太陽も泣いている、 | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる

東京大空襲を忘れな 6

 

太陽も泣いている,

 

灰燼と化した東京の空が白む

生きながら殺された 人間の死臭に満ちて

十万人を焼きつくした煙が重く漂う

血の色で昇る太陽 / 母が ぽつりと言った

ほら / 太陽も泣いている

 

この残虐・非道なアメリカの東京大空爆は、死んで地獄に。生き残っても地獄であった。十万人を焼き殺した煙に覆われた東京の空。黒い煙の中に昇る太陽まで、悲しみに真っ赤に泣いていた。焼け跡の中に着の身着のまま、ボロボロに崩れた老女も泣いていた。

父は戦場に、食事は大豆の搾りかす。など、すべては辛く、貧しかったが、残された家族は、支え合って、昨日までささやかな幸せの中で生きていた。それが、一夜明けると。住んでいた家は焼かれ、鞄も教科書も灰になり、希望も明日も未来まで、すべてを奪われて焼け跡の中に佇んでいた人間たち。ここからの生き方は、人間の尊厳や誇りもなく、ひたすら生きるために生きてきた。現代社会に、この東京大空襲を知る人はあとわずかになった。

 

絵と詩、23お姉ちゃんは泣かないよ。 24一人だけ残った美智子ちゃん。

25お母ちゃん、あたい綺麗になったでしょ。 25“何処へいくのかさまよう老女。

 

2022年3月11日、金、