これから「家」を持ちたいと思う、または大人になりたい人に、読んで欲しいと思うブログです…

 あなたの「マイホーム計画」のお役に立つために…今日のお話は…「家」の屋根形状のアレコレです…!

 

 よく屋根の勾配…キツさについて「ナン寸勾配」と言いますが…これは勾配を「ナン度=度数」ではなく「寸」で表したものです…真横に一尺(30,3センチ)=十寸進みそこから垂直に一寸上がったところと結んだ勾配が「一寸勾配」です…以下「二寸勾配」は二寸の高さで「三寸勾配」は三寸の高さです…

       

屋根勾配はこのように必ず屋根図に表記されています…タテの数字が勾配を表します…

3、5というのは屋根勾配が三寸5分ということです…

 

 道路の坂道では「%」表示が使われますが、あれも同じ理屈で100メートル行って5メートルの高さなら 5/100 =「5%」勾配ということになります…度数ではありません…!

ともに数字が大きくなるほど角度が急になります…人間が作業するには「三寸勾配」が限度と考えてください…安全のためにはなるべく「足場」を組むようにしてください…家の建築については例外的に「尺貫法」が認められています…メートル法で「一寸勾配」は「3,03センチ勾配」なんて呼び方も厄介ですよね!

 

 

 屋根の大きな役割は、雨や雪などの水から家族を守ることです…その他にも温度や風、騒音や細かな振動から守るのも屋根です…

 

 基本的に屋根は棟から見て左下の列から、順次上に向かってかぶせるように葺いて行くのが基本です…雨は上から降るので、こうやって葺けば水漏れは無いということです…当たりマエダのランチクラッカーです(このダジャレも古いか!)

 

 まず瓦を見てみましょう…中に葺かれるのが「棧瓦」です…向かって左側が山になっていて高く、真ん中は凹んで、右側はまた高くなりますが左側のような山がありません…つまりこの左側の山の部分が(下から見ると)左隣の瓦にかぶさるように葺きます…

 

 瓦の裏には突起があり、あらかじめ屋根の野地板に打ち付けられた「瓦桟(かわらざん)」という桟木に引っ掛けるように置きます…これで横に一列が並びます…

当然ですが始めの一列目、つまり「軒瓦」の前面は折れ下がって丸い飾りがついています…葺き上がるとこれが唐草模様に見えることから、別名で「唐草(からくさ)」と呼びます…一方でこの飾りがなく下端が一直線なのが「一文字(いちもんじ)」です…

 

 切り妻では屋根の左右の端っこに専用の瓦を使います…この一列を「けらば」と言います…「けら」というのはオケラという虫の羽(ば)のことです…どうして「場」でないのか親方も知らないようでした…

切り妻屋根の端っこで破風板のところです…

 よく懐がすっからかんになることを「オケラになる」と言いますが、これはこの虫を正面から見ると短い前足がバンザイ、もうお手上げだ!に見えるからだそうです…でもお手上げがバンザイとは、ビンボウ人のシャレの極みです…!

 

 屋根を見上げると「棟」の下は平らな瓦が連なります…つまり瓦の半円に直線が接するわけです…

その直線の瓦を「熨斗(のし)」瓦と言います…これを数段重ねてそのてっぺんに「棟瓦」を乗せ棟が完成します…この時に出来るのが棟の下の土を雨から守る「漆喰」です…その漆喰が半円形に白く見えることからここを「半月」または、「面戸(めんどまたはめんと)」と呼びます…専用の「面戸瓦」というのもありますが、たいていは「漆喰」で塗り上げます…

「のし」とは例の「熨斗」のことです…紙をまっすぐ伸ばすことなどを「のす」と言いますがあれです…代表格のあわび熨斗の、磯のアワビの片思い、というのはアワビ熨斗の片方が重=思く見えるから…というのはオマケのハナシです!

 

 この棟の端にあるのが通称「おに」と呼ばれる「鬼瓦(おにかわら)」です…元は寺社などが邪気を払うためにここに「鬼」を書いたのが始まりだと言います…

 

 「瓦」はその不思議な形で雨水を流しますが、平らな屋根に置くのは厄介です…その手助けをするのが土です…と言っても関東一円では荒川の上流から採れる「荒木田」をさらに篩(ふるい)にかけた土を敷いて安定させます…これを「目土(めづち)と言います…露出した「荒木田」を守るのが「漆喰」です…

 

 この荒木田をこねる時に粘着力を強くする「すさ」を混ぜました…これを混ぜると乾いてからもひび割れがないそうです…古くなった稲や紙、布などを細かく刻んで使うそうです…親方が現物を見せてくれたのですが、漢字は知らないそうです…

 

 「漆喰」の白は目立ちます…もしもはがれたりすればそこから水が侵入して中の泥が流出します…雨漏りの原因になります…流出した泥は樋に隠れて見えにくいので、たまには屋根全体を目視してください…

 

 ちなみに「荒木田」は粘着性と保水力があるなどの特徴からテニスのクレイコートや大相撲の土俵、園芸でも使われているから意外に身近な土です…

 

 

 「瓦」は細い銅線で結ばれています…軒先やケラバなどは専用の瓦釘で止められます…

また瓦は割れやすく歩きにくい形です…屋根には屋根の歩き方があります…いくら軽作業でも素人には足、いや手の出にくいところです…くれぐれも足の裏の感覚がわからないスニーカーなどで上がってはいけません…必ず地下足袋を履きましょう…

 

どうですか?…

 TVで江戸の盗賊が屋根を駆け巡ったり大捕物をやっていますが、これでは瓦の列はバラバラになって浮いたり、割れて落ちたり、目止めの土が舞い上ったりで大変です…あんなことはできるはずがありません…小説家の想像力のすごいところです…と言ったら味もそっけもないですね…!

 

 また「瓦」一枚の重さにびっくりします…それを何枚も使う大屋根を支えるのは「木の柱」です…

同時にこの屋根の重みがまるで重しのようになって家を作っていたのかもしれません…[ いらかの波と雲の波 そのなかぞら(中空)を 高く泳ぐや鯉のぼり〜♪ ]…甍(いらか)とは瓦のことです…

パタパタと泳ぐ鯉のぼりと瓦屋根が連なる日本の五月の空はさぞ美しかったんですね…!

 

 

 

 屋根に葺く屋根材も進化しています…

 

 屋根にいろいろな役割があることはわかりますね…

多雪地帯では雪が自然に落ちる急な角度を利用します…急とは言っても普段もその勾配を保っていなくてはならないので瓦などは敬遠されます…

 

 なので勾配が急だったりカーブした屋根にはトタン板が使われます…曲げに強く雪の重みにも耐えます…最近はガリバリウム綱になってより強度が増しています…

だいたい一尺の間隔に縦に棒状の入ったのが「瓦棒(かわらぼう)」という屋根です…雪の降らない、つまり平面荷重が小さく、雨水だけを流せる勾配の緩い屋根に使われます…一寸以下の緩い勾配から急峻な勾配まで使われます…歩行できないタイプの「陸屋根」にも使われます…屋根材としては「瓦」に比べて軽量なので屋根への負担が少なく、最近の家にも多用されます…

その一方で小屋裏に相当する部分がないので太陽熱や騒音にはやや無防備です…でもこれらの問題は断熱材や遮熱材や遮音材の組み合わせが解決してくれます…

 デザイン的にもスマートなマイホームには検討してみるのもいいかもしれません…特に最近は太陽光パネルを設置しやすく、断熱効果も見込めます…

 

 

 2×4には「コロニアル」…元はクボタの登録商標です…あのジープが実はJeep社の商標だというのと同じです…も各住宅メーカーがそれぞれの呼び名で提供しています…基本的には「瓦」と同じ葺き方をします…軒先=スタート用のコロニアルだけを二重に張り、あとは順次に上方へと専用釘を使って葺きあげます…

 表面には塗料が吹き付けられ、これが耐水性をもたらします…しかしこの表面が太陽光で褪色(色あせ)すれば効果は落ちます…そのためにも5〜10年ごとの再塗装が必要になってきます…

棟は金属で包みます…入母屋のような両方の屋根がぶつかる棟を同じように金属で包む方法と矢形の金属で各列ごとに包む「さし屋根」の二つの方法があります…

 

 水は厄介です…特に「毛細管現象」では「水」は狭い隙間を伝って上方に動きます…あるいは横にも…

台風の強い風では上にも吹き上がって隙間やつなぎ目から侵入します…

「瓦」や「コロニアル」が葺き方によって適正な勾配が決められているのもこのためです…

 

 

 屋根材を大別するとこれらが主流です…

 

 屋根の形にも大きく分けて真ん中あたりが膨れて庇に向かって急峻になっている「起屋根(むくり屋根)」と、寺社のように反り返った「照屋根」があるのは前回書いた「破風」と同じです…大屋根の話では…前者は屋根を途中でむくって急峻にすることで雨水の落下速度を高めます…また後者は瓦の重量を真下の柱に伝えやすくします…特に後者は見上げる人たちに建築の壮大さを意識づける効果もあります…

 

「むくり屋根」は熟練の大工さんでなくてはできません…

 

「照屋根」は神社仏閣に多く見られます…宮大工の世界です!

 

 他にU字形のスペイン瓦にフランス瓦、スレート瓦など多種多様にあります…ネットで個人が選べる時代です…とは言っても日本は世界でも名だたる多湿な国です…施工方法にもお気をつけください…

 

 

 屋根の下地は「野地板」と呼ばれ、張ると同時に平面強度を確保します…最近の建築ではいわゆる「構造材」を張ります…その上に「防水紙」を張りますが、紙とは言ってもフェルト紙に防水のタールを吹き付けてあります…ロールされた重さが呼称になりますが、最近は23キロと呼ばれる緑色のものです…重い分防水効果に優れています…

これを軒先からタッカーで野地板に止めてゆきます…瓦屋根ならその上を瓦桟が止められます…コロニアルなどはそのまま上から止めます…しばらく経つと屋根材の下のタールは熱で溶けて、より密着性と防水性が高まります…

 

 野地板、構造板が強度を補強し、防水紙が水漏れを防ぎ、屋根材が「家」全体の美観を決定する…

いずれにも作業=施工の正しさが要求されます…出来上がってみれば下からは見えず修理も容易には出来ないところです…それだけによく検討すべきです…!

この他にも騒音、風の向き、振動、修復やメンテナンスが容易か…なども検討しておきましょう…

なるべく複雑な屋根形状や危険な勾配になるデザインは避けましょう…雨仕舞も大変になります…!

 

 

 

  ここまで読んでくれて、ありがとうございます! 

 

 次は、「木」の話です…「木」は不思議な素材です…!

「木」を理解した「正しいリノベーター」が育つことを願います!…「家」を理解した若い世代が増えることも…!です…

 

 正しい知識さえあれば、設計士にも施工現場にもニラミを効かせられます…情報を共有してください…

もちろんあなたの「マイホーム計画」が成功することを願います…!