小出楢重さんの作品を紹介します。

小出さんは薬屋の長男として生まれました。
彼は家業を継承するものと思われていたのですが、少年時代からずば抜けた画才の片鱗をみせ、本人も洋画家となることを望んだために、1907年東京美術学校に入学する。


当時、西洋画科の上級にはフォーヴィスム風の作品を発表していた萬鐡五郎がいました。
また文芸雑誌『白樺』によってゴッホやセザンヌが積極的に紹介されていたが、彼はそれらを気にすることなく自分の目指すものとして、古典的、写実的な制作を行なっていたそうです。

小出は自著『油絵新技法』のなかで、静物画は「あまり人間の自由になり過ぎる為に反つて災を招」くとし、「嫌味なわざとらしい構図が出来上るものであるから注意せねばならない」と述べていますが、実際にはごくありふれた物をかなり意図的に並べた作品が少なくないです。

この作品も中央にあるガラス器のまわりに玉葱、南瓜、茄子などを雑然と配したような構図をしていて、それらひとつひとつの色彩、たとえば赤や黄色や紫が、強烈なハイライトを使っていてより存在感の激しい作品作りをしています。

しかし、物の形態と色彩が複雑に絡まりあって、いきいきとしたリズムに富んだ動的な調和が保たれています。

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この作品の中に描かれるものはほとんどが私たちの手に触れたことのあるもので構成されていて、その触り心地さえも感じさせてくれるようなそんな質感表現にもとんだ作品作りをしています。

描画力もそうですが、構成のまとまりにも実はしっかりと決められていて自然体じゃないというところからもこの配置になにか理由があっての作り方なんだと思うと面白いなと思いました。