「これはあなたのもの」を5月末に書店発売した。ノーベル化学賞を福井謙一さんと共同受賞したアメリカの科学者、ロアルド・ホフマン氏の自伝的戯曲である。5歳のときにウクライナ人の家の屋根裏部屋にかくまわれ、母と共にユダヤ人迫害を奇跡的に生き延びた。父や叔父たちは虐殺されている。「もう一つのアンネの日記」と謳って、芝居も5月半ばから各地で公演中。演出は日本を代表する演出家の鵜山仁さんだ。6月15日からは東京の新国立劇場での上演がスタートする。書店からの事前注文はまずまず好調である。ホフマン先生も来日される予定だ。
昨日、品川のインターコンチネンタルホテルで会合があり、夕方出かけていったが、入り口を間違えて、オフィス棟に入り、エレベータで上がったり下がったりして大いに迷ってしまった。品川駅の変貌振りに驚く。開発が終わった渋谷駅の地下通路の迷路に悩まされ、ほとほとあきれたのはつい2年ほど前だったか。横浜のみなとみらい駅周辺で迷子になったのは先月のことだった。開発が急で、われわれの生活スピードではついていけない。渋谷駅の地下通路などは、年寄りを絶望的な気分にさせる。
外人観光客がこのところ急増している。その割りに外人ののべ宿泊数が増えないのは変だ、と朝日新聞が報じていた。摩訶不思議だが、空港で毛布を借りて夜を明かしたり、知り合いのアパートに転がり込んだりしているケースも多いと記事に書かれていた。「日本の宿泊施設は、狭いのに値段が高い」という。
外人観光客が増え続けている理由は、日本の魅力やおもてなし文化が広く外国人に知れ渡ってきたからだと、おめでたい受け止め方をしているいるメディアも見受ける。果たしてそうだろうか?
主としてアジア各国に対すビザ発給条件の大幅緩和と円安が大きな理由のようである。政府は調子に乗って「観光立国」を声高にいうようになった。しかし、観光庁というお役所が何をしているのか、一向に見えてこないし、外国人に本当に日本は親切な国なのかと大いに疑問がわく。東京に生まれ育った私ですらしばしば迷子になるのだから、外国人にとって、メガロポリス東京ははなはだ不親切な都市ではないか?
公共交通機関の英語表記はいうに及ばず、日本語表記ですら、分かりやすさという観点で、欧米の大都市とは比較にならない。外国人に分かりやすく、などという観点はハナからないのではないかと思える。
都市を開発するときにまず必要なのは、政治の力だろう。民間の大手企業グループが自分たちの理屈を優先させてばらばらな開発をしていたら、新しい都市が住みやすく、心地よくなるはずがない。パリの街は、通りの名前と番地が分かれば、必ず目的地にたどり着けるのだという経験をしたことがある。
ある新聞の調査では、外人観光客の不満は、無料公衆LANが整備されていないこと、英語を話せれる日本人が非常に少ないこと、交通機関の表記の分かりにくいこと、の三つが上位を占めていた。
いやいや、「観光立国」など遠い遠い道だ。それよりまず、日本人にとって住みにくい街づくりだけはやめてもらいたいのである。
