まず最初に。本日は最優秀監督賞の発表があり、アメリカン・リーグはロサンゼルス・エンゼルスのマイク・ソーシア監督、ナショナル・リーグはコロラド・ロッキーズのジム・トレーシー監督がそれぞれ選出されました。特にトレーシーの場合は前任のクリント・ハードルが成績不振を理由に解任された地点で借金10だったチームを立て直し、チームをワイルドカードでプレーオフに進出させた手腕について評価されたものです。その結果、チームと3年契約を結ぶこととなりました。ちなみに、現ニューヨーク・ヤンキース監督のジョー・ジラルディは2006年、フロリダ・マーリンズの監督時代に受賞しています。しかし、オーナーとの対立が原因でこの年限りで首が飛びました。
話を本題に戻します。昨日、ザック・グリンキーのサイ・ヤング賞受賞に際して、彼が過去に「社会不安障害」を患い、この病気を克服した事実がようやく日本国内で知られることとなりました。「うつ病」に代表される精神を患う病に関してですが、日本でもようやく「誰でもかかりうる病気である」という事実が知られるようにはなりましたが、まだまだ偏見が多いことも事実。それに対してアメリカでは風邪と同じような扱いであります。ちょっと精神面に不調を感じたら、気軽に病院にいき、精神科医、心療科医、セラピスト・・・の診察を受け、抗うつ剤を飲む。アメリカでは国民の8パーセント、単純計算で約2000万人がうつ病を患っている、といわれる事実から、アメリカは精神を病む人間にとっては住みやすい国であるといわれています。しかし、心身ともに健康であることを要求されるプロのスポーツ選手にとっては果たしてどうなのでしょうか?_
実際のところ、軍隊・警察・消防署と同じような扱いを受けているプロスポーツ選手にとって、精神的な問題は「弱さ」「性格的欠陥」と捉えられることが多いようです。過去にメジャーリーグで最も有名な精神病患者としてボストン・レッドソックスのジム・ピアソールがいました。彼が活躍していた1950年代から60年代にかけては精神病患者は秘密にされた時代でしたが、彼はそんな時代において自分が躁うつ病患者であることを公表し、今でもスポーツ界では伝説となっています。しかし、彼に続くものはなかなか現れず、たまに出てくる話題といえば、ドニー・ムーアのような悲劇として現れることがほとんどでした。
そんな中、徐々にではありますが、DL(Disable List=故障者リスト)に載る理由に、精神的な病を理由としたものが増えてきました。グリンキーは2006年に社会不安障害で60日間DL入りしましたが、今年に入ってからトップクラスのプレーヤーで精神的な病を理由にDL入りした選手を簡単にあげますと、
①ドントレル・ウィリス(デトロイト・タイガース)
2003年のナショナル・リーグ新人王。デトロイト・タイガース移籍後不振が続き、今年のシーズン前に不安障害でDL入り。5~6月に7試合先発したものの、その後同じ病気で戦線離脱。その後のシーズン全休。
②ジャスティン・デュークシャー(オークランド・アスレチックス)
オークランド・アスレチックスのエース。もともとは中継ぎ投手だったが、先発に転向後、ローテーション投手の層の薄さもあり、エースに。去年は臀部、今年は開幕前にひじを手術。さらにうつ病を発症し、シーズン全休。
③ジョーイ・ボット(シンシナティ・レッズ)
シンシナティ・レッズの若き主砲。WBCで絶好調だった勢いそのままにシーズン突入し、高打率を維持し続けたが、5月下旬より3週間、耳の病気とともに昨年父親を亡くしたことからくるうつ病で戦線離脱。しかし、復帰後は何事もなかったように打ちまくり、シーズン全体としては好成績をマーク。
④ハリル・グリーン(セントルイス・カージナルス)
かつてはサンディエゴ・パドレスの正遊撃手。過去の度重なる故障と成績低迷が原因でオフにカージナルスにトレード。攻撃力アップを期待されたがシーズン序盤から大不振。5月にはスタメンから外れることも多くなり、社会不安障害と診断され、2度に渡ってDL入り。8月に復帰するものの、控えに甘んじる。
アメリカの全人口の8%がうつ病を患っている、という事実を考えると、この4件はおそらく氷山の一角だろうと考えられます。くどいようですが、うつ病の基本的な治療は「投薬治療」と「休養」です。現代社会はストレス社会、と言われてうつ病患者も上昇の一途をたどっています。もちろん、プロスポーツ界も例外ではありません。おそらく来年以降も精神疾患を理由にDL入りするケースは増えるでしょう。そんな選手に私達が取るべき態度はひとつ。「偏見を持たないこと」。今回のグリンキーのサイ・ヤング賞受賞は、精神を病んだ人間にとって希望となる一件であります。

