円空破れ笠、185、平成大修復工事、2、
五社堂 竣工式典
~~~~ 男鹿半島 山岳信仰の歴史を見つめていた。~~~
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五社堂の平場に置かれていた100席以上の椅子は参列者で埋められていた。みな男鹿市の有力者たち、秋田県庁の関係者も来ていた。後方には男鹿の人達と遠方から来た人達が参列していた。
式典は神道儀軌(ぎき)によって進行していった。本殿の中にいる宮司と神職が唱える祝詞(のりと)の声が参列者のなかを縫って新緑に吸われていった。
つぎに巫女たちが踊る巫女舞がつづいた。いくつかの儀式のあと参列者の玉虫奉納が読み上げられていった。
私は円空研究者として招待されたが、今日の歴史的な式典の席にいることの偶然というか運命的なつながりをかえりみて、約三百五十年前、円空がこの平場で彫っていた十一面観音立像が呼んでくれたのでは、とあらためて目に見えない円空との織りなす綾の不思議さを追っていた。
さらにたどれれば、円空が永禅院に登拝したのは、太古より土着信仰として多くの海人が祈りを捧げてきた男鹿半島 山岳信仰に辿りつく。竣工式は初夏の快晴に恵まれて無事に終わった
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隣席に秋田県教育庁 文化財室長 鈴木女史がいて、秋田県の重要文化財の維持保存についていろいろ話してくれた。五社堂に祀られている円空十一面観音立像も県重要文化財であることから、話は円空彫像に変わった。私は五社堂と円空十一面観音立像について話をした。
「文化財室内に円空の詳しい者がいないので、これからよろしく頼みます」
鈴木室長は美術にかなり関心を持っていて、私が描いている作品とロシア美術について話し合った。
「横手近代美術館の館長も良く知っているので、先生を紹介したい」
など好意的な話がつづいた。
今日の五社堂竣工式でも新しい出会いがあった。みんな男鹿半島の歴史とつながっている人々である。みな円空十一面観音立像による出会いである。
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三年かけておこなわれた五社堂平成大修復工事はすべておわり、また新しい五社堂の歴史が始まる。次は五社堂八百記念祭へ、男鹿の歴史はとどまることなく滔々と流れゆく。
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