Re;startⅡ 宅配ドライバーとその妻 blog NO:010

運び屋~超高齢ドライバーの苦悩と人生

今回は以前観た映画のレヴューになります。ブログ内容と関連付けしていますので、ネタバレが含まれます。未観の方はお気をつけください。
映画「運び屋」原題:THE MULE
劇場公開日:2019年3月8日
鑑賞媒体:NETFLIX
2018年製作
上映時間:116分
制作:アメリカ
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督 クリント・イーストウッド
出演 クリント・イーストウッド, ブラッドリー・クーパー, ローレンス・フィッシュバーン
この作品を観たのは、昨年の5月。まだ現在の宅配ドライバー職に就く前です。
よって、当時は純粋に作品として観ていたのですが、今観直してみると、いろいろ考えさせられる内容だったんだなあと思いました。
1:クリント・イーストウッドとは
本作の監督、主演はクリント・イーストウッド。生誕が1930年5月と言うから、御年93歳。本作公開時でも89歳です。
イーストウッドと言えば、私の記憶では「ダーティーハリー」シリーズです。1970代から80年代にシリーズ化された映画で、当時馬鹿でかい拳銃の44マグナムを躊躇なく発砲する型外れアウトロー刑事を演じていました。今の時代では然程珍しくない設定ではありますが、当時はかなり衝撃的でした。
他にもマカロニウエスタンや戦争物等、多岐に渡った作品に出演。晩年は「ハドソン川の奇蹟」を監督しています。
特に本作を含む「マディソン郡の橋」等、自らの人生を振り返るような感傷的な映画が最近は多く感じました。
本作のタイトルは和で「運び屋」ですが、原題は「THE MULE」MULEは「頑固者」や「片意地者」と言った意味です。和題の「運び屋」は主人公の”仕事”を焦点にしたタイトルとなっています。実際は人間ドラマで、主人公の性格や人生、そして年老いた自分に対しての贖罪と人生の転換期を赤裸々に表したタイトルとなっています。

2:作品の概要
物語はイーストウッド演じるアール・ストーンと言う人物が花の農園を持ち、それを配達すると言う事業を展開していましたが、徐々にインターネットによる宅配事業が参入して来た事により、廃業してしまうところから始まります。
このアール・ストーンは、仕事オンリーの人物で、娘の結婚式すら忘れてしまう程、家族からは敬遠されていました。
廃業して行く当てのないアールは、孫娘の結婚前の場に姿を現します。孫娘は喜びますが、嫁はその場で散々不平不満をぶちまけ、場を悪くしてしまいます。
その場に居た孫娘たちの友人の一人に、実はこの後、アールの人生を大きく変える人物が居ました。
先の騒動の後、その男が「車を走らせるだけで報酬が貰える」仕事を紹介します。最初は懸念するアールでしたが、背に腹は代えられないと、その話に乗ります。
実はその仕事と言うのが、メキシコの麻薬カルテルの”運び屋”だったのです。
怪しげな車庫に自前のピックアップ車を入れると、銃を携行した怪しげなバイヤーに囲まれて、仕事の説明を聞きます。
それは、唯荷台に載せたバッグを”ある場所”まで届け、車のキーをダッシュボードに入れて一定時間車を離れろと。時間通りに車に戻って来たら、ダッシュボードにキーと報酬金が入っていると言う流れです。明らかに違法行為です。しかしアールはこの時、齢90にもなっていたためか、もうやけっぱちなのか、家族に認めて貰うための金を溜めるためには、その仕事に乗るしかありませんでした。
ちなみに、こんなヤバい仕事を超高齢者ドライバーのアールに選んだ理由は唯ひとつ。実はアールは長年ドライバーとして車を走らせて来ましたが、一回の違反も事故も起こした事のない、超優良ドライバーだったからです。つまり、運ばせるドライバーが事故や違反をしてしまうと、忽ち警察の関与が入り、一網打尽になってしまうからです。
昨今、日本では高齢ドライバーの事故が社会問題となっていますが、この映画では年齢ではなく、ドライバーの質としてとらえています。
アールはこの運び屋の仕事を「今回だけだ」と自らに言い聞かせながらも、毎回入って来る報酬に負けてこの”運び屋”の仕事を続けてしまいます。しかし、徐々に犯罪に加担していると言う過ちに苦しむようになります。葛藤する表現は、晩年のイーストウッドの真骨頂と言える演技です。つい引き込まれてしまいました。
映画の結論は、実際に観て頂いた方が良いと思います。アールが苦しみながらも、人生で手にするのは、一体何なのか?
キーワードは”花”です。
そしてラスト近くの夫婦の会話
嫁「昨日より今日はもっと・・・」
夫「でも、明日よりはまだいい」
そこには”家族”と言うかけがえのないフレーズが・・・・

3:印象的なドライバー作品
ドライバーを主体とした作品は他にも数々あります。
私が印象に残っているのは、下記の二つの作品です。
・タクシードライバー(劇場公開日:1976年9月18日)
主演:ロバート・デ・ニーロ、監督:マーティン・スコセッシ
・ドライブ・マイ・カー(劇場公開日:2021年8月20日)
主演:西島秀俊、三浦透子、監督:濱口竜介
これらの作品のレビューは割愛しますが、いずれも本作と同様に、ドライバーの人間味に焦点を当てているドラマです。
派手なカーアクション等がある訳ではなく、あくまでもヒューマンドラマとなっています。
以前は胸のすくような派手なカーチェイス等がスカッとした見応えがあって好んで観ていたのですが、私も齢を重ね、人生に新しい風を吹き込むために、ドライバーとしての人生を歩み始めました。今の私には、また違う見方で作品に没入しています。
ちなみに、私は当然、違法な仕事には就いていませんがね(笑)
4:まとめ
この作品でイーストウッド演じる主人公のアールですが、驚く事に実話を元にしています。
▼運び屋 ウィキペディ記事を引用
2014年、『ニューヨーク・タイムズ』にサム・ドルニックの記事「The Sinaloa Cartel's 90-Year-Old Drug Mule」が掲載された。この記事が伝えるところによると、園芸家のレオ・シャープは長期にわたってシナロア・カルテルの麻薬の運び屋を秘密裏に務めていた[18]。インペラティブ・エンターテイメントは、この記事の権利を買い取り、映画化に着手した。当初はルーベン・フライシャーが監督する予定であったが、最終的にはクリント・イーストウッドが監督することになった。
この題材を作品化したイーストウッドの心境は何だったのでしょうか?
様々本作の感想や検証がありますが、私は単純に、昔から言われている「仕事と家族の在り方」に悩む、あるいは惰性的に生きて来ている人々の内在する葛藤を具現化してみたいと思ったのではないかと思われます。
私は映画評論家でもないので、あくまでも個人的感想ではありますが、どんな仕事にもリスクは付き物、それでも頑張るのは、「仕事に集中する事で自分の生き甲斐を見出す」のか、「家族を守るための手段」なのか、本来はその両方が両立して初めて人は生きていけるのではないかと思います。
いずれにしましても、この作品の主人公は新しい人生「Re;start」を誤った方向に舵を切ってしまいました。しかし、その顛末は決して救いの無いものではなかったと信じたいと思います。何故なら、彼はちゃんと自分の本来の姿を取り戻したからです。
私も60歳を超えて新たな人生を歩み始めました。車を運転すると言う責任を伴う事を十二分に自覚し、無事故無違反で頑張って行きたいと思います。※犯罪には加担しませんが・・・(笑)
未観の方は、2023年7月現在、NetFlixにて配信されていますので、ご覧になられる事をお勧めします。
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