これから「家」を持ちたいと思う、または大人になりたい人に、読んで欲しいと思うブログです…

 あなたの「マイホーム計画」のお役に立つために…今日のお話は…「木または樹」の強さのおハナシ・3です…!

 

 

 あなたも経験したと思いますが、古くなった家の木に新築の時のように画鋲が簡単に刺さりません…

これは乾燥して木が硬くなったということです…長い年月で自然乾燥された木が見せる強情な一面です…

 

 このように木は乾燥して硬く=強くなり、同時に曲げや反りの変形にも強くなります…

一般の家で最適な柱が10,5センチ角=3寸5分角の太さですが…多くの家は三寸=9,5センチ角の柱を使っています…気温の一度差と同じでここでの1センチの大きさの違いは大きいものです…!

 

 その差は主に「経済性」や「作業性」に大きく影響します…!

 

 乾燥された木の圧縮の強さが柱になって全体を支えます…もちろん「家」は柱の他に梁(はり)や桁、土台や火打などが複雑に絡んで補完し合う構造体でできています…なのでぐらついても簡単に倒れません…

 

 あくまでも柱が「家」の中心です…天井裏や小屋裏でこの柱にたくさんの仕口があり、家の各所の力が集まっていることを見ることができます…

 

 

 木は伐採された状態を「生材」と言い、大量の水分を含んでいます…

これが材木の「含水率」です…この水分が余分な湿気や木の暴れを誘います…作業の正確性にも問題が起きます…形状を維持しないから、強度も出てきません…いわば天然の自然児です・手がつけられません…この天然児に言うことを聞かせるのが乾燥です…言うことを聞け!というワケです!

 

 乾燥専用の窯に入れて高熱で水気を抜きます…例えば2×4材は20%以下まで水分を抜きます…この数値が材の安定をもたらす最適な数値だと言います…「家」の各部分に使う木で「含水率」は違います…

 現場で使える手軽な「乾燥計」というものもありますが、数値はあくまでも近似値です…2×4が発達したアメリカでは多くの機種が売られていて通信販売でも手に入ります…!

必要以上に乾かすと「木」本来の香りやツヤを失います(これはあなたは経験しているはずです)…同時にペンキなどの上塗りにも影響します…(ペンキが塗りにくいとか、剥がれやすいとか…これも経験しているはずです)

 

 また虫や木の腐朽を避ける薬剤の注入も行います…かつてはこの薬液も人間の皮膚に悪いということだったのですが、今はより安全性の高いものを使用しています…

 2×4材の緑色のものがそれです…土台などの基礎に接する部分に使われます…

 

 

 「生材」はベテランの職人さんが心材と辺材、さらに木の使い道などで細かく製材の指示をします…

これが「木取り」です…このときに建築だけではなく、家具作りに最適なものに分けて製材されます…

 機械的な乾燥機なら時間の短縮や仕上がりを調節できます…製材所や家具メーカーの庭の片隅に、簡素な鉄板で雨除けされて野積みされた木や板を見かけます…あれは環境に馴染ませながら自然乾燥させているところです…樹種や部位と形状で違いますが、こうやって10年以上も放置されたままの木もあります…それだけ木は生きているということです…

 

 木はその強度や加工の自在さで産業=経済の発展の一翼を担ってきました…鉄道の枕木や橋梁、馬車の車輪や飛行機の胴体も木でした…20世紀初頭のレーサーはブルックランズのような木のトラック上を疾走していました…英語の Boardwalk ボードウオークは遊歩道を意味しています…「渚のボードウォーク」…です♪

 

 またヤニの多いマツ類は橋の下を支える杭として川底に打ち込みます…丸ビルの解体では大量の米松が現れました…水の都のベネチアや、かつてヨーロッパに憧れたピョートル大帝が築いたペテルブルグの下にも松杭が埋まっています…木があの石の巨大都市を支えているなんて驚きです…!

 

 国旗に表現されている「レバノン杉」もかつてはこの地を緑に覆っていました…古代フェニキア人の地中海制覇の夢を実現したのがこの杉です…学校の世界史で習いましたね…その時の伐採の傷跡が今では、禿山の一部にわずかに残るだけになってたなんて知りませんでした…! 絶滅危惧種になっているそうです…

 そしてアメリカのレッドシーダーの巨木が連なる森も「スター・ウオーズ」に登場します…

数年前にこの木をリノベーションで使いましたが、強靭さと工作性の高さ、何よりもヒノキのような香りに圧倒されました…この木で作った家は自然志向派のスティタスです…「防水性」「防虫性」に優れ、森林協会が保護して植林もされています…カナダのお土産にこの木から作った「芳香剤+防虫剤」があります…!

 

 このように、大きな木はその数を減らしています…歴史から弾かれたと言っていいのかもしれません…

 

 

 日本では紙以前の書付は木=木簡(もっかん)でした…打ち捨てられた木簡の書付が当時のいろいろなことを現代に語ります…その多くは水分の多い土中に埋められて酸素から遮断されます…この時に木が滲出するタンニンという茶色い液体が木を守ります…このタンニン(日本茶にも含まれています)も木の素性を守っているとしたら…木はとことん人間の役に立つ生命体だと思えます…!

 

 

 樹種によっては伐採後に強度の増す木もあります…現代の2×4に飽きた自然志向派のティンバー・フレームに使われている楢=なら材なども扱いにくい木です…幸いこんな大きな楢は日本には自生しません…これは英語の標記は Whiteoak で日本では樫Oak(かし)と総称されますが実際は楢(なら)です…あのレバノン杉も本当はです…こんな風に表現の違いがあるのも世界に散らばる木の面白さです…! 木をよく知る大工さんは触って嗅いで正解します…僕たちが木を知っているなんてタカが知れていると思い知らされます…!

 

 山に働く人は他にも、伐採した杉の「葉枯らし」や、自然乾燥の「干割れ」などたくさんの知恵を教えてくれました…!

山の人も製材所の人も伝えたがっています…僕たちが聞こうとしないから…耳をふさぐから「木の文化」の素晴らしさも僕たちから遠ざかって行きます…!

 

 

 北斎の「富嶽三六景」の「遠江山中」には、材木を立てかけた上と下から専用鋸(のこ=クジラのこ)を挽く職人さんが描かれています…鋸の目立てをする職人さんの姿もあります…これが「木挽き」職で「本所立川」にも描かれています…こうやって木を挽いていたんですね…とんでもない重労働です…‼︎

 

 ムダ話ですが、遠江とは昔の三河と遠州(ご存知森の石松の生まれ故郷デス)に囲まれた地域…洒落好きな江戸っ子は「うなぎ」をとおとおみ(遠江)と呼んだそうです…その心は、身(三)と、皮(河)の間(遠江)が美味い…ということです…あははは…美味いっ、いや上手い洒落です…! え、そんな遠くから富士山が見えるの? 大丈夫、組んだ足場の間から富士山が見えてます…有名な「赤富士」や「相模の沖の浪裏」同様、ここでも北斎の俯瞰の目と想像力には驚かされます…!

 

 その東京ですが、歌舞伎座のあたりを昔は「木挽町」と言いました…この辺りには江戸築城でたくさんの木挽職人が働き、住んでいたからとついた名前だそうです…あなたの街にも職業が地名になったこんなところがありませんか…地域の歴史はこんなところにもあります…あとは想像力があれば…!

 

 このように大工の基本木と木挽の目立ての良さです…!

ややもすると地味な影の仕事のようですが「木割り」の職人さんの大事さがわかります…

 

 日本古来の「木の文化」はこうやって幾重にも重なった職人さんたちの技と、仕事に対する誇り=心意気が支えてきました…こんな素晴らしさが消えていいとは思いません…造り手も建て主も一緒に考えたいことなのですが…!

 

 

 こんなに人間に寄り添ってきた地球上の木や森は伐採されてその数をどんどん減らしています…

近代の科学で「炭酸同化作用」(今では懐かしい言葉ですが)がわかり、慌てて森林の保全や保護に向かいますが、今の地球上では人間の手で毎日大量に木を失っているのが現状です…植林の大切さや、あなたの子や孫の世界に何を残せるのかを、僕たちは「家」を建てるごとに問われています…! 

 

 

 

 ここまで読んでくれて、ありがとうございます! 

 次回の旅の続きは「集成材と接着剤の関係」です…! 

 

 正しい知識さえあれば、設計士にも施工現場にもニラミを効かせられます…情報を共有してください…

もちろんあなたの「マイホーム計画」が成功することを願います…!

 

 

 

 ところで、この業界では建てる人を「お施主さん(おせしゅさん)」と言います…イミも含めてもともとは仏教用語です…僕のブログではあえてこの表現は使いません…今までもこれからもです…!

 同時に今までの「リフォーム」は英語のフォームを変えることを意味します…スポーツのフォーム(形)とか、書式のことです…「Renovation(リノベーション)」が正しい言葉です…教育の英語化が叫ばれているのに変な使い方がまかり通っているのもこの業界です…

 

 Renovationには修理や修繕の他に刷新や元気回復という意味もあります…

「家」を新しい力で元気にさせる…「リノベーター」に応しい言葉ではありませんか…!