共同通信社

携帯電話料金の値下げ狂騒曲が、世間を賑わしています。以前より「日本の携帯電話使用料は高い」と言われ続けてはいたものの、今回の騒ぎは8月末に菅官房長官が発した「携帯電話料金は4割値下げの余地がある」の一言から始まったものでした。

過去にもあった携帯電話に関する政治的値下げ要請。記憶にあるところでは、3年前の15年秋に「安倍首相の指示」によって総務省で「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」による審議がスタート。議論の過程において「実質0円販売の禁止」を打ち出すなど、実態反映はともかく一定の成果を残す形にはなっています。

3年前の秋と今年の夏の終わり、共通項は何か。翌年に参議院選挙を控え、年明け新年度入りに向けて何か広く国民に訴えかける材料が欲しい、与党自民党総裁として安倍首相が強く思う時期であるという共通項なのです。

特に今回は来年秋の消費増税を控えてもいるだけに、広く国民の生活コストを下げる印象に訴えるものとしてほとんどの国民が一人一台以上の割合で持っている携帯電話の値下げほど便利なものはない、というのが菅発言の裏にある狙いであることはほぼ間違いないと思われます。

政府の都合のいいことに、携帯業界のリーダー企業であるNTTドコモの親会社NTTは元々は電電公社という国の特殊法人であり、現在でも30%超の株式を財務大臣が保有する国の息がかかった組織であるわけなのです。また、NTTドコモはNTTが60%以上の株式を保有し親会社同様の企業であり、政府の思惑は国にとって防衛上の観点からも大変重要な通信網をしっかりと管理するという意味合いもあるわけなのです。