もうずいぶん前になりますが、まだ紙の文化が盛んな頃の話です…

主にアメリカ製ですが、雑誌自体は大判で「Saturday evening post」「McCalls」「Holiday」などはノーマン・ロックウエルの表紙やオットー・ストーチなどの名編者、マーク・イングリッシュ、バーニー・フックスなどのイラストレーターで見ごたえがありました…

 

 中でも「LIFE」誌は写真を主体にアメリカそのものを世界に「輸出」していました…

 

 第一次のオイルショックの始まる少し前の話です…

 

 ボクたちが「鶴丸」と呼んでいた、新しいマークを垂直尾翼に付けた「日航機」も日本の「フラッグ・キャリア」として華々しく世界の空へと飛び立ちます…

 

 当時の日本はすべての産業が世界を向き、「これが日本だ!」という熱気にあふれていた頃です…

当然ながら「日航」「LIFE」誌に全面広告を出します…

 

 一面にカラー写真をあしらい、その写真には「キモノ」を着たスチュワーデスが、客に「微笑み」ながら、なおその口元を片手で隠している…いわば古来から続く日本的美風」の表現でした…

 

 日本人のボクたちから見れば、それはあたりまえの風景で…「日本航空」内でも「ツル」同様異論がなく、いやむしろもっとも日本的な「おもてなし」の一コマだったのですが…

 

 ところがこれが海外で悪評になります…

原因は「日本人」は「笑い」でも感情を隠す…どうやら得体の知れない民族だと捉えられたようです…

 

 この事実は、ボクには衝撃的でした…こんな日本の美風も世界では全く違う取られ方がある…

ボクの中の「スタンダード」世界と同じじゃないんだ…と!

 

 その以前にあのむだ話の好きな先生が話してくれた中国の故事…

たしか「遼東の白い(黒だったかな?)豚」の話です…そこの農夫のところにあるとき白(黒)い豚が生まれます…「これは珍しい!」と喜んだ農夫は早速この豚を都に持って行きます…しかしその道すがら出会う豚は色の違うモノばかり…やがて農夫は悟ります「自分の豚なんてちっとも珍しくなんかない」…これは「所変われば品変わる」の例えに先生が話してくれたことですが…すっかり忘れていました…

 

 

 まさにそのことの現実を知らされた出来事でした…

日本と世界の違いはこんなところにもあったというワケです…

 

 

 それから数十年経って、花粉症がひどくなりマスクが街中に氾濫します…

相変わらずマスクだらけの「日本人」は感情が読み取れない、本当の感情がわからない…

つまり、曖昧な笑いに隠されてホンネとタテマエは違う国民だ…ということが知れています…

 

 そのほとんどはマスクで覆った顔にあり、なお諸外国には未だに「日本人」は不可解だという風評になっているようです…

 

 

 それが今回の「コロナ危機」では世界中がマスクをつけています…デザインも国によって様々です…今までのような衛生を強調する「白」一辺倒ではなく、色も図柄もカタチでさえもいろいろです…

マスクもファッション・アイテムのようです…!

 

 今では世界中の人々の大半がマスクで顔を覆い「感情」を読み取りにくくなっています…

どうやら、あの時世界が日本人に味わった「とまどい」を今は世界が味わっているようです…

 

 

 早く「コロナ危機」が去り、街中のマスクが取り去られることを願います…

そうでないと日本人同士の「喜怒哀楽」すら日本人自身が探ることになります…

 日本では「ハラの探り合い」という悪しき言葉もあります……

 

 

 今は「鶴丸」はありません…同時に世界が多様性に満ちていることをボクたちは知っています…

でもマスクが未だに世界を同じに見せているとしたら…?

 

 ちなみに「LIFE」誌の表紙裏から三面の見開きに、あのマレーネ・ディートリッヒが妖艶にファーストクラスの椅子に横たわる姿を掲載したのは「パン・アメリカン」航空でした…地球を横に「南回り」と「北回り」それぞれに1便と2便と名付けていたのもアメリカならではでした…NYを俯瞰する写真を見ると特徴的な「パンアメリカン」のビルには今では違うロゴが入り、ツインタワービルも今はありません…アメリカの有為転変が世界に影を落としています…

 

 そう、あの頃から世界はアメリカを眺め、アメリカはその事実に応えていたのです…でも今でも自国優先や白人優一主義などを抱えながら、ホコロビはこの時すでにありました…

 

 

 どうやらボクたちもマスク越しに世界や、この国の政治を正しく眺める必要がありそうです…

 

 かつて「鶴丸」時代にスチュワーデスから聞いたホントの話です…

ファーストクラスではチキンと肉が選択が出来たので、新米のスチュワーデスはメモを片手に一人一人に聞いて回っていたそうです…彼女はつい慣れた口調で一人のアメリカ人にも聞いたそうです…

「Are You Chiken Or Beef ?」彼女はつい日本的に聞いたのでしょう…聞かれたアメリカ人は席を立つなり「No ! Iam A Human Being」「いや、僕は人間だ」と叫んだそうです…

 

 今ではその機内食にも、ハラールや菜食主義、ビーガンまであると言います…

世界の多様性はもうボクたちのすぐそばにあります…日本もそのことに気付くべきでしょう…!

 

 

 英語と文化の多様性その両方が試されるマスク時代です…

それにしてもアメリカ人のこんなユーモアのセンスは笑えます…

 

 ひょっとして、日本人のマスク好きはユーモアのセンスのなさなのかもしれませんね…