音楽が好きで、舞台が好きで
大人になっても変わらなくて
大学生の時と社会人1年目まで
舞台に立つことを夢見ていました。

舞台で生きる人って独特で
私にはお互いを傷付けて痛めつけて
その傷をお互いに付けたのに
泣きながら謝って舐めあって
全く理解出来ませんでした。

何でも心を曝け出さないと
役に入れないとか
役を自分の中に取り込めないとか
そこに真実がないだとか
薄っぺらいウソだらけになるだとか

演出家に椅子を投げられ
人格を否定され
汚い言葉を投げつけられ
『お前はバカ?
 馬鹿なんだろ?
 バカですって言えよ』
と繰り返し繰り返し言われて
元々才能もなかったので
アッサリ辞めました。

今でもそれは後悔していません。
あんな演出家、舞台監督の
意味不明は罵倒に耐える義務はなく
心が壊れる前で良かったと心から思えます。

芸能界がそうだとか
知らないので分からないのですが
そんな変な人もいると思うんです。

それは芸能界だけでなく
レストランの厨房、
老舗店、スポーツ界、高校野球、
などの場所ではあるんじゃないかと。

オーナー企業のデザイン会社に
就職した時も同じ感覚がありました。

仕事は盗め、教えて貰ったことは
身に付かない。
が社長の信条。

『罵倒するのは君のためだ』
という訳の分からない理由を掲げ
お酒が入ると泣きながら謝る。


『カップを置く間が悪いな。
 あと、0.2秒遅い方がスマート』
ある日そんなことを言われました。

経理部だったのですが、たまたま社長秘書が席を外しており、代わりに内線に出た私が社長にコーヒーを出したらコレ。
最初、冗談かと思いリアクションに困りました。

『0.2秒ですか?』
『そう。そういうことにも気づかないと良いデザインは出来ない。分かるか?』
『いえ、全く』
『経理なら必要ないと思っているだろ?』
『正直そうですね。理解に苦しみます。
 数字の間違いや仕訳に不備がありましたら
 直しますし、今後ないように気を付けますが
 0.2秒という感覚は私にはありません』
『クリティブな仕事には必要なことを君にも教えてあげたんだよ。以後気をつけてくれ。
さ、もう一度カップを置き直して』
『お断りします。
 私は経理部の人間です。
 今後、こんな訳の分からないことが
 必要になるとは思えません。
 0.2秒が大切とおっしゃるのであれば
 この数分間の方が、月末の忙しい時期の
 経理部にとって大切です。
 では、失礼します』

この後、部長に呼び出されてお小言。
社長に逆らうなと。

ウンザリして1ヶ月で転職しました。

この会社のデザイナーは社長の無理難題を理不尽な怒鳴り声をただただ受け入れ納期に間に合うようにデザインを仕上げるが仕事でした。

デザインの最終チェックを社長に見てもらう為だけにデザイナーが列を成して、デザインそのものの善し悪しではなく、ノックの音、ドアを開けるタイミングが悪いと罵倒され
『だからデザイナーとしてもダメなんだ』
とデザイン画を床に投げ捨てられる。
というコントのような馬鹿げたことを繰り返し、不採用にしたはずのデザインを
『オレのプレゼンで採用になった』
と後日ドヤ顔で報告。

どうしても不思議過ぎて、デザイナーの1人に何とも思わないのか聞いてみました。すると

『そんなもの。どこ行ってもこんなもん。
 よく分からない理屈をそれらしく言って
 芸術だとか言って煙に巻くの。
 これは儀式で意味はないんだよ。
 社長はデザインが出来ない。
 CADも触れないしセンスもない。
 ただお金とコネはある。
 ここにいるデザイナーは夢はあるけど
 お金もコネもない。
 よくアタられるデザイナーさんは
 才能があるから、社長にマウント
 とられてるの。
 怖いんだよ、独立されるのが。
 社長は自分が一番才能ないこと知ってる。
 だから訳わからないこと言うの。
 だから真面に相手しちゃダメだよ』

この信じられない会社、まだあります。
私が勤めた(と言っても1ヶ月)時より
大きくなって、関東にも進出してます。

結果、あの変テコ社長には才能があったと言うことなのか、才能の搾取の才能があったのか分かりませんが天罰なんてもんはないですよね。


大好きで大切な役者さんが亡くなって
昔のことを思い出しました。
理不尽な社長のこと
汚い言葉で罵倒する演出家のこと
この人たちに天罰なんて下ってないんです。
むしろ成功者として活きいきしてるんです。


この苦しみを耐え抜いたら
これは大成するのに必要なこと
自分のための叱咤激励


なんてことはありません。

怒鳴りつける人は怒鳴りたいだけ
理不尽を耐え抜いてもなんもない
誰かの為なんていう暴言は叱咤激励ではない


みんな自分のために
自分のイライラをぶつけているだけ


どこかに我慢して我慢して
我慢出来ない自分が悪いと
自分自身を責めている人がいたら
どうか見切りをつけてその場から
その理不尽な人から逃げて欲しい


そんなことを思う夜でした。