ゴダイゴの浅野孝己さんが亡くなった。
2020年5月12日、日本ではコロナ禍の外出自粛要請が4月7日に出て、予定されていたライブなどのイベントがまずは延期され、その後キャンセルされていくという状況が続いていた。浅野さん自身が「家にいよう。健康に気を付けて。」とメッセージを出してくれていた。ミュージシャンの中にはオンラインでのライブを始め、世界に散らばるファンと繋がり始める人たちがいたし、ゴダイゴのボーカルであるタケカワユキヒデさんもソロの弾き語りライブを2度ほど試験的に行っていた。「2週間後の5月16日にはミッキー吉野さんが電話で飛び入り参加する」と聞かされ、ファンである私は「最終的にはメンバーとファンをオンラインでつないでゴダイゴのオンラインライブも行われるようになるはずだ。」と、その進化形を楽しみにしていた。そんな中の突然のニュースだった。
SNSでは多くのファンが繋がっていて、短い書き込みが続いた。「え!?」「嘘だー」「嘘と言ってほしい」。しばらくは誰もその決定的な言葉を書かなかった。そしてミッキー吉野さんとタケカワユキヒデさんのコメントが出されて、それを事実として受け止めなければならないのだと分かった。浅野さんが亡くなった。
アメリカで早朝にそのニュースを見た私は、しばらくは茫然自失、ぼんやりとしていた。その後、シャワールームでむせび泣いた。息ができない。悲しいニュースを拒絶するように呼吸器が震えながら体内の空気を排除する。必要な空気を拒絶して私の胸は苦しくなる。助けを求めて胸いっぱいに空気を吸い込み、またそれを拒絶して絞り出す。助けを求めながらそれを排除するということを繰り返し、私は声もなく泣いた。メンバーの死。それは私がこの数年にわたって最も恐れていたものだった。
私は家族に「もう今日は何もできない」と宣言してベッドで1日を過ごした。泣いて、寝て、また泣いた。目が覚めた時に目の中とまつ毛の周りに涙がたまっていて、「ああ、寝ている間も泣いていたんだなあ」と思った。寝ている間も涙が出続けているなんていうのは初めての経験だった。初めての現象なので何と説明したら良いのか分からない。普段は自覚できない程深い所にいる、本当に数年に1度姿を現すもう一人の自分がいるのだけど、そのもう一人の自分が心の底から泣いているのが分かった。突然短く嗚咽したりして、自分で驚くくらいに、もう一人の自分が泣いていた。
