東京大空襲、すがるのは祈りだけか、 | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる

東京大襲を語りつぐ。07、 

すがるのは祈りだけか、

すがるのは祈りだけか

見上げると雲の切れ間に

B29の巨大な胴体がのぞく

キラキラと光り 空に散る ナパーム弾

頭上に降りそそぐ 数万発の油脂焼夷弾

死の戦きのなか すがるのは祈りだけか

 

燃えながら出てきた男

炎の中から 抜け出てきた男

をかぶり 火に叩かれながら

顔が燃え 足が燃え 身体が燃え

狂いながら死を舞う

 

生れる前に殺された

29より投下された数万発の黄燐焼夷弾 

炎の中を逃げまどう人々に降りそそぎ

一発が背後から妊婦をぶち抜いた

母親と胎児が一瞬に殺された

 

死のダイビング

燃えながら 転がりながら 炎に追われ

やっとたどり着いた隅田川

護岸に 泣きふるえる影を残して

血の混じった絶叫が落下する

 

 

201837()、死との記憶、詩と絵、村 岡 信 明

1945310日、午前0時~2時頃まで、アメリカ軍の空襲で10万人以上が焼き殺された。