ああ、こわいこわい。
またあの真っ黒で大きなやつが来る。
こんなことではおちおちご飯も食べら
れない。そいつらは我が物面をぶら下
げてわたしたちを蹴散らしながら下品
に鳴く。臆病なわたしたちはやつらが
近づいてきただけで逃げ出してしまう。
何故小さなからだに生まれてしまった
のか。やつらより大きなからだで翼を
羽ばたかせることが出来たなら、ちゅ
んちゅんとひ弱な声ではなく、もっと
鋭くやつらが脅えて逃げ出してしまう
ような声が出せたなら。どんなに救わ
れるだろうか。きっとゆっくりご飯が
食べられる。念入りに羽の手入れだっ
て出来る。なんて幸せなんだろう。そ
んな平和は他にない。わたしたちの小
さな世界。やつらは今日も黒い羽ばた
きを繰り返す。
ああ、こわいこわい。
夢みるわたしたちは逃げるだけ。