
誘惑された男は、彼女から逃れられなくなっていく
毎夜、彼女に会いたい
君に触れなければ、僕の夜は終わらない…
今夜も彼女は
冷たく白い肌で、僕の唇をもて遊ぶ
彼女を超える完璧な女は、
この世に存在しないだろう…
まだ足りない
今夜も彼女に酔わされたい
もっと、もっと、もっと 彼女がほしい…
麻薬を欲しがるように 僕は、彼女を求めた
「マスター、ホワイト・レディ、おかわりぃ!」
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【ホワイト・レディ ~White Lady #01~】
1919年、ロンドンにあるシローズ・クラブで、
ハリー・マッケルホーンが考案し
「ホワイト・レディ」と名付けられた。
彼が心を惹かれていた、かの有名な女スパイ、
マタ・ハリのことをイメージし名付けたとも言われている。
