さて、今日キッチンに求められるのは「家の中枢」だという重みです…
家族の口を賄い、ゴミの分別や保管まで全てがこれからの世代への「社会的」で「環境的」で「持続可能」LOHAS な責任を負っています…LOHASの概念はH・D・ソローの名著 Walden : or Life in the Woods 、1854 日本語訳「森の生活」に出てきます…自然志向が強かったおじさんたちの青春の書の一冊でした…!
訳本もたくさんあります…以前このブログに書かせててもらいました! 3/10/2019
設計では、キッチンの仕様に加えて、分別ゴミ容器の置き場、それも夏と冬ではニオイが気になるし…
勝手口の設置場所や、最近のプラゴミや換気量の計算などいくつも考えなくちゃなりません…
さらに断捨離やミニマル志向など個人差だって考えるとなれば、もう大変です…
一方で発注する方は、設備全体のコストの他にいわば日々生活していくメンテナンスコストを考える必要があります…「住宅ローン」や「税」にも関連します…子供もすぐに大きくなるし…
キッチンに関して、オトコは黙っていなさい…
これからのメンテナンス・コストも計算しなくちゃ…!
だから主婦の発言力は増し、反対にこれら主婦=奥方の毎日を理解せず、子育てやゴミの分別などの「共同作業」に協力しない夫=男は口をつぐむしかありません…
「家」作りの成功は女性の意見が中心だという事実もわかります…!
だから女性はデザイン的にもアレコレと欲張ります…
中心の目立つシンク台はステンレスがいいのか、タイルか、それとも木製にするか…自分の作業と多少の見栄っ張りがバランスをとります…
ステンレスの場合ですが…
ステンレスは厚みでその効果も見え方=映り込みが微妙に違います…トップ全体がなんだかベコベコに感じ、プレス、特にシンクが安っぽく見えるのはこのせいです…
一般に安価なシンク台ほど、主に経済的な理由でこの薄いステンレスを使っています…薄いと小さなサビが出たり、落とした食器類が割れやすかったり、水跳ねが悪いので要注意です…
タイルにこだわるならカウンター=トップの上面には割れやすいタイル、いくら旅先で見つけたお気に入りとはいえ、例えば南欧やスペイン、地中海風の化粧タイルはお勧めしません…落下物に弱く、表面もデコボコしています…タイルは目地も含めてあくまでも凹凸がない方が良いのは当たり前です…
またタイルは自分でも貼ることができます…この気楽さもタイルの楽しみですが、その場合は末端を仕上げる、俗に「役物=やくもの」を忘れないように…また仕上がり寸法はタイルや接着剤の厚さを計算してください…接着剤を使用中はくれぐれも「換気」をするようにしてください…
木製の場合はほとんどは「集成材」を使います…
表面の目立つところを考えてジョイント=木の繋ぎ方を選びます…フィンガーかカーフか?…この違いが正面に出ます…当然ですが、木の場合では素材によって塗装のカラーの見え方が違ってきます…必ずテストピースを作って試してください…これは施工現場でも重要です…!
またカウンターの厚さがあまり薄いと貧弱に見え、厚すぎては軽快感に欠けます…子供の頃に遊んだお寺の濡れ縁を思い出してください…この感覚も大事です…!キッチン全体を重厚に見せるか、軽々しく見せるか?…それも問題です…
最近は「対面式」や「アイランド式」が流行っています…
家族や友だちとワイワイガヤガヤ顔を見合わせながら調理出来るからと人気です…いつも壁と向き合い、家族やお友達の話のワに参加できない主婦の孤独感もこれなら解消できます…!
ただしアイランド型の場合…周囲にスペースが必要です…あるいは配管上の問題もありそうです…
煮炊きは壁のコンロで行い、下ごしらえなどをアイランドでやるという方法もあります…さらにスペースが必要ですが…この場合はアイランドで簡単な食事ができるようにしておくのもあるいは省スペースになるかもしれません…
ちなみにこのアイランド (島というイミ) 、アメリカでは「パーティーシンク」です…だからシンクはグラスを洗う程度の小さなものです…
それから勝手口は主にゴミや宅配食材の受け取りなど汎用度のあるものです…
それでも現場に施工の知識はあっても使い方の知識がないと、主婦の考えとは全く別の建築物になります…道路からの視線を遮るはずのドアの開きが逆で丸見えになったり…ゴミ容器置き場と逆になったり…取り付け階段はドアを閉めないと降りられないとか…いずれも、過去に目にした大手HMの実例です…
原因は、設計士は上からの図面で判断をします…立面や実際の行動を見ません…あるいは知りません…
そのためドアを中心に霧除け庇やコンクリートの階段を図面に書きます…「建築基準法」を盾に主婦を簡単に納得させます…結果、風の強弱や雨の吹き込み、暗がりで開けられないなど勝手口に新たな心配事が起きます…全ては設計士の、訳がわからない動線に主婦がダマされた結果です…たかが勝手口などと軽んじてはいけません…あくまでもキッチンの一部なのですから…
そして忘れていけないのが、女性に多いと言われている「冷え性」対策です…
そのために床暖房などがありますが、暖かな空気は軽くなり天井に集まりやすく、また換気扇が活躍する場所では、せっかくの暖かい空気も吸い出されかねません…
女性=主婦はもっと直接的な暖かさを求めます…肌身に直接感じる暖かさと言えます…
そのための「足温器」や他の暖房装置を補助的に使う必要も有効です…ただし「忘れっぽい」のも女性の特徴、これらの機器の OnOff も彼女たち忘れっぽさの範囲内にある必要が…要は行為の習慣化ですが…
これらが損失するエネエルギーのコストもバカになりません…!
床材をここだけ変えてみるのも一つの方法です…
コルクタイルも有効です…断熱性やクッション性を考えて必ず二重張りにします…それ以降のメンテナンス、主に水がかぶるなどは専用ワックスを塗布することで解決します…
日本の調理は基本的に「包丁=刃物」の使い方です…
繊細でキレイな料理はこれを使いこなすことです…
ところで日本にあってあちらにナイものの一つがまな板です…米びつもありませんね…
代わりに活躍するのがまな板に相当するクッキングボードです…この上で野菜を切り刻みます…そしてパンなどを切ってそのまま出すカッティングボードは市販品も豊富です…自作の自慢のものもあります…
よくあちらのキッチンで分厚い板というより、木のかたまりの台を見ます…これが昔からあるまな板代わりの「ブッチャーズブロック」です…もともとは肉食が主の彼らはこの上で動物の肉を調理します…なのでこれをブッチャーズ=肉屋の板と呼びますが…刃物に負けないように、分厚い木で作ってあるのは、例えば中国料理の菜っきり板に似ています…まな板との違いです…これを見ても日本料理の包丁、刃物の繊細さがわかります…!
日本の調理の特徴は、包丁など刃物で「切る」ことです…そのためにまな板もだんだんと中央が凹んできます…それを平らにするのが「まな板直し」です…カンナで削って平らにします…
同じように切れなくなった包丁を元の切れ味に直すのが「刃研ぎ」です…そんな職人も今はいません…
それだけ専門の「鍛冶職」がなくなり「刃研ぎ」に耐えるだけの刃物がなくなったのは大工道具も同じです…現在の主婦はステンレスでカッコのイイ包丁を選びます…大工も同じです…
よく言われるのが茶碗の糸切りで二、三度包丁をさっさっとやれば切れ味が戻るといいますが、厳密にはただ刃が真っ直ぐになった「刃返し」です…本当の切れ味が出る「刃立て」すら出来ない「鍛造品」じゃないということです…「ナマクラ」です…「刃立て」=研ぎ直しの度に包丁は小さくなります…
いい包丁が高価なのはそれだけ「鍛冶職人」の「心」がこもっているということです…大切に使った祖母や母の「心」もあったということです…それでも古く見えるからとあっさり捨てるつもりですか…?
余計な話です…
「鍛造」はあくまでも「鉄」です…使わないと「鉄臭さ」が出ます…「錆び」も出ます…これが料理に移ります…
そこで井戸水にさらすなど空気を遮断して、いわゆる「臭み」を取ります…ステンレスならこの心配がないということです…
ちなみにハンバーグやシチューなど「鉄」で供される料理は温度が下がると「鉄臭く」なります…温度が下がれば「鉄」に戻るからです…熱いうちに食べてください…! 子供がだんだん「美味しくない」カオになりますよ…
どうやら食器類が露出することを日本は嫌うようです…
また、天井からぶら下がったフライパンや鍋も見かけません…
日本では建築法で天井高は2,4m以下に決められています…そこから逆算しているようですが、「施工現場」にも基本的に天井から吊るすなどの知識がなく、天井の補強工事や取り付け機器などで予定外の出費を求められるのも一因のようです…
子供たちの調理参加も増えています…
鍋や釜は重く大きく堅く、包丁やナイフは切れやすく、レンジは炎を吹き、作業台は彼らには高すぎます…そのすべてにキケンが露出します…そんな中で安全を教え、正しい使い方を教えるのもママの役目です…まるで教室のようです! それでもこれが彼らの「食=食育」への芽生えのキッカケになるのなら…子供はみんなママの真似をしたがります…
ところで、キッチンは調理だけでなく菓子作りにも大活躍です…
菓子作りに使う鍋や用具は違います…本格的な菓子つくりに使う鍋釜は低温でも熱が伝える「銀」が内側に引いてあり、本体も「胴」です…重さも扱い方も違います…他にも計量計やスパテラなど特別な用具が必要です…
これらの収納も分けたいところです…
最近は「大型災害」への備えやキッチンの整理の問題から「パントリー」を設けるようです…
確かに缶詰や非常食、保存食は「パントリー」に収納すればすっきりするし、使い勝手もいいようです…
ただしこの「パントリー」はドア一枚でも有効に使えます…設計士や施工現場、何よりも家族のためにも良く相談をしてください…
以前リノベーションしたパントリーの扉です…
既存の扉を改造、パスタを入れて遊びました…裏は缶詰やパスタのポケットになっています…
以上のような欲張りなキッチンの全ては、これからの生活のメンテナンスのコストにも反映します…
すべての「エネルギー」を「生み」「消費し」「捨てる」ことになります…それでもいずれは「再生」することのためにキッチンを考えてください…根底はこれからの生活の時間軸、そして自分や家族、社会、子供たちの未来の「中枢」になるからです…! チリも積もれば山になります…
女性は不思議です…⁉︎
料理嫌いな面倒くさがり屋さんでも、あることがキッカケにお料理が好きなマメな女性に変わります…
それが女性の天与の才能かもしれません…そういえば彼女たちの「才能」は「建築」でも発揮されます…
男とは「何か」が違うようです…僕たちが勝手に「こうダ!」と男の縄張りを決めているようです…
キッチンの作りはそんな女性の変身のキッカケになれるはずです…ある朝、醜かったサナギが美しい蝶に変わっています…男には真似のできない「不思議」です…どうやら僕たち男はもっとキッチンを理解しなくてはいけないようです…!案外これがディズニーランド以上の「魔法」なのかもしれないのです…
これからはキッチン=あなたは「家」の中枢です…
子供たちの「未来」や「社会」や「環境」を考える場所です…
ホントの味は、たとえ粗末に見えても「楽しいキッチン」でこそ作られます…
キッチンを大事にしてください…!
男・女ともに、ひとり親方がもっと増えてくれるとイイのですが…
そして日本だけじゃなく世界を知ってください…建築も世界を見せてくれます…!
そのためにも仲間と情報を共有してください…