さらば サマルカンド砂漠 | 美術家 村岡信明 

美術家 村岡信明 

漂漂として 漠として  遠い異国で過ごす 孤独な時の流れ
これを 私は旅漂と呼んでいる

シルクロードの漂 4           

    シルクロードの旅漂(りょひょう)

~~~~ さらば サマルカンド 砂 漠 ~~~~

                

子供の頃に知ったシルクロード、何時(いつ)か訪ねてみようと思い続けていた。

人生の始まりは戦争・空襲・貧乏などで懸命に生きてきた。苦しい時に世界地図を見て頑張った夜もあった。

 

シルクロードの旅、最初は奈良を訪ねるのが精いっぱいだった。それから、長い人生のなかで日本と現地を時計の振り子のように断続的な旅を続けて、約30年かけて全行程を終えることができた。

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ヨーロッパ・ルートのテルミナ(始発駅)イタリアのローマとベネチアから東欧、ロシア、ウクライナを通り多くの国々を訪ねて行った。

中国では揚子江(長江)を(いかだ)で渡ったこともあった。それは夜だった。海のように広い揚子江から眺めた星空はいまも鮮明に覚えている。

全行程といっても要衝であり、飛行機の窓から見たり、列車と自動車を乗り継いでの旅が多かった。でもここと思った要衝、シルクロードの町や歴史的建築は自分の足で訪ね歩いた。そして終着の奈良まで帰って来た。

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遠い異国の町や村で時には砂漠のなかで出会った人達がいた。これは奇跡に近い偶然の出会いであった。その中の何人かはいまも文通している。

国も民族も歴史も文化も宗教も食文化も思想も言葉も違うシルクロードの旅、それは数千年の歴史が刻まれた道のりであった。いま振り返って、よくぞやり抜いて来た。と改めて思っている。

シルクロード最後の夜、サマルカンド砂漠に沈む落日を眺めていた。

2017330日(木)  撮影・村 岡 信 明