僕はライブとか映画とか舞台とか
わざわざ足を運んでまで
エンタテインメントを楽しむ癖がない
でも本当は仕事柄行かなくちゃいけない。


  「アーサーさん、招待されたから
   舞台を観に行きましょうよ・・・」


隣に座ってる演出家が言った。


  僕 「え~っ舞台を観るくらいなら
     『アバター』を観ようよ」


別に『アバター』も3D映画館で

観るつもりはなかったけど。


  「じゃ両方ハシゴしましょう!」


余計なことを言ってしまった。


で、新宿紀伊国屋ホールと
新宿ピカデリーをハシゴする羽目になった。


『僕等のチカラで世界があと何回救えたか』


演劇はまったく解らないけれど
最後まで寝ずに観られたので
面白くない訳じゃないと思う。


少なくともこの手の舞台に多い
「絶叫芝居」じゃなくて好感は持てる。
どうも「絶叫」は演技の中でも簡単らしい。


ただ、どうしてもお腹が空いて
入場前に買ったイチゴ大福を
公演中に食べようとしたら
包み紙を破る音が客席に響いた。
その時だけは「絶叫」して欲しかった。
館内は飲食禁止だった。




『アバター』の上演までには
まだ時間があったので
昔からある洋食屋「アカシア」で
早めの夕食を摂ることにした。


マジソンズの中の日々-アカシア

ロールキャベツが美味しいお店。
でもカレーとハンバーグを頼んだ。
僕はロールキャベツが嫌いだ。


酔っ払って『アバター』を観ると
気持ちが悪くなりそうなので
シャレで「チョコベアービール」も頼んだ。
でも、シャレにならないくらい不味かった。


マジソンズの中の日々


時間が来たのでピカデリーに移動した。
1958年に開業した老舗映画館も
一昨年あたりにずいぶんと綺麗に建替えた。
シネコンを超える!と気合を入れて
凄いことになってる。


『アバター』


あまりに美しい世界観の所為で
鑑賞後には現実社会に戻りたくなくて
自殺者まで出たという「アバター」病。


キャンプが嫌いな僕に限っては
あんなに気味の悪い場所に
行ってみたいなんて微塵も思わない。
いったいその病気の患者の
普段の生活はどんなに荒んでるのか?


映像は制作費と比例して美しいけど
ストーリーは勧善懲悪のハリウッドスタイル。


でも、本日二ヶ所目のシアターは
薄暗くてついつい眠気を誘うから
3Dメガネをしたまま寝ちゃって
イントロダクションを見損なった。
だから本当は良く解らない。


起きた瞬間に眼前に隕石が飛んできて
つい「ビクッ!」と避けちゃった。
3Dが凄いのは解った。


それでも圧倒的な世界観の演出で
最後まで飽きずに観ることができた。
けど、やっぱり素直な感想は・・・「変な顔」


隣で同行した演出家が観終わった直後に
酋長の娘ネイティリを抱けるかもと言ったけど
僕にはやっぱり無理だなぁ。
だって変な顔だもん。


今月にはDVDが発売される。
本当ならわざわざ映画館まで
行かなくても良かったと思うけど
たまには足を運ぶのも良いもんだ。


なんだか全体的に消化不良の僕は
ツタヤによってDVDを買って帰った。


『THE OUTSIDER』


前田日明がプロデュース。
街の不良がディファ有明で殴り合う。
下手糞だけどその分熱い。

これが最近一番気に入ってる。


でも、DVDで観てるだけで
会場にまで行こうとは思わない。

小雨の降る水曜日に
音楽プロデュース研究会の
OB会があった。


実はマジソンズの温床にもなった
このサークルは既に存在しない。


  つまらない正しいことより
  間違えてでも面白いことをする。

このことだけで繋がってる
大先輩から僕らの世代までが
母校近くのホテルに会した。


歳を取るということは
正しいことを積み重ねるんじゃなくて
正しく間違える方法を学ぶこと。
じゃなきゃ面白くない。


なんでも設立は40年以上前。
年齢が上がるほど出席率が高いのは
現役を引退されているOBもいるからだ。
でもなんだかやっぱり迫力がある。


  ただ偉いヒトがたくさんいて
  挨拶がなかなか終わらない。


  途中まで我慢してたけど
  お腹が空いてた僕は
  先輩の挨拶中に後輩を盾にして
  コソコソとビュッフェに
  食事を取りに行った。


  僕はそんな立ち位置で良いくらい
  明らかに下から数えた方が早い世代。


僕をAV出演の崖っぷちに
追い込んだ先輩も来られていた。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=349148696&owner_id=7475625
相変わらずお元気そうだった。


大隈講堂でSMショーを主催して
学校の公認を剥奪された先輩も
朗らかに昔を振り返ってた。


スノボの国母を例えに出して
最近は破天荒な若者が少ないと
音楽業界の重鎮は憂いていた。


残念ながら岸田もちちはるおも
サミー高田も出席はしてない。
いや、参加したとしても今回ばかりは
おとなしくしてなきゃいけない。
僕たちは破天荒で良い若者じゃない。


翌日が野球部の公式戦だったから
二次会までお付き合いすることにした。


  「アーサーっ!アーサーっ!」


ちょうど弄りやすい世代の僕は
何度も先輩方の席に呼ばれる。


  僕 「どうしたんですか?」


  先 「今、オマエの噂してたんだ」


  僕 「何ですか?」


  先 「いったい今までにどれくらい
     レコードやCDにつぎ込んだかって」


  僕 「一体いくらなんですか?」


  先 「計算したら3000万円くらい」


  僕 「えぇ!!」


実際にCDを1万枚買えば
それくらいにはなる。


  先 「驚いてるけどアーサーだって
     それくらい風俗につぎ込んでるだろ?」


絶対にちちはるおと間違えてる。

でも、ソー●プランドに
1500回行けば同じこと。
25年かけて月に5回で達成する。


明日ちちはるおに教えてやろう。

今朝は迂闊にも会社で
朝を迎えてしまった。


仮眠をするつもりが
つい熟睡をしちゃった。


僕ももう良い歳だし
年寄りが会社で徹夜すると
若者の夢を奪うから
そんな事しちゃいけない。


とはいえ目が覚めたら
朝の9:00だったので
そのまま本日一件目の
打ち合わせ場所に向かった。


一度会社に戻ってきたけど
どうにも昨日と同じ服は
気分が晴れやかじゃない。


だから次の打ち合わせの合間に
急いで近所の服屋に駆け込んだ。


  「何か適当に見繕ってくれっ」


若い店員さんは昼下がりの
突然の無骨な来客に面食らって
店長を呼びに行った。


値段も見ずに選んでもらうままに
Tシャツ、デニムパンツ、パーカーを買った。
これってなんだか大人買い。


マジソンズの中の日々-お色直し

こんな感じ。


しめて5万円くらいした。
だからといって午後の仕事が
捗ったかと言うと、そんなことない。

明日はのぞみ1号で新大阪に
8:30には着かねばならない。
それには自宅を朝4:30出発。

  今から恵比寿の会社まで行って
  仮眠を取ってから明朝品川駅に
  向かおうとも考えたけど
  もうそんなに若くもないし
  僕がそんなことしてたら
  若者が夢を持てない。


とはいえ早起きの自信もない。
だから徹夜することにした。


録り溜めた海外ドラマを観たり
少し長めのお風呂に入ったり
こうしてmixiに日記を書いたり
それをアメブロにコピペしたり
時間潰しには事欠かない。


  最近ケータイからTwitterで
  1日中呟いてみたけど
  運転中は危険だし
  最後は空しくなったので
  もう二度とやらない。


なんだ結構贅沢な時間だ。
いや、ただ睡眠を削ってる・・・



今日は午後から高校野球部の
練習試合があった。


相手校のグラウンドに向かうには
東八道路という国道20号の
バイパスを通って行く。


つい先日雪が降ったのが
ウソのような暖かい陽気に誘われて
珍妙なヘルメットをかぶり
滑稽なユニフォームを着た
自転車マニアの方々が
蛆のように沸いていた。


昨今は自転車がブームだとか・・・


個人的には移動手段が趣味なんて
まったく意味が解らない。
解らないから否定もしない。


ただ、天下の往来を用もないのに
趣味で走られては甚だ邪魔だ。


他人様の趣味をあれこれと
とやかく言いたくないけど
良い大人が一心不乱に
交通の妨げをして何をしたいのか?
趣味ならどっか他所でやりなさい。


  この滑稽な大人たちは
  子供の頃にお寺の境内で
  ゴムボールの野球をやって
  怒られたことはないのか?


  温泉で水鉄砲を撃ち合って
  何処かの見知らぬオヤジに
  叱られた事はないのか?


  己の快楽のみのために
  他人に迷惑をかけて良い訳ない。
  場所とか時間を弁える躾けを
  きっと親が怠ったんだろう。


  ちちはるおだって
  公道でオナニ●ィはしない。
  いや、してないと信じたい。


自動車の免許取得時には
歩行者と自転車には
気を付けるよう教わった。
どんな理由でも事故になれば
クルマが悪いと。


まさかそれを逆手にとって
調子に乗ってる訳じゃないだろな?
もしそうならクルマを降りて
歩行者として体当たりしてやる。


  昔、下北沢を歩いていたら
  後ろから来た暴走自転車が
  僕に当たって知らん顔で通り過ぎた。
  ドレッドヘアだったから
  知能指数の低い若造に違いない。


  「てめぇ!痛えなこの野郎っ!」


  追いかけようとしたら
  連れに止められた。

  まさか音速よりも速くはないから
  僕の怒声は届いたはずだけど
  結局少し恥ずかしかったのは僕だ。


彼らが自由にやるなら
僕も自由に振舞うことにする。


  排気ガスを体一杯に吸い込んで
  皇居の周りを小走りしてる
  丸の内界隈の謎のランナーたちは
  ただただ愚かなだけで
  他人に迷惑をかけてない。


  必死に走れば走るほど
  その形相もあいまって
  お気の毒だとは思うけど
  僕もただ笑って見てられる。


個人的には男の隆起した脹脛なんて
誰かの飼い犬がウン●コする姿と
同じくらい見たくない。


なんでも自転車に乗るために
男も足の毛を抜くのが流行ってるらしい。
やっぱり気取って乗ってるのか・・・
ならば僕も気取って体当たりしよう。


  昔、自転車マニアがお年寄りに
  ぶつかって怪我をさせた記事を読んだ。
  歩道とか走ったら走っただけで
  もう傷害未遂だ。


クルマと並走できることから察して
きっと時速3~40kmくらいは出てる。
危ないったらありゃしない。
しかも急ぐ用事なんかない。



  10年位前に子どもが補助輪なしで
  ようやく自転車に乗れるようになった頃
  近所の多摩川土手に作られた
  サイクリングロードに散歩に行った。


  「サイクリング」とはいうものの
  お天気が良ければ近所のお年寄りも
  川を渡る風を感じに散歩する。


  息子はヨロヨロゆっくり自転車をこぐ。
  僕は少し先で息子の目印に立ってた。
  すると後ろから猛スピードで
  自転車マニアが息子を追い越した。


  彼女の失敗は追い越し際で

  「危ないっ!」

  とヒステリックに叫んだこと。


  確かに息子はヨロヨロしてたから
  危なかったに違いない。


  でも僕は咄嗟に向かってくる
  暴走自転車を素手で土手の下に
  突き飛ばした。


  遠めに見ても細いフレームは
  グニャっと曲がってたみたいだった。
  女とか男とか関係ない。
  何か文句を言ってきたならば
  ぶつかってきたのはオマエの方だと
  言い張れば良い。


  「オマエの方が危ないんだよっ!」


  つばも吐こうかと思ったけどやめた。
  周りのお年寄りが良くぞやったと
  声をかけてきた。


  「いっつも散歩してる時に
   怖かったんじゃよ・・・」  


  それから数ヵ月経ったら
  サイクリングロードに
  「自転車の危険走行禁止」 
  と看板が立っていた。

 

  ほら、危ないのはあっちの方だった。


自転車の歴史の深い欧米に比べて
スタイルだけを真似た浮かれたブームは
法律上に規定されている「車両」の意識が
使用者に欠如しているのは事実。


ママチャリでさえ歩行者に向かって
ベルを鳴らして退けと促すだけでも
罰金の対象になることを
あの滑稽な人々は知ってるのか?



試合会場に早く着いたので
試合中に飲むスポーツ飲料を買いに
クルマを停めてコンビニを探した。


少し歩くとワンボックスカーの
ドライバーと滑稽な服を着た
自転車乗りがもめていた。


ドライバーの方が語気が荒い。
どうも自転車がクルマの左側を
無理矢理追い越そうとして
接触したらしい。


クルマの傷を指差すドライバーと
なんだか不機嫌そうに謝る
変な格好の中年。


お巡りさんが着くのを待って
接触事故のお裁きを見たかったけど
試合に遅れたらバカらしいので
コンビニへの歩を早めた。


本当に自転車が悪いとなれば
クルマから降りて体当たりせずに
巧妙に幅寄せして退治する。


  最近、首都高速で猛スピードで走る
  プリウスを見かけることが多い。
  エコブームでハイブリッド車が
  売れていると記事にはなるけれど
  ただ燃費が良いから買われてるんだろう。


  いくらアクセルを踏み込んで
  スピードを出しても燃費が良いから
  ガソリン代は割安で済む。
  たくさん売れたなら色んな客が
  買っているのだと思う。

  ブレーキが効かずに
  そのまま何処までも走って行け。


さて野球部の方は、
退屈な冬場の練習を経て
今シーズン初めての練習試合。


試合前に勝負に勝つ方法を
部員たちに伝えた。


  「勝てるとか勝ちたいじゃなくて
   まず選手全員が勝つと決めることだ」


もちろん試合当日だけ
そう思うなら誰でもできるし
それはスポーツじゃなくて
レクリエーションだ。


勝つと決めて日々を過ごせるか
自分と戦うのがスポーツだ。


だから初戦はそれほど勝負に拘らない。
冬場の筋トレが個人のレベルを
何処まで上げることができたのか
今シーズンの試金石になる。



しかし、以前8対4で惜敗した相手に
今日は完封負けの大敗を喫した。
負けるにしても程がある。


敗戦の理由は極めて単純明快。
相手は以前より成長していたし
我がチームは点差の分だけ
成長が劣っていただけのこと。
試合はいつでも相手がいる。


冬場の練習を乗り越えて
手応えを感じていた部員全員が
猛烈に悔しがったし
試合の結果を恥じていた。


でも、僕らは野球が好きで
他人様には迷惑をかけていないから
明日強くなる為に胸を張って
天下の往来を歩く。

春の陽気になったと思ったから
革のコートをクローゼットの
少し奥にかけたら雪が降った。



今日は夕方からスタジオで録音。
録音といっても音楽じゃなくて
イベントに使うナレーション録り。


今度デビューするバンドの
お披露目ライブ中の寸劇用に
音楽プロデューサーの役で
バンドのメンバーを叱る。


  「一体なに考えてんだ?」


とか言う。


これが意外に難しい。
でも演出家は簡単に言う。


  演 「もう普段どおりやっちゃって下さい」


普段の自分なんて覚えてない。
だいたい普段からそんなに
叱ったり怒ったりしてるつもりはない。


  僕 「オマエら新曲のタイトルくらい
     考えてあんだろうな?あ?」


とりあえずナレブースで
マイクに向かってすごんでみた。


  演 「そうそう!いつもそんな感じですよ」


普段から僕は自己認識が甘すぎると
この演出家から指摘されている。


  演 「ただ上手くやればやるほど
     スタッフが萎縮するって言う
     変な感じにはなってますけど・・・」


でも、僕が自分をどう認識していて
他者はそれをどう受け止めてるのかに
まったく興味がない。


空気は読むものじゃなくて
吸ったり吐いたりするものだと思う。


  演 「アーサーさん次は『こらっ!』って
     3パターンくらい怒って下さい」


『こらっ!』にパターンなんかない。


  「こらっ!」


  「こらぁ~!」


  「こら」


でもそれなりに言い分けてみた。


  演 「最後の『こら』は優し過ぎますねぇ」


パターンて言ったの君だ・・・


  演 「もう少し本気で怒ってみて下さい」


早く終わらせたい僕は
リミッターを切って怒った。
もちろんマイクに向かってだけど。


  僕 「くぅおらぁぁっ」


  演 「・・・」


返しのコメントまで時間がかかった。


  演 「はいっオッケーです」


なんだ。良かったのか。
でも、生まれて初めて
怒声にOKをもらった。


僕は声も体も態度も大きいし
何なら人相もそんなに良くないから
怒っているイメージが
強いのかもしれない。


でも、思われてるほど怒ってない。
心の底から怒ったこともそれほどない。
僕が今までで一番本気で怒ったのは
まだずいぶん若い頃の話だ。




  その日の雪組さん(年少)は
  学芸会の配役を決めていた。
  担任のその子先生が言った。


  先 「みんなやりたい役に
     手を上げてくださ~い」


  皆 「は~い!」


  先 「じゃぁ紅すずめさん人は?」


    「は~い!」


  内容はジャングルの音楽会。
  紅すずめは主役だ。


  先 「ライオンさんの人は?」


    「は~い!」


  ライオンは強くて格好よい。


  先 「キリンさんの人は?」


    「は~い!」

 

  キリンは背が高くて格好よい。


  先 「シマウマさんの人は?」


    「は~い!」


  シマウマは綺麗で格好よい。


  でも、その子先生は気が付いた。
  僕は全部の動物に手を上げていた。


  先 「何でアーサー君は
     全部に手を上げるの!?」


  僕 「全部やりたいから・・・」


  先 「全部なんてできる訳ないじゃないっ!」


  僕 「でも先生が一つって言わなかったから・・・」


  先 「きーっ!なんて子なのっ!
     そんな子は廊下に出てらっしゃい!」


  その子先生が生理中だったとしても
  昨夜結婚を約束した男に振られてたとしても
  幼稚園児には関係ない。


  問答無用で廊下につまみ出された僕は
  大人の理不尽に経験したことのない
  大きな怒りを感じた。


  幼稚園舎は古い建物で窓や扉は
  サッシじゃなくて木枠にガラス。
  僕はやり場のない怒りを右の拳に固めて
  素手で窓ガラスを殴り割った。


  ドンッバリ~ンっ!


  小さな幼稚園中が大きな物音に
  視線を向けるとそこには
  血だらけの拳を握り締めた園児が
  仁王立ちで教室の中を睨んでた。


  園長のひさ子先生が飛んできた。
  その子先生は呆然と立っていた。
  でも僕は怒りが収まらなくて
  血だらけの拳で先生を睨んでいた。


  僕が人生で一番怒った瞬間。


  園長先生は僕の話を聞いてくれて
  でも物を壊してはいけないと教えてくれた。
  卒園式ではどの園児よりも強く長く
  僕を抱きしめて別れを惜しんで泣いてくれた。


  普段は厳しかったはずの僕の母親は
  ガラスを割った僕を叱ることもせずに
  「きっとこの子の考えている事は
  普通のオトナには理解されないんじゃないか・・・」
  と僕を英才教育研究所に連れて行き
  知能指数の測定テストを受けさせた。


  世界で一番の親バカに違いないし
  ヒトとしてはどうなんだと思うけど
  育ててくれた感謝だけは忘れない。
  知能テストの結果が200だったのは
  僕の最初で最後の親孝行。


  でも自分を曲げることを学べなかったから
  この歳までそれなりに苦労は多い。
  ただ僕は拳で何かを解決することや
  物を壊すことを止めることができた。
  それからそんなに怒ったこともない。



スタジオの中は窓もなければ
外の音とも遮断されてる。
しかも間接照明だから
時間の経過も判り難い。


偶然にかかってきた
ケータイの相手から
雪が積もっていると聞いた。


昨日は突然飲みに行ったから
クルマを会社の駐車場に置いて帰った。
今日は乗って帰りたい。
チェーンなんか積んでないけど
都内の道路は走れないほど
雪が積もることはないはずだ。


昨日は学生時代の後輩の
ジャンセンに連絡したら
すこぶるご機嫌に飲んでた。


  ジ 「アーサーさんは何処っすか?」


  僕 「恵比寿で仕事を片付けたところ」


  ジ 「じゃぁご一緒して下さいよ」


僕は酒席は断らない。
それに恐らく日本で最も有名な
歌手の一人を手がけてたこの後輩に
簡単なお願い事もある。


  僕 「オマエは何処で飲んでるんだ?」


  ジ 「渋谷です」


  僕 「じゃそっちに合流するよ」


  ジ 「どっかお店知ってます?」


  僕 「どんな感じ?」


  ジ 「静かで渋めでお願いします」


僕は渋谷のスナックを指定して
そこで集合することにした。
ちょっと渋すぎるしカラオケはあるけど
他にお客がいなかったから静かではある。


ご機嫌に酒を飲んで互いの健勝を確かめ合い
ついでにお願い事もできた。


きっと「お願い」じゃなくて
彼にとっては「命令」かもしれない。
でもどっちでも良い。


世相を反映しているのか
最近の男歌には深みがないと
ジャンセンは嘆いていた。


「熱いっ!熱いっすねぇ~」
が口癖のこの男は自分が一番熱い。


  ジ 「女歌を5度下げて歌うと
     ちょうど真裏で歌えるんですよ」


学生時代にマジソンズの薫陶を受けて
音楽業界に入っているジャンセンは
僕の好きな方向に狂ってる。


さだまさしの『まほろば』
熱唱した後にジャンセンが言った。


  ジ 「熱いっ!熱いっすね~。
     でも見えましたよ!
     次は中島美嘉の『雪の華』を
     5度下げて歌って下さいよ」


スナックのママは坂本冬美の
『また君に恋してる』を歌った後に


  ジ 「熱いっ!熱いっすね~。
     でも見えましたよ!
     次は浜崎あゆみの『Moment』を
     歌って下さいよ」


と言われて戸惑っていた。


ママがその歌を聞いたことがないと知ると
ジャンセンは自分で歌って見せたけど
優れた音楽ディレクターが
歌が上手いとは限らなかった。



この場末のスナックでは
僕はいっつもご機嫌で飲んでる。


自分が末っ子のママは僕を
弟ができたみたいだと言って
可愛がってくれるから甘えてる。


僕が母親みたいだと言ったら
少し拗ねて怒られた。
良く考えたら同じ辰年で
一回りしか違わない。


商売っ気はないけど
渋谷にはなかなか気を遣わずに
静かに飲める店も少ないから
それなりに繁盛もしてる。


でも僕はどうしても
ご機嫌で飲みたいから
居合わせた客の行儀が悪いと
つい悪い癖で説教もする。
自分を曲げる技術は持っていない。


  バカ騒ぎをしてる銀行マンに
  本当の「バンカー」とは何か
  朝まで説教したことがある。
  最後に名刺を交換したら
  副支店長だった・・・


それでもママはニコニコと
カウンターから見守ってる。


一度デスクの若い女の子を
連れて行ったら意外にも気に入って
月に一回は連れて行けとせがまれる。


先月一緒に行った時は
昔の会社で世話になった
元上司のカイザーさんが
若い部下たちと飲んでいた。


カイザーさんにこの店を紹介されたから
なんなら僕の方がお邪魔した感じ。


カイザーさんは定年で
僕は思いつきの気まぐれで
元の会社を辞めているから
その部下たちは知らない。


年配のカイザーさんは夜も浅いうちに
眠くなったと言って早々に帰る。

その後の宴席を仕切るのは
若いカール取締役。
なんなら僕のおとうと弟子。
彼は礼儀正しいし好人物だ。


しかし同席してる30歳の若造が
なんだかさっきからちょいちょい鼻に付く。
仕事の憂さ晴らしに羽目を外してるのだろうけど
僕にも僕の連れにも失礼気味。


  自分が世話になってる取締役が
  僕に気を遣っているのが嫌なのか?
  若い女の子とカラオケに興じる
  ご機嫌なオッサンが煙ったいのか?


ただ僕に喧嘩を売るにしては
腕前もキャリアも著しく足りない。


とはいえ僕ももうオトナだし
自分を曲げる術は知らないけれど
若者の奔放を許せるくらいの
器量はあるし、なければいけない。


できる限りの無関心を通して
連れのデスクの女の子と話してた。


  僕 「君もずいぶんと
     しっかりしたよなぁ」


彼女も今年で社歴が3年になる。
今では会社になくてはならない。


  デ 「でも・・・」


  僕 「でも?」


  デ 「入社当時にはアーサーさんに
     何度も怒られて辞めようと思った
     こともあったんです・・・」


  僕 「え?怒った?僕が?」


  デ 「いえ、今では怒ってもらって
     良かったと思ってますから・・・」


  僕 「え?怒った?何て?」


  デ 「甘ったれるな!って」


  僕 「え?甘えてたの?」


なんだか僕の質問が間違えてる。


  デ 「自分ではそんなつもりなかったけど
     教えてもらって当たり前みたいな・・・」


  僕 「え?僕は教えなかったの?」


  デ 「いえ、結局教えてもらいました」


  僕 「でも怒ってたんだ?」


  デ 「はい、怒ってました」


  僕 「僕は怒ったつもりはないけどなぁ。
     君の受け止め方じゃない?」


  デ 「そうかもしれません・・・」


  僕 「そうだよ。僕は怒らないよ」


20歳そこそこの女の子には
僕が真面目な顔で話しをしたなら
少し怒られてると思うのかもしれない。


その時、隣の席の若造が
何か僕に話しかけようとした。
面倒臭いので気付かないフリをすると
口笛を吹いて僕を呼んだ。
僕の中で何かのスイッチが入った。


  僕 「あ?オレに用か?」


  若 「さっきから呼んでんすよ」


  僕 「知らねぇよ。
     オマエとする話なんかねぇよ。
     顔見りゃ頭悪いのは判るけど
     ヒトが話ししてんのも解んねぇのか?
     つかオマエ今オレに口笛吹いたか?
 


  若 「吹きましたよ」


  僕 「おぅ小僧っ!
     俺が犬に見えんなら
     その腐った目玉くりぬくぞっ」


  若 「小僧とか年齢とか
     関係ないじゃないっすか!」


カール取締役は突然の出来事に
何が起こったのか解らずに
ただ顔が青ざめてた。


  僕 「関係あるだろバカ。
     オマエが小僧じゃなかったら
     表で顔の形変えてんぞっ!


  若 「・・・」


  僕 「ウソだと思うなら立てよっ!
     オマエみたいな甘ったれた小僧が
     遭った事もない目に遭わせてやんぞっ


事態がシャレにならないと思った
カール取締役が割って入った。


  カ 「申し訳ありませんっ!」


もう半べそで謝ってる。


  僕 「ほら見ろ小僧っ!
     オマエのせいで上司が謝ってんぞ。
     自分のケツもふけないなら
     端っこでおとなしくしとけっ!」


  若 「・・・」


  カ 「いや、もう本当に口笛とか
     あり得ないですから・・・
     なんか私の力不足でご不快にさせて
     本当に申し訳ありません」


  僕 「いや、カールさんじゃないだろ?
     このボンクラの直接の上司が
     よっぽど能無しだからオタクの会社は
     こんなチンカスが平気で息してんだろ?
     おう小僧っ!そいつをここに今すぐ呼べ!」


  若 「・・・」


  カ 「いえ、普段は真面目な社員で・・・」


  僕 「まじめぇ?真面目だからなんだっ!
     自分に嘘ついて下らん仕事してるから
     酒飲んで憂さ晴らしてんだろ?
     安い人生だなっ!おいっ!
 


  カ 「いや、もう本当に何と言って良いか・・・」


  僕 「相手選んで喧嘩売るくらいできねぇのか?
     どんだけ頭悪いんだ?いや、頭じゃねぇな。
     生きる性根が座ってねぇんだろ?
     負け犬の匂いがプンプンするぞっ!
     世の中なめてんなら今すぐ死ねっ!」


ここで若造は泣き崩れた。


  隣の先輩女子社員がなんだか慰めてる。
  僕に後輩の非礼を詫びるのが先だと思う。
  そうしないとこの若造は浮かばれない。


  他人に迷惑をかけた自分の子どもを叱れない
  ダメな母親みたいで気持ちが悪い風景だ。
  こいつの子どもはきっとちゃんと育たない。


  若 「いえ、悔しいんじゃないんです・・・
     全部その通りだから涙が出るんです」


嗚咽まじりに搾り出しても
自分本位の安い台詞しか出てこない。
頼みもしないのに安い舞台を
無理矢理見せられてるみたいで
反吐が出る。


脳が半分以上壊死してるんだろう。
遅かれ早かれ野垂れ死ぬ。
ただ僕は返り血も汚さそうだから
生かすも殺すも関わりたくはない。


この場合の正しい男の子の作法はたった一つ。
僕の目を真っ直ぐに見て謝るしかない。
オマエの感情なんかに興味はない。



ここでママが何もなかったかのように
カウンターから出てきた。


  マ 「あら~どうしたの?」


何があったか解らないほど
このお店は広くない。


でも僕はハッと気付いた。
隣にデスクの女の子がいることを・・・
さっき「僕が怒るはずないだろ?」
って話してた。


大嘘つきになった僕は
彼女の顔を見ることができなかった。
しかもお店の空気は最悪だ・・・
そしてこの空気は僕が吐いた。


  マ 「ほらアーサーさん歌ってよぉ」


ここは知らん顔してママに乗っかる。


  僕 「よぉし!嵐でも歌おうかなっ」


僕の歌う『Everything』の
少し切ないメロディをバックに
時々若造の嗚咽が漏れ聞こえた。



「その時」彼女が僕の隣で
どんな顔してたのかどうしても
知りたかったから後日会社で訊いた。


  僕 「いや~この前は大人気なくてごめんね。
     僕が怒る訳ないって言った端から
     思いっきり怒っちゃってさぁ・・・
     君の顔見れなかったんだけど
     あの時一体どんな顔してたの?」


  デ 「私もアイツにムカついてたし
     とりあえずアーサーさんに乗っかって
     『どうだこの野郎っ!これでも食らえ』って
     きっと得意気な顔してたと思います(笑)」


やっぱり間違いなく女性の方が
したたかで、しなやかで、強い・・・
若造は僕にじゃなくてこの女の子に負けてた。
本当に当社の社員は頼もしい。



そして僕は、拳で解決しなくても
喧嘩相手の心をへし折って
泣かせることができるようになったと
僕を力いっぱい抱きしめてくれた
天国の園長先生に報告しよう。


そしたらやっぱり廊下に立たされると思う。
弱いもの虐めをしちゃいけない。

六本木で占い師をやってる女性に

  占 「アーサーさんはタバコをやめられないから
     せめて1mgの銘柄にした方が良いです」

と言われた。


占いを頼んだ訳じゃないのに
唐突にそう告げられた。

僕はタバコをやめられない運命?

  僕 「占い的にそうなの?」

  占 「いえ、体に良くないから・・・」

なんだ・・・
普通に心配してくれてた。

先日もデスクの女性たちが
手相を見合いながら
談笑してる横を通ったら
僕のも見てくれると言う。

  デ 「肉厚ですね・・・」

それは手相じゃない。

そして僕の生命線の長さが
尋常じゃないと言う。

  デ 「肘まで繋がってるんじゃないですか?」

手首を越えたら手相じゃない。

占いに拒絶されるのは
何か言えないくらいの
秘密の運命でも抱えているようで
ちょっと不安だ。

でもタバコは自分でも
やめたいと思ってるから
例え占いの結果じゃなくても
彼女の言うことを聞いた方が良さそうだ。

タール8mgのマイルドセブン ライトから
1mgのマイルドセブン ワンに変えた。

最初は軽すぎて不味かったけど
最近はそれに慣れてしまったから
やっぱり本数が1.5倍くらい増えてる・・・


でも8倍までは増えてないから
今もタバコをくわえながら
とりあえず良しとしてる。

僕だけではないと思うけど
喫煙量が爆発的に増えるのは
デスク作業中とお酒の席。

僕のオフィスは喫煙OKだから
黙々と作業をしながらモクモクと煙を燻らす。

何度も主張しているけど
僕はお酒が好きじゃない。
それでも酒席には事欠かない。

しかも無類のお喋りだから
飲み始めればご機嫌に喋り捲る。
タバコも吸うから喉が渇く。
喉が渇くから目の前の酒を煽る。

お店はボトルを空にしたいから
次々とグラスを満たしてくれる。


  医学的には「酒」は水分じゃないから
  いくら喉の渇きが癒えた気がしても
  水分補給になってないらしい。
  だから夏場に仕事終りのビールのために
  無理して水分を摂らないと通風になると
  聞いたことがある。


その上カラオケカラオケまで歌った時は
翌朝の喉の痛みは度を過ぎている。
もう二度とお酒もタバコもやらないと
ボーカリストの僕は猛反省する。

往生際が悪いと知りつつ何度も
お酒が好きじゃないと主張してるのは
自分でも不本意だからだと思う。

でも、本当なんだ・・・

お酒を飲むのは大なり小なり
仕事が絡んでる時だけ。
もちろん僕は男の子だから
誘われた酒席も断ったりはしない。


仕事で使ってるワインクラブがある。
座っただけで数万円だから
仕事でしか使わないけど
顔見知りになるくらいは通ってる。

そこでも僕は相変わらず喋る。
いや、むしろいつもより喋る。
きっとご機嫌だからじゃない。

初めて会った水商売の女性に
商売道具の鼻濁音で甘えられても
なんだかちっとも嬉しくない。

こんな場所での番長気質は
まったくもって無粋だけれど
そのことを悟られないように
喋り捲るんだと思う。

攻撃は最大の防御・・・

女性に囲まれてまったりできる才能を
神様は僕に与えていないらしい。

金を払って気を遣うのは
勿体ないからプライベイトでは
絶対に行かない。

きっと僕の席に着いた女の子は
僕の話を聞くふりして休憩してる。
ママとかチーフの女の子とか
しっかりしてる女性とならば
何とか話がかみ合う感じ。

だからママの仲良しってことで
若い女の子まで気を遣ってくれる。

最初にお店に入ったのが
ビッグネームと一緒だったし
喋ってるだけで悪さはしないから
そんなに悪い客でもないと思う。
なんならちょっと遊び慣れた
愉快なおじちゃんだ。

それでもママは僕の好みを探ろうと
次々に女の子を席へ呼ぶ。

僕は別に好みの女の子を
探しに来ている訳じゃないから
親しく話しても顔と名前を覚えない。

一度チーフの女の子に

  「可愛がってる妹分なの。
   絶対アーサーさんと気が合うと思うわ・・・」

そう言われたので気を遣って
せっせと営業メールに丁寧な返信をしてたら
まったく違う女の子だった。

気を遣いあう意味のない消耗戦・・・

だから席に着いた女の子にも
名刺は渡すけど営業メールは
絶対に送るなと言って聞かせる。
電話なんて以ての外だと。

いくら誘われても必要がなければ
飲みには来ない。

ところがもの凄い遠慮がちに
顔見知りのチーフの女の子から
営業メールが届いた。

僕に営業をかけても無駄なことを
誰よりも良く知ってるはずなのに
訊けば後輩たちの誕生日が重なって
そっちの動員の心配をしていたら
今月の自分の同伴ノルマが
あと1人足りないと言う。

  ラブレター
  アーサーさん明日か明後日の
  夕方って空いてますか?
  白状しちゃうとどうしても
  今月の同伴があと一人だけ足りなくてしょぼん
  後輩の誕生日の応援に必死で
  ようやく一段落したら
  自分のこと思い出して
  ビックリしちゃって・・・
  アーサーさんは飲みに来るの
  好きじゃないって知ってるから
  メールも控えてたんだけど
  超困ってメールしちゃったあせる
  夕方から大丈夫だったら
  食事つきでニコニコ音譜
  無理なら21:00までに
  お店に来てくれれば同伴になるから
  本当に助かるんだけど・・・
  ご検討よろしくお願いしますっあせる

思えば「後輩」の女の子の
誕生日パーティにも一度も顔出してないし
既に頼めるのは僕くらいしかいないらしい。

  手紙
  明日は仕事が夜までかかりそうで
  明後日は高校の同窓会があるけど
  何とか調整して行くようにします。
  食事は無理だけどお店の前で
  20:45に待ち合わせでよいですか?

  ラブレター
  なんだか迷惑をかけてごめんなさい。
  不甲斐なくってお恥ずかしいけれど
  ギリギリまで他のお客さんを探して
  みつかったら「大丈夫ですっ」ってメールするね。
  ほんとありがとうラブラブ

で、結局他の当てはみつからず
僕は遅れる旨を幹事に伝えた。
一方、同窓会にはサミーも来るらしいので
正直参加したくはない。

さて、女の子のピンチを
救うと決めたのは良いけど
一人でお店に行ったら
今度は僕がピンチになる。
誰か友だちを誘って行こう。

  携帯
  僕 「あ、アーサーだけど元気?
     今日は折り入ってお願いがあるんだ。

  友 「どうしたの?」

  僕 「今晩9時から11時まで空いてない?」

  友 「え?なに?」

  僕 「無理しなくて良いけど空いてるなら
     おごるからちょっと高級な
     おねえちゃんのいるお店に
     付き合って欲しいんだ・・・」

  友 「お、良いねぇ。
     あ、でもちょっと待ってもらえる?
     ちょっと調整しなくちゃいけないかも」

  僕 「あ、調整するなら無理しなくて良いよ。
     急いでるんで他を当たる・・・」

「おねえちゃん」と「おごる」
のキーワードにみんなが一度は
調整しようとしてくれる。

でも今日の今日だし月末だから
なかなか即決と言う訳にはいかない。
僕も少し焦ってるから待ってられない。
それに僕には鉄板で誘える友だちがいる。

  ちちはるお。

でも仕事上で何一つメリットがないから
最後の切り札として取ってある。

  携帯
  僕 「あ、アーサーだけど元気?
     今日は折り入ってお願いがあるんだ」

  ち 「珍しいなアーサーがお願いなんて」

  僕 「今晩9時から11時まで空いてない?」

  ち 「今晩は地元の商店街の新年会があって
     どうしても出なくちゃいけないんだ・・・」

  僕 「え!」

伝家の宝刀を抜いたっと思ったら
ボロボロに錆びてたくらい僕は焦った。

  僕 「どうしても出なくちゃダメか?」

  ち 「どうしても出なくちゃダメなんだ・・・
     しかもちょうど同じ時間だ」

ちちはるおは家業を継いで
今では立派な経営者だった。

  僕 「地元の付き合いじゃ無理は言えないな」

  ち 「いや、本当にそうじゃなきゃ
     何があっても付き合うんだけどな」


仕事の邪魔をしてまで
お願いすることじゃないし
別に僕が一人で少しの間だけ
おねえちゃんに囲まれるのを
我慢すれば良いだけだ。

  僕 「わかった・・・悪かったな」

  ち 「ごめんな。で、何だったの?」

  僕 「実はちょっと事情があって
     おねえちゃんのいるお店に
     付き合って欲しかったんだ・・・」

  ち 「え?おねえちゃん?」

  僕 「そうそう行けない高い店だし
     せっかくだから誰かと一緒に
     行こうかなと思ってさ」

  ち 「アーサー困ってるの?」

さっき折り入ってお願いした。

  僕 「いや、困ってたけどもう良いや。
     そんなに無理させることもないし」

  ち 「いや、困ってるだろ?」

  僕 「いや」

  ち 「水臭いなぁ」

  僕 「だって商店街の新年会だって・・・」

  ち 「何時だっけ?」

  僕 「21:00だよ」

  ち 「大丈夫だ」

  僕 「何が?」

  ち 「オレが」

  僕 「新年会は?」

  ち 「来年もあるし」

  僕 「じゃ20:45にドンキの前で
     待ち合わせで良いか?」

  ち 「あぁ、行くよ」

やっぱり鉄板だった。

ワイン

お店では相変わらず僕は喋りっぱなしで
ちちはるおは相変わらず寡黙だった。
きっとまたその晩のオカズを
脳裏に焼き付けるのに余念がない。

あっという間に2時間が経った。

ちゃんと義理も果たせたから
お店を出てから同窓会の幹事に
電話をしてみるとまだ一次会だと言う。

  幹 「アーサーが来ないから
     延長してもらってるんだよっ!」


  僕 「あぁ!ごめんっ!急いで向かうっ」

  幹 「サミーが急げって」

  僕 「あ?命令口調か?
     ちょっとサミーに代わって」

  幹 「わかった」

  ・・・・

  サ 「違うよ。急いで下さいって言ったんだよ。
     みんな待ってるから早く来てね・・・」


  僕 「今、ちちはるおと一緒なんだ」

  サ 「え?そうなの?元気なの?
     会いたいなぁ。一緒に来ないの?」


  僕 「質問は一個にしろよ」

  サ 「ちちに代わってよ」

ちちはるおはさっきの記憶が
鮮明なうちに一目散に
帰宅したいに決まってる。

  ち 「あぁ・・・あぁ・・・解った
     だから解ったって。行くよ行く」


サミーがどんな風にちちはるおを
説得したのか、狂人同士の交渉を
僕が理解できるはずもない。
とにかくちちはるおも恵比寿の会場に
同行することになった。

  ただ、本当にちちはるおは
  一通り挨拶をした後に
  残り物のチヂミを食べて
  そそくさと帰って行った。

お酒が好きじゃない僕は
今日3件目の飲み屋に付き合って
結局朝まで飲んでいた。
きっとお酒が僕のことを好きなんだドキドキ
最後まで残ったのは僕とサミーの他には
ツワモノの女性が3人。

なんだか高校の同級生と
話すことなんかすぐに尽きるので
僕は、実はサミーはカリスマなんだと
マジソンズを知らない彼女たちに
無責任なプレゼンをした。

すると一昨日一通のメールが届いた。

  ラブレター「サミー高田さん単独公演へのお誘い」

  ようやく厳しい寒さから開放され
  春に向けて桜の開花が待ち遠しい
  今日この頃いかがお過ごしでしょうか?
  さて来る3月12日金曜日
  大人の待ち新橋界隈で伝説のシンガー
  サミー高田さんの心に染み渡る歌を
  聴きにいらっしゃいませんか?
  時間は7:30くらいを予定しております。
  皆様のご都合を今週金曜日5日までに
  小職までご返信下さい。

差出人はとある外資銀行の女性部長。
僕は5日を待たずに即返した。

  手紙
  いやだね。

もちろん僕は男の子だけど
酒席じゃないからきっぱり断る。

だいたいサミーの歌は心に染みない。
直接脳に響く。

まったく昼夜逆転が戻らない。
せっかく昨晩は早く寝たのに
うっかり昼寝をしてしまった。


昼間に行動できないのは
いかにも不便なものです。
今年から通おうと思っていた
ジムに申し込みに行けない・・・


実は松の内が明けた頃に
ようやく正月気分になって
今年の心構えなんかを考えてみた。


  やりたいと思った事を
  もう少し真摯にやろう。


元々やりたくない事は絶対やらないし
やりたい事も時々しかしない。
簡単に言えば自分の欲求に対して
かなり「ぐうたら」にしてきた。


それでも何かと旧年中は
忙しなく過ごしてしまった。
したい事をしたと言うより
すべき事をした感じ。


自由でいるためには
すべき事を為さねばならず
そういう意味ではかなり
自由でいられたので
楽しかったんだけど。


いつか大人に成ったら
「すべき」と「したい」が
重なってくれると信じて
ここまで過ごしてきたから
もうそろそろ良いかなと思った。


もう立派な大人だし。


で、手始めに、今まで放置してきた
「したい」ことを棚卸してみた。
スポーツジムに通うのはその一つ。


1)禁じる


嫌煙ブームには物申したいけど
自分の健康を考えたら
吸わない方が良いのは明白。

だから、8mgから1mgに
タバコの銘柄を変えてみた。

1mgを吸っても旨くないから
ひょっとしたらタバコを
やめれるかも知れないと思った。


ところが時を同じくして
時々肺が痛くなった。


それ肺気泡じゃないですか?


母親が看護士をしている
若い女性スタッフが教えてくれた。


自然に治るみたいだし
イケメンがかかる病気だって
お母さんが言ってましたよ・・・


何だか余計に心配になる・・・

あんまり心配そうにしてたら
仕事の打ち合わせ中に
ヘアメイクの女性が教えてくれた。


軽いタバコにすると
物足りなくて深く吸うから
肺に負担がかかることが多いって
お医者さんが言ってましたよ・・・


男性は「心配」することさえ
失礼にあたると遠慮するから
こういう時の女性は心強い。


試しに深く吸わないようにしたら
すっかり肺の痛みはなくなった。
でも、最近1mgの軽さに慣れて
禁煙できるか少し不安。



2)鍛える


僕のささやかな自慢は
野球を教えている高校生に
バッティングで負けてないこと。


ところがここ数年は
思うように打球が遠くに飛ばない。
きっと体のキレと腕力の低下が
原因なんだと思う。


若い頃は、握力が95kgで
背筋力は210kgあったけど
一度も筋トレなんかしたことなかった。
でも、そろそろ鍛えないと
衰えは隠せない。


生まれて初めてスポーツジムに
通ってみようかと思ったけど
なかなか申し込みに行けてない。



3)作る


もうずいぶんと長い間
自分の中のクリエイティビティを
ビジネスのモデルを作ることで
満足させてきた気がする。


まだ「すべき」事は多いけど
ぐうたらにしてきた時間を
コンテンツ作りに費やしても
何の罰も当たらないと思う。


取り急ぎ、マジソンズとは別の
音楽ユニットはローンチさせた。
ただ、時間がなかったので
僕はプロデュースのみでしか
参加していない。


近々にあと数曲を作って
本格的に始動させようと思う。


あとは暖かくなったら
友人の木村タカヒロ君に
絵の描き方を教えてもらう
約束をしているから
描き溜めてある絵本を描こう。




ゆっくりだけど確実に
少しずつだけどダイナミックに
楽はせずに楽しいことだけ
していこうと思う。


言ったからには
やらなくちゃならない。
皆さん厳しく見守って下さい。

ようやく年賀状を投函した。
ぎりぎり松の内とはいえ
相手に届くのは数日後だから
寒中見舞いなんだけど・・・


お年玉葉書の抽選日前なら
何とかセーフだと思いたい。


数年前は能動的に300通の
年賀状を出していたけど
今の仕事に変わってからは
頂いた賀状に返事をするだけ。


まったく不遜だとは思うけど
数えたら100人くらいの方々と
まだ年賀状のやり取りがある。


全国では毎年20億通くらいの
年賀状が配達される。
単純平均で一人16通だから
100通でも少なくはない。

200通を惰性とは言わないけど
時々は人間関係も棚卸した方が良い。
僕が元気だろうかと気になる人は
僕が元気かどうか気にしてくれる。


実際に僕の現状を鑑みれば
年末年始も昼夜も関係ないから
なかなか年賀状の気分になれない。
気分じゃないと書けない。


そういえばずっと前から
いくら郵便局が騒いでも
クリスマスあたりに
年賀状を投函したことはない。


毎年、除夜の鐘を聴きながら
せっせとコメントを書いてた。

年を越す前に 「今年もよろしく」 じゃ

本当の虚礼になってしまう。

せめて、日頃の感謝や
ご無沙汰の非礼を詫びるなら
少しくらいの気持ちは込めたい。
虚礼ならばしない方が良い。


でも、受け取る側になれば
元旦に届く年賀状は嬉しい。
でもやっぱり僕は書かない。書けない。
きっとこのアンビバレンツは
どうしようもない。


マジソンズの中の日々




普段は手紙や葉書の
やり取りなんてないから
息子たちは年賀状を珍しがって
元旦は郵便受けのチェックに
朝から大忙しだった。

「お父さんっ!お父さんっ!」

年越しはスタジオだったけど
せめて元旦はお休みだから
僕は昼頃に起きて新聞を読んでた。

「ん?どうした?」

階段を駆け上がってきた
息子たちに尋ねると
ちょっと嬉しそうに答えた。


「小栗旬から年賀状が来てますよっ!」

それは日本中のほとんどの家に
届いているはずだ。

気が付けばもう新年も
三が日を過ぎてた。

「忙しい」

と誰かに言うと
それは自分の能力のなさを
口外していると思うから

「バタバタしてる」

と言い換える。
僕のささやかな虚栄心・・・
で、今年は年末も年始もなく
公私にバタバタしてた。
適当にサボってはいたけど
休日はなかなか取れなかった。
日記に書くことは多いのに
日記を書く時間がない。



マジソンズの中の日々
ある晴れた昼下がり
市場へ続く道を運転してたら
荷台に馬を積んだ
トラックに出くわした。



マジソンズの中の日々
木村タカヒロ君の
個展を応援する為に
代官山駅前のカフェで
お店のガラス窓に
ライブペインティングを
してもらった。

画はその後2週間ほど
個展の宣伝の為に
残してもらったから
要らぬ用事を代官山に作っては
何度も店の前を通りすがった。




マジソンズの中の日々
西京焼きは僕の好物の一つ。
銀ダラがポピュラーだけど
「NOBU」で食べた鮭の西京焼きは
恐らく今まで食べた中で
一番高価だけど一番美味しかった。



マジソンズの中の日々

マジソンズの中の日々
突然スタッフから京都に呼ばれた。
新幹線から富士山を撮ったら
良い感じに歪んで見えた。

マジソンズの中の日々
現地に着くとスタッフが
とあるCMに出てくれと言うから
軽い気持ちで引き受けた。
でも予想以上にOAされて
反響の大きさに少し焦ってる。
でもまだ自分で見たことはない。



マジソンズの中の日々
母親に付き合って
年末恒例になってる
寄植え用の花を
買いに出かけた。
年に一度の親孝行だ。



マジソンズの中の日々
ここ数年で手に入れたモノは
数え切れないほどあるけど
失ったモノは曜日の感覚と季節感。

だから街のX'masツリーを見ると
マメに写真を撮るようになった。
昔はまったく興味がなかったのに。
銀座資生堂ビル前のツリーは
艶やかだけど少し下品だった。
自宅のクリスマスツリーを装飾した。
銀座のツリーに比べてささやかだけど
息子たちの笑顔を想って飾ったから
少しは優しく光ってるはずだ。



マジソンズの中の日々
来年の年賀状の素材用に
スーツのままで
ウサギの被り物を着けて
現場ではしゃいだ。



マジソンズの中の日々
ウィスキーボンボンを食べてたら
誤って中味のウィスキーをこぼした。
でも、ちょうどコピー用紙の上に落ちて
綺麗な形になった。


やっぱり本当は
忙しいんじゃなくて
バタバタしてた
だけだったかもしれない。


今年もあなたが
幸せでありますように。

銀座で飲んだ。


巷間は不景気だって話だけど

通りも店内も意外に賑わってた。


僕はお酒が好きじゃないから

仕事の付き合いでしか飲みに行かない。

でも、付き合いが良いから

頻繁に飲みに行くことになる。


だから人並みに馴染みのママとかがいる。


「こんなに繁盛してるなら

 無理して来ることなかったよ・・・」


かる口を叩いたら真顔で反論された。

来週末はクリスマスだから

銀座の年末需要は今週がピークらしい。

家族持ちは家庭に帰る。


「だから、来週も来てよね」


ちょっと甘えた声で誘われたからと言って

ほいほいと来週も飲みに行くつもりはないけど

リアルにクリスマスはきっと夜中まで仕事だ。


失った季節感を埋めるように

クリスマスのイルミネーションを写真に撮った。


マジソンズ日記

資生堂ビル前。



それにしても、ここのところ寒い。

曜日は判らなくなっても季節は感じられる。