東日本大震災10年、コロナ禍復興プロジェクトと銘打った全国ツアー。 公演の目玉は「ボレロ」。主演は上野水香さん。
もともと女性ダンサーのために振付けされた作品で、上野さん(以下、敬称略)のしなやかさと美しさ、そして強さが際立つ。 照明が消えている状態で音楽が始まる。スポットライトが上野の手先だけを照らす。その後、全身そしてステージ全体が見えてくる。 舞台を広く「コの字」に囲む男性ダンサーたち、その真ん中に赤い円形ステージ。あ、日の丸だ。 「魂を差し出す気持ちで踊っています。終わった後は抜け殻になってもいい」。 14分間踊り続け、トランス状態になった上野が放つ波動が観客を包み込み、高揚感と幸福感で満たす。 まるで、祈祷のために舞う巫女を見るかのような神々しさ。 長い髪を振りながら踊る姿は、「石橋(しゃっきょう)」の獅子のようでもあり。 男性ダンサーたちは徐々に円形ステージに近づき囲み、腰をくねらせる。 幾多の精子が一つの卵子を目指すように。 ラストシーンでは円形ステージ中央で上野が舞台に伏す。同時に、周囲の男性ダンサーたちがステージ中央に向かって上半身を投げ出す。 受精=生命の誕生とも思える瞬間で最高潮となり、照明が消える。 女性ダンサーのために作られた、という意味に納得。 同じリズムの繰り返しが、命の循環と喜びを感じさせる。 「HOPE(希望)」というタイトルの公演にふさわしい舞台であった。
(2021.7.6 フェスティバルホール)
【備忘メモ】 30年ほど前に、ジョルジュ・ドンの「ボレロ」を観た。 全国ツアーの富山市か?それとも金沢市? その記憶はまた改めて。