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 27日(金)、親しくしている海田悠さんの写真展の内覧会に出かける。今回、海田さんは松下幸之助が作った京都の真々庵を2年かけて撮った。その撮影中の苦労話は以前から聞いていた。
 海田さんの写真集を5点、わが社から刊行しているが、いずれも肖像写真集だ。肖像写真ではいまや日本を代表する写真家の海田さんだが、風景写真ではいったいどんな仕事をするのか、興味深いところだった。肖像写真はいわば生き物を撮る仕事。撮影現場にこれまで何度か立ちあったが、生き物である人を撮る時、この写真家の天才的なひらめきが発現され、被写体である人物は、普段は見せない自分の一面を、やすやすと彼の前にさらけ出してしまう。だから時として撮られた本人も驚く秀逸な肖像写真が生まれてきた。それを、海田マジックとみんなは呼んでいる。
 それに対して、今度は庭というスタティックな対象を撮るのだ。どこまで彼の才が生きるのだろうかという興味である。
 会場の入口で旧知の書家・矢萩春恵さんとお会いしたので、ご一緒に見て回る。南禅寺のそばにあるというこの庭自体、いままで一般公開されてこなかった庭だから、まずどんな庭なのか知りたかった。京都の庭はずいぶん見てきたつもりだが、何点かの写真を見るうちに、これは凄い庭だと思えてきた。趣向の違う小庭がいくつもあり、その奥行きの深さに驚く。もちろん東山の借景は最大限に生かされている。対龍山荘や無鄰庵で知られる庭師小川治兵衛が明治の末年に作り、昭和になってこの庭を購入した松下幸之助が、自分の考えで作り変えさせたものという。
 さらに見てゆくと、写真家の意図もだんだん見えてきた。同じ庭と思えないほど、様々な顔がある。季節によって変わる表情・・・・・・。そして何より、庵主の気持ちと、えも言えぬぬくもりが感じられる。このスタティックな対象を、彼は、やはり生き物として捉えようとしている・・・・。
 レセプションの会場には、松下電器の会長を初めとする経済界や政界の関係者も集まっていた。挨拶に立った海田さんのスピーチが、これまでになくよかった。どうしても雪の庭を撮りたい、しかし、雪はなかなか降ってくれない。そして、2月の終わりのある日、とうとう雪が降った。早朝、その雪の庭に立った時、身体全体が震える感動を覚えたというエピソード。写真家の真面目が発揮される瞬間だろう。
 有明の月が右の空にかかる朝ぼらけの雪景色の一点があった。この一点が、写真展中の白眉かもしれない。(7月10日までパナソニック汐留ミュージアム)