東京大空襲を語りつぐ。07、
すがるのは祈りだけか、
すがるのは祈りだけか
見上げると雲の切れ間に
B29の巨大な胴体がのぞく
キラキラと光り 空に散る ナパーム弾
頭上に降りそそぐ 数万発の油脂焼夷弾
死の戦きのなか すがるのは祈りだけか
燃えながら出てきた男
炎の中から 抜け出てきた男
火をかぶり 火に叩かれながら
顔が燃え 足が燃え 身体が燃え
狂いながら死を舞う
生れる前に殺された
B29より投下された数万発の黄燐焼夷弾
炎の中を逃げまどう人々に降りそそぎ
一発が背後から妊婦をぶち抜いた
母親と胎児が一瞬に殺された
死のダイビング
燃えながら 転がりながら 炎に追われ
やっとたどり着いた隅田川
護岸に 泣きふるえる影を残して
血の混じった絶叫が落下する
2018年3月7日(水)、死と生の記憶、詩と絵、村 岡 信 明
❜1945年3月10日、午前0時~2時頃まで、アメリカ軍の空襲で10万人以上が焼き殺された。