それから、何度も何度もハルキから連絡がきた。
-----------------------------------------------------
俺はまちがってた。手放してはいけない人を手放してしまった。
どうしても、あきらめられない。
俺のそばにいてほしい。
俺にはもう、アリサしかいないんだ。
-----------------------------------------------------
そんなメールが、繰り返し届いた。
私は、連絡をするのを躊躇していた。
また、同じことを繰り返すだけ。
傷つけあうくらいなら、ここできっぱりとしたほうがいい。
そう思いながらも、やっぱり、ハルキの声が聞きたくて、
胸が苦しかった。
腸炎で苦しみ、今はとても動けないことをハルキに伝えた。
ハルキからは、
------------------------------------------------------
連絡をくれてありがとう。
そんなに具合が悪いのに無理言ってごめん。
回復を心から祈ってるよ。
ずっと、帰ってくるのを待ってる。
------------------------------------------------------
そんなメールが返ってきた。
私の病状は次第に悪くなり、大きな病院に通うようになった。
母も脳梗塞をやっているため、私のことであまり負担をかけたくない。
そんなとき、ダンナから久しぶりに連絡があった。
私は、思わず病気のことを伝えた。
すると、通院に車で送り迎えしてくれる、という。
駅の階段を登るのすらつらかった私は、この言葉に心を動かされた。
母にもこれ以上迷惑をかけたくなかった。
何回か、送り迎えをしてもらい、
数日後、久しぶりにダンナと住んでいた家に戻った。
そこは、私が出て行ったときとほとんど変わっていなかった。
具合が悪かった私は、とにかく、寝てばかりいた。
もう、戻ることはないと思っていた家。
ハルキのことを考えながらも、慣れた空間に少しだけほっとしていた。
ずっとずっと、不便だった。
身の回りに自分のものがあるだけで、かなり気持ちが楽だった。
ハルキと一緒にいたときは言えなかったけど、
限られた服や荷物でなんとか暮らしていた生活は、
やっぱり、旅をしているみたいだった。
ダンナは何かたずねるわけでもなく、普通に接してくる。
毎日がさらさらと流れていった。
私は、ダンナと住む家に戻ったことをハルキに伝えるか悩んだ。
そして、友人に相談した。
すると、友人は、
「絶対に秘密にしておいたほうがいいよ。すごく傷つくと思うから。
今は実家にいることにしたほうがいい」
嘘をつくことはとてもつらかったけど、
友人の言葉には説得力があった。
ハルキには、実家にいることにしてやりとりをしていた。
それでも、かなり無理があって、とてもとてもつらかった。
ハルキだって、薄々は感づいていたんだと思う。
この頃の私の言動は、とても不自然だったと思うから。
そして、回復してきた私は、ダンナと住んでいながらも、
心の中はやはりハルキのことで一杯だった。
ダンナのこと。
普通に友人としてならなんの抵抗もない。
いい人だとも思う。
だけど、男の人として、見れなくなっていた。
キスすら、したいと思わない。
こんな状態がいいはずない。
苦しくて、苦しくて、いっそ消えてしまいたいくらいだった。