お隣の空き地に「家」が建ちます…当然ですが塀ができます…「へい!」なんていうダジャレは置いておいて…
大きな石を積み上げたコテージです…
2/12のブログと同じ所(ミシガン州にある)のゲストハウスです…
小ぶりなので古典的なシダーウッドで葺いてあります…
元は平家でしたが…その家の南側には二階建てのアパートがあってその日影が、新しい「家」の南側にも影を作ります…当然ですが新築の「家」は二階建て、一階には陽光が射しません…いや正確には一年の大半が日影になります…
ということで、敷地の北側ギリギリに「家」はオフセットされます…
そこから私道を挟んでこれまた小さな庭を介してアパートが建っています…つまりアパートの南側です…それでも日差しが低くなる冬は新築の「家」の日陰になります…
空き地、正確には更地だったこの半年は、一階の部屋もそれなりに日差しもあり、完璧とまでいいませんがいい日々が続いていたのですが、それも工事とともに終わりです…つまり平家の時よりもさらに日陰が濃くなるということです…部屋が薄暗くなります…洗濯物を干す時間が制約されます…
しかも最近の「家」は基礎がぐんと高くなっています…余計日陰になります…
日本で成功してワイオミング(映画シェーンの舞台です)に憧れて「家」を建てたいと願う人がいました…
彼は雄大なグランドティトンの景色を眺めるために二階建てを望みます…相談した現地の大工はこう言います…「あなたが二階建てを建てたなら、それだけ次に建てる人の景色を奪ってしまう」…もう随分昔に知った話です…広大なアメリカでも当時からこんな問題意識がありました… 宅地の狭い日本ではとても考えられない話です…でもこんな話があったことを覚えておくのも悪くない、と今は思います…
これから夏の蒸し暑さがやってきます…南はカンカン暑く、北は冷えます…
でも一番は時々の自然換気です…
南と北の絶対性の物語は…「家」が建て込んだ日本の市街地や建売住宅では当たり前に見られます…
この方位が家が建ったときから変わらず続く、いわば絶対的な関係です…
この先日陰と日向の絶対性は永遠に続きます…
太陽の高い夏に差し込む暑い陽光も、太陽が低くなる冬には差し込みません…ブルブルです…
つまり最も暖かさが欲しい冬は寒く、日影が欲しい夏には遮るものが無いということです…
この決定的な事実が、ある意味家の真実です…そう、あなたの「南」はお隣の「北」なのです…
さらに風がこの事実を強調します…体感温度に似ています…実際都内でも北側の水滴が氷になっているのを見たことがあります…北はブルブル、南はカンカン照りです…
だから室外機が南にあるとエアコンの能力は落ちます…もともと暖冷は触媒の温度差で行われます…
南側の室外機は暖かい空気の中で運転されることになります…室内に誘導されるパイプも同じです…
人も植物と同じで、陽光を求める向日性がこの南と北を重視させます…もっともこれは北半球のことで、南半球ではこの方角も反対になります…さらに地球の赤道付近、いわゆる常夏の国ではこの優先事項も違ってきますが…
夏は貧者の慈母です…
確かに一年中薄着で済むし、隙間風は涼風になるし、あくせくと働くこともないから…生活費を低く抑えられます…
確かに貧者の慈母です…
というワケで、いかに光を取り込むかということが「家」の設計上の重要課題になります…
ただし都市部の建築区分で制約されますが…
どんな設計士も採光に躍起になり、客もそれを求めます…
ハイサイド窓、天窓と色々工夫します…窓は採光だけでなく、隣家や他人の視線も取り込みます…
また窓は室温=エネルギーの損失が大きいところです…それでも南と北の関係は変わりません…
依然として、あなたの南はお隣の北なのです…
建築的には、北側にハイサイド窓やガラスブロックなどを設けて、日の移ろいを部屋に呼び込むだけでずいぶん違います…あるいはお隣の反射を利用します…すべては南と北の絶対性を利用するわけです…
これが「人間」の光への感性を大事にします…北側窓の寒さ=エネルギーのロス対策にはカーテンや、結露しにくいペアガラス、ウッドサッシを活用するのもいいでしょう…
ついでにちょっと発想も変えてみてはどうでしょう…
それはあらためて人間であることを意識した生活を考えることです…「自然との共生」自分の中の自然を呼び戻す…言い換えれば自分の周りの「自然」を探すということです…「自然」と感応させます…
例えば換気…時々は窓を開け放って自然の風を取り込みます…洗濯機も今は乾燥までやります…静音だから全部が室内で済みます…それでも洗った後の匂いを消すのは自然の風が一番いいことを、主婦は知っています…
強制乾燥で縮むこともなければ、生地が傷むこともありません…
でも柔軟剤や乾燥剤、仕上げ剤までいい香りが用意されて、主婦の仕事は楽になりました…
その選択の一切はエネルギー消費であり、良いと思う仕上げの一切が化学製品に依存しています…
毎月のメンテナンス・コストだってバカにできません…
たまには窓を開け放ち自然の空気を部屋いっぱいに取り込んで、換気をしてください…ついでにあなたも胸いっぱいに深呼吸します…このわずかなことがあなたの中の「自然」を呼び戻すはずです…
昔にならい、夏は窓に「よしず」を張って日陰を作ります…窓の直近に張るのがいいのか、それとも離すのがいいのか? これも風向きでや他人の視線で決めます…
流行りのグリーンカーテン、朝顔やヘチマなどの蔓系植物は自然の蒸発が温度を下げてくれます…
すべては「自然回帰」です…
以前のリノベーションの時です…長い間、職業的な喘息に苦しんでいる方がいました…漆喰壁に変え人工的なドアなどは木造にし、塗料も床材も変えて寒さ対策をします…さらに北向きだった寝室にデッキを設けて、自然換気や自然に親しむ日常化を提案します…元々建売住宅だった素材は極力変えます…この方法が良かったようです…同時に「家」には自然換気や自然こそ大事だということを学んだ工事でした…
北側の寝室です…より開口の大きなスイングドアと窓、デッキを新設しました…
デッキ材はレッドシーダーでオズモで仕上げ…頭上はパーゴラで透明のカーボネイトが葺いてあります…
改めて外の世界の視野と自然を結ぶキッカケになりました…
デッキの反対側です…
正面は一階とつながっていて、丹精を込めたサフランの黄色い花が這い上がってきます…
色違いはアメリカでチャイニーズ・レイルと呼ばれる桟です…
左は市販品を使った流し台ですが、鉢に水をやったり手を洗うのに便利です…
デッキの正面は朝顔状になっています…こうすることで見かけが大きくなるだけでなく、
その他いろいろと利点があります…
その流し台の上にもパーゴラをつけましたが、目的は新設した窓の目隠しです…
そう、この家の北は(狭い区道を挟んで)隣家の南になるからです…
本来は「建築基準法」と「民法」は違うのですが…シャッターは廃品利用です…
室内の壁はスイスカルク、腰板はニュージランド・パイン…
ドアはアメリカの木製で、ともにオズモを拭き塗りしました…
あなたが「家」に感じる当たり前の便利さのすべては「自然」から離れたところで行われています…
人間の中の「自然」からずうっと遠いところで起きています…昆虫少年だった頃の記憶も今はありません…
どうやら「家」の利便性が「自然」と「人間」を離しているようです…言い方を変えれば、人間は家に家族や生活の便利を守る砦(とりで)であることを求めています…「人間」はそこに逃げ込んでいます…
家族の中の「自然」…自浄力や治癒力、再生力=回復力、多少の不便さを克服できる力と知恵…そんな矯正力が健在なのかを考えてください…
すべては次の世代の子供たちに受け継がれる物語です…
太古の氷に覆われた南極が今では20度( ! )にも気温が上がり厚い氷床が崩れ落ちています…溶けた氷の海面上昇は小さな島を、島国=国家を水没させます…!
あるいは日本以上の広さを焼きながらなお燃え広がっている森林火災があります…
地球の自然環境は確実に破壊されています…その一方でこの事実から目をそらし、自分たちさえよければいいという国=政治があります…これが今の世界の現実です…
これらの問題、特に「環境問題」のすべては子供たちの世代に持ち越す「負の遺産」です…
あなたが本当に家族や子供たちが好きならば、まず自分の体の中の「自然」と向き合ってください…
やれることは今でもあります…
男もゴミの分別や家事には積極的に参加をしてください…
パパやママの時代は何もやってくれなかった…って思われてもいいのですか?
今はもうパパやママが共同で次の時代を考えなくてはいけない時代です!
すべては「家」の南北と同じ永遠の物語だからです… Never Ending Story です…
このブログは、お客の利益の側に立つひとり親方がもっと増えてくれれば…と願って書いています…
特に女性こそこの分野へ興味を持ってください…あなたたちには特別な才能が眠っていると信じます…
日本だけじゃなく世界を知ってください…建築も世界を見せてくれます…!
そのためにも仲間と情報を共有してください…