“愛里跨(ありか)の恋愛スイッチ小説(未來ちゃん編24)” | 愛里跨の恋愛スイッチ小説ブログ

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24、立ち向かう心

 

 

日菜乃「そう。
   あっ。秋真が持っているものと言えばもう一つ。
   今日お持ち帰りしようとしたんだけど、逃げられちゃった」
智輝 「えっ……」
秋真 「さっきから何訳わからねえことばかり言ってんだ。
   もう酔ってるのか」
日菜乃「酔ってなんかいないわよ。
   だから、貴方が可愛がってる白くて大きなシャム猫ちゃんよ。
   秋真の目を盗んでマンションから逃げ出したみたい。
   今日、劇場の化粧室で偶然見かけたから、
   首根っこ掴んで東京に連れて帰るつもりだったの」
秋真 「……」
智輝 「日菜乃、まさか」
りおな「(もしかして。シャム猫ちゃんって、秋真さんの……)」
秋真 「おまえ……あの子に何をした」
日菜乃「別に何も。
   さっきから逃げられたって言ってるでしょ。
   でも、今度は絶対に逃がさないわよ」

 

 

秋真さんと日菜乃さんは睨み合い、侃々諤々の論争を巻き起こしていた。
成り行きを知らないりおなさんでも事の深刻さを感じ取っている。
秋真さんは立ち上がり、怒りに任せて日菜乃さんの腕を掴んだ。
その目はあからさまに憎悪と猜疑が混じっていた。
しかしそれ以上に、日菜乃さんは目尻を釣り上げて怒りを露わにし、
遠慮のない口からは容赦なく冷たい言葉が吐き出される。
その言葉は秋真さんにではなく、
私に対して、そしてその場にいたりおなさんに対しても。
同席していた者は勿論のこと、いつの間にか騒ぎに気がついた者も徐々に増え、
日菜乃さんのある罵声で会場全体がざわつき始める。

 

 

日菜乃「まったく!
   自分の立場を分からない女は、すぐ身分不相応なものを欲しがる。
   こちらが少し優しくすると、
   認められたと勘違いして舞い上がっちゃって。
   何の才能もオーラも持ち合わせないくせに、
   立場をわきまえろていうのよ」
智輝 「日菜乃、もうやめとけ。
   ここには俺たちだけじゃなく、
   次回作の関係者や報道関係者も紛れてるんだぞ」
日菜乃「それなら尚結構なことだわ。
   世間に真実を知ってもらいましょうよ。
   ここにも一人澄ました顔してワインを飲んでる女が一人居るけど」
りおな「……」
日菜乃「秋真の周りに纏わりつくシャム猫、寄生虫の正体をね」
智輝 「日菜乃!」
秋真 「お前、黙って聞いてりゃ好き勝手な事言いやがって!」
日菜乃「何よ!私を殴る気!?」
りおな「寄生虫、ですって……」   

 


日菜乃さんから発せられた「寄生虫」という言葉で、
りおなさんをハッとさせられる。
それが苦く悲しい想いを呼び起こした。
今から三年前、都内にある大きな屋敷のリビングでの出来事だった。
彼女は当時付き合っていた涼さんに連れられて彼の自宅へ行き、
初めて彼の母親に挨拶し話した。
しかしその人は、りおなさんをまるで虫けらでも見るような目つきで、
どんどん辛辣な対応になっていったのだ。

 

 


〈りおなの回想シーン〉

 

涼の母「貴女が息子と婚約ね……」
りおな「はい」
涼  「そうだよ。僕のパートナーは、りおなしか考えられないからな。
   だから母さんに紹介するために今日は連れてきたんだよ」
涼の母「息子からは、女優さんとお聞きしているけど」
りおな「はい」
涼の母「映画?それともドラマ?
   息子の婚約者になるくらいなんだから、
   勿論主役級の女優さんよね?」
涼  「母さん」
りおな「はぁ……実は、
   私はまだまだ勉強中ですから主役は経験がないんです。
   デビュー作はドラマで、主人公の同級生の役でした。
   その後の作品ではコンビニのアルバイト店員の役に貰い、
   舞台では露天商の町娘の役に抜擢されました。
   あとは、地元の老舗菓子店のCMを一本頂きまして」
涼の母「露天商って……すべて脇役じゃないの」
涼  「母さん。
   今はね、脇役の俳優さん女優さんをバイプレイヤーって言って、
   主役を引き立たせる演技力の高い人たちがたくさんいるんだよ。
   彼女もその一人で、僕は何度もりおなの芝居を観たけど、
   心にぐっとくる吸い寄せられるような演技をするんだ。
   分厚い台本だってすぐに暗記しちゃうしね」
りおな「涼さん」
涼の母「涼。貴方、血迷ったの?
   バイプレイヤーだか何だか知らないけど、
   親族になんて説明すればいいの」
涼  「はぁ!?何を急に言い出すんだよ」
涼の母「私どもがお付き合いする方々は、貴族や大企業のオーナーや社長。
   皆、上流階級の方ばかりなのよ。
   貴女のお生まれは?ご両親は何をされてるの?」
涼  「母さん!」
りおな「出身は茨城です。
   父はサラリーマンですし、母もパート勤めをしています」
涼の母「そう。ご両親の年収は?」
涼  「失礼だぞ!りおな、答えなくていいからな」
涼の母「手なんて握って、情けない姿ねー。
   お父様が見たら嘆かれますよ。
   りおなさん、この際だからはっきり言わせて貰いますけど、
   涼は小さい時からとても優しい子だから、
   哀れみで貴女と接しているだけなの。
   売れない三流女優でありながら身分不相応なものを欲しがって、
   お恥ずかしくないのかしら。
   どうせうちの財産目当てなんでしょ?」
涼  「母さん!いい加減にしろよ!
   そんな言い方ひどすぎるだろ!
   りおなと付き合うのは僕の意志なんだから」
涼の母「いいえ。こういう人達はこちらが少し優しく接すると、
   認められたと勘違いしてつけ上がるものなの。
   私たちの華やかで綺羅びやかな世界に近寄ってきて、
   鱗翅目(りんしもく)や寄生虫のように幾らでも群がってくるのよ」
りおな「寄生虫……」
涼  「りおなは僕の彼女で婚約者なんだ。
   いくら母さんでもそんな言い方許さないからな!」
涼の母「涼、しっかりしなさい!
   貴方は四乃松家の跡取りで、
   これから四乃松コーポレーションを背負って立つ人間なのよ。
   貴方はこの女の毒牙に犯されて情に絆されてるだけなの」
りおな「あの、お母様。私は涼さんとそんなつもりで」
涼の母「私は貴女のお母様ではありません。
   息子との交際は認めませんし、今日のことは主人に報告しておきますから。
   お話はこれで終わりです。お引き取りを」
涼  「母さん!」

 


冷酷な母親に反論し立ち上がった涼さんの腕を、
りおなさんは優しく触れて引き止めた。
彼は悲痛な表情を浮かべて済まなそうに彼女を見つめる。

 

りおな「涼さん……もういいの」
涼  「いいわけ無いだろ。
   僕は親や親戚からどんなに反対されようが、
   世間から何を言われようと、りおなと一緒にいるって決めたんだ。
   僕たち結婚するって約束しただろ?」
りおな「うん。でも。その言葉だけで十分」
涼  「何を言ってる」 
りおな「お母様の言うとおりよ。
   正直、貴方と結婚してセレブリティーな生活をする自信がないわ。
   そういえばよく母が言ってたな。
   『不釣り合いは不縁のもと』だって」
涼  「りおな?」
りおな「私ね、涼といつもお食事する高級フレンチ“豪”のメニューより、
   “風来坊”の焼豚たっぷりもやしとんこつラーメンが好きなの。
   オペラよりアニソンが好きだし、社交ダンスより盆踊りが好きなの」
涼  「……」
りおな「夏にね、実家に帰って玄関を開けると、蚊取り線香の香りがしてね。
   生ぬるい扇風機の風と風鈴の澄み渡る音色に癒やされるんだ。
   お母さんの作るそばがきすいとんに、
   れんこんのおろし揚げでいくらでもご飯が食べれるのよ。
   素朴で質素な日常の生活でたくさんの幸せを感じるの。
   私はまだ主役級の女優じゃないし、
   たくさんやらないといけないことがある。
   もっと勉強して演技を磨いて、
   憧れの卯木秋真さんと共演できるくらいの大女優になる夢があるの。
   だから……涼。私たち、これで終わりにしましょう」
涼  「何!?僕は嫌だ……こんな終わり方嫌だよ」
りおな「どんなに求めあってても、
   互いの骨が軋むほど抱き合って愛し合ってても、
   終わるときなんてこんなものなのよ」
涼  「りおな」
りおな「涼、今まで愛してくれてありがとう。
   じゃあ私、これで失礼するわね」
涼  「りおな!僕は、必ず君を迎えに行くから」
りおな「……」
涼  「周りが何も言えなくなるような立派な男になって、
   絶対に君を迎えに行くからな」
りおな「……さようなら」
涼  「りおな!絶対だからな!」


強く握りしめられた手を振りほどき、
メイドさんに案内されながら玄関へと向かった。
涼さんは悲しみに溢れる目で立ち去る彼女の背中を見つめていた。
そしてりおなさんは何度も名前を呼ぶ涼さんの力強い声と愛を、
悲しみの涙と一緒に飲み込んでいたのだった。

 

 

真実の追及

 


りおなさんはゆっくり立ち上がり、
秋真さんと智輝さん二人と言い合う日菜乃さんの許へ近づく。
そして彼女の肩をトントンと軽く叩いた。
その姿は猛獣と立ち向かう闘牛師にも似た勇ましさを感じる。

 

 

りおな「日菜乃さん」
日菜乃「何よ」
りおな「寄生虫ですって?」
日菜乃「はい!?」
りおな「今、秋真さんの大切な人に向かって、寄生虫って言ったわよね」
智輝 「りおなちゃん?」
秋真 「……」
日菜乃「そうよ。言ったわよ。
   でも貴女に関係ないことでしょ。
   それとも何?私の代役でほんの数日共演したからって、
   秋真を庇えるような関係になったってことかしら」
りおな「どう取ってもらっても結構よ」


彼女たちのバトルが始まると会場はしんと静まり、
その場に居る出席者の複数の目は二人に向けられた。
そして中にはスマホで動画を映すものさえいる。
日菜乃さんから今にもビンタを張られそうな勢いで罵りを受けても、
りおなさんは凛として目の前に立ち、しかも脅しにも全く動じなかった。
それどころか憐憫の眼差しを彼女に送り、
同情を浮かべた顔で淡々と言葉を続ける。

 

りおな「貴女は可哀想な人ね。
   学生時代もこうやって誰かを虐めてきたの?」
日菜乃「はぁ?」
りおな「貴女は本当の愛が何なのかを知らず、
   ただ自分の思うがままに相手を支配しようとしてるだけ。
   それはただの自己愛で、心から秋真さんを想っているわけじゃない」
日菜乃「りおな。先輩の私にたて突くなら芸能界にいられなくするわよ!」
りおな「いいえ。丁重にお断りするわ。
   この世界は貴女みたいに一足飛びで成功した人が生き残れる世界じゃない。
   コツコツ歩んで努力して実績を積み上げてきた人が居られる世界なの」
日菜乃「なんですって!?」
りおな「私は昔から人の幸せに踏みにじる人間が大嫌いだし、
   平気で人を傷つける人間がどうしても許せないの。
   あんまり人を、舐めんじゃねえぞ」
日菜乃「このバカ女、大した度胸してるわ。
   でも、私に立ちついたらただではすまないんだからね!」
りおな「秋真さんの彼女を甚振ったように?」
日菜乃「そうよ」
りおな「(やっぱりそうだったんだ。
   貴女が原因で秋真さんは大切な人、未來さんを一度失ったのね)」
智輝 「日菜乃、もう止めろ!」
秋真 「智輝、日菜乃を頼む」
智輝 「ああ」
秋真 「りおなさん。俺と一緒に来て」
りおな「えっ」
日菜乃「秋真!りおな!逃げる気!?」

 

 

秋真さんはりおなさんの右腕を取り、日菜乃さんの傍から引き離すと、
会場の奥の従業員通路へと足早に連れて行った。
エレベーターで最上階へ向かい、分厚い鉄の扉を押し開ける。
誰も居ない薄暗い屋上にりおなさんを連れてきた秋真さんは、
古ぼけた木製のベンチに彼女を座らせた。
街の夜の物音が遠くで微かに聞こえている。

 

 

夜の月

 

 

秋真 「日菜乃がひどいこと言って、ごめんな」
りおな「秋真さんが謝らないで下さい。
   貴方も被害者でしょ?」
秋真 「被害者って」
りおな「あーっ!言ってスッキリした!
   前々から鼻につく人だなって思ってたから。
   あっ。ごめんなさい。秋真さんの元カノなのに」
秋真 「ふっ。謝るなよ。
   俺も、見てて気持ちよかったよ。
   りおなさんって案外男前の性格なんだな」
りおな「えっ。そうですね。
   学生時代は体育会系だったし、男勝りだったかな」
秋真 「そう。どうして俺を庇った?
   これからアイツに目の敵にされるかもしれないのに」
りおな「頑張って生きてる人に向かって、
   『寄生虫』なんて言うの酷くありませんか?
   私、過去……ある人に同じようなこと言われたんですよ」
秋真 「えっ」
りおな「言葉を投げた人間は澄ました顔して平気に暮らしてて、
   大したことじゃないって思ってる。
   でも、投げかけられた人間はいろんなものが、
   たくさんのものが壊れていくんです。
   砂浜に作った砂のお城のようにどんどん崩れてく。
   心、今まであった自信、長年大切に愛してきた人までも……」
秋真 「りおなさん」
りおな「だから許せなくなったんです。
   それに、何だか秋真さんの彼女さんの気持ちが理解できるなって」
秋真 「もしかして。元カレのこと」
りおな「はい。彼のお母様にボロボロに言われましたよ。
   私は毒を持った鱗翅目や寄生虫だって」
秋真 「それはひどいな。
   男は、君の元カレは、そのとき君を守ってくれなかったのか」
りおな「必死で私を庇って抵抗はしてくれてましたよ。
   親と縁を切って会社も捨てて私と一緒になるとまで言ってくれた。
   でも……そんなことしてもうまくいきっこないんです。
   何処まで言っても、彼の母親だもの」
秋真 「そうかもしれないけど、愛し合っていれば、
   親をも超えるかけがえのない大切な存在になれるんだぞ」
りおな「秋真さん……」
秋真 「まだ彼が好きなら、簡単に諦めるな」
りおな「……はい。今度はそうします」
秋真 「ああ。
   しかし。未來にはあれだけ来るなと言ったのに、
   どうして劇場にやってきたんだ」
りおな「日菜乃さんが呼び出したとか言うことはないんですか?
   過去にも同じようなことがあったのでは」
秋真 「ああ。ただ今回に関してはそれはないと思うが」
りおな「秋真さん。
   私、協力しますから何でも言ってくださいね」
秋真 「ありがとう。
   りおなさんも、俺にできることがあれば遠慮なく言えよ」
りおな「はい、ありがとうございます。
   では早速ですけど、日菜乃さんとバトルしたら喉が乾いちゃった。
   缶コーヒーを奢って貰えます?」
秋真 「ああ。お安い御用。
   何なら自販機ごと買ってやろうか」
りおな「えーっ。そんなに飲めませんよ」

 

秋真さんとりおなさんは顔を見合わせ、相好を崩す。
そして思いっきり背伸びをした。
夜の街の空気はまだ冷たくて、容赦なく薄着の二人に吹き付ける。
しかし何かを共有し立ち向かう二つの心は、とても穏やかで暖かだった。

 

 


(続く)

 

 

この物語はフィクションです。

 

 


 

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