「気にいらねぇから無理!」 「面白そうだからまぁいっか!」


「まぁこんなもんだろう」 「俺なら出来る、大丈夫!」




俺の判断基準は  いつもこんなもんだった



「わがままで、金にも男にもルーズで、挨拶もろくに出来ないけど」


「まぁカワイイし、セックスも合うし、結婚したいって言ってるし」



結婚を決める時ですら  こんな感じだった






「生きるのか?  死ぬのか?」  


この選択まで   追い詰められたとき   


それが自分の才能と運を過信した





単なる直感だったと  気がついた   





いろいろな分岐点に立って   いろいろな選択をしてきた


初めからボタンを掛け違えてはいなかった


けれど   かなり前の方で掛け違えてた   






生きたいのか? 死にたいのか?


善なのか? 悪なのか?


やるのか? やらねぇのか?


勝ちたいのか? 負けでいいのか?





この世に生まれてから  成長する度に  


無意識に  こんな問いかけを  


なんとなくで選択して





なんとなくだから  壁に当ったときや 向かい風のときは  


傷つかないように  言い訳ですぐに逃げて




「今回は運が悪かった」  「アイツがいたから」


「本気を出せば」 「金持ちに生まれれば」


「自分には合ってなかった」




とか言って  自分を慰めて


逃げたことにすら  気がついていなかった






義務教育  学生  頭の中は


あの頃のままだった





ちょっとした実力と  運だけでいけてた


強い奴の世界  顔が良い奴の世界 


志の必要ない  生まれ持った能力程度で


充分事足りる世界






俺は 


そのまま社会人になった


そのまま夫になった


そのままパパになった


そのままバツイチになった





未来なんて   ただでさえ   予測出来ない


だからって   何も考えず   成り行き任せじゃ




地獄行き





「自分が何をしたいか?」  じゃなくて  「誰に何ができるか?」


「自分がどう思うか」  じゃなくて  「他人にどう思われたいか」





初めから意味の無い人間なんていない   



自分の事しか考えないから



他人には意味が無く見える



少しずつ志を… 







みんながいるのに   何故か一人ぼっちで


胸の苦しさを  ごまかす為に働いて


なんの為に  生きるのか  考え始めた頃





一人で  カーナビの無い車で  道に迷った


地図を広げて  まず探したのは





「自分が何所にいるのか?」


そして   次に探したのは


「目的地はどこか?」





地図を見る時に  当たり前の様にしてること


俺は  人生において  この2点を見つけていなかった






気がついて  探し始めて  思った


無意識に  探すのを  拒絶してたんだろうなって





だって 





レースの途中  まぁまぁのとこを走ってたはずの自分が


転んで  大怪我したようなものじゃない?





レースは続いてるし  みんなに抜かされるし  差は開いてくし


怪我を治さなきゃいけないし  治ってなくても走らなきゃいけないし






そんな時  今の順位なんか知りたくないでしょ?


抜かされんのが嫌で  現実を知るのが嫌で   






けれど  無理にでも  改めて自分を省みなければ



闇雲に走ることになるし  また転ぶことになる





転んだ理由が解るまで  転ばない自信が持てるまで



逆走してみるのも  良いかも知れない





一緒に走ってた奴らは  意外と笑顔で待っててくれる






 






    



人生で最低のどん底   そこからやっと上がり始めた頃



猪突猛進なバカには  思いもしない落とし穴がある





また底に行くのが怖くて  ブレーキをかけられない






本気の相手だったら  抱いても良い  そんな結論を出した  そこまでは良かった



普通の頃が思い出せなくて  本気なんて気持ち  わからないクセに  強がって



あの時の口癖は  「幸せになれるまで、何回でも結婚してやる」だった  






「昔の彼女が会いたがってるよ」  友達からそう言われた  



「会わない理由はねーなー」  そう答えた







会った瞬間  昔の二人の戻ってた  会ったその夜に  二人の世界へ



昔のままで変わらない彼女  一つ変わったことは  






彼女には 夫と子供がいるってこと…  







本気だからしょうがないって  何度も  何度も  自分に言い訳してた



何度か会って  しばらくして彼女がいった  





「赤ちゃんが出来たの」






自分の本気が  ウソだったと  わからされる瞬間だった  



彼女の家庭を壊す気も  彼女を幸せにする気も





どちらも もってなかった  





彼女だけを傷つけることになり  





俺は最低の人間になった







当たり前だけど  今でも後悔してる  出来ることなら


あの頃の自分に会って  止めたい




けれど もしそれが出来たとしても


「本気なんだから良いんだよ」と  今の自分すら  押し切られるだろう




それくらい ブレーキが怖かったから