これから「家」を持ちたいと思う、または大人になりたい人に、読んで欲しいと思うブログです…

 あなたの「マイホーム計画」のお役に立つために…今日のお話は…「家」の屋根形状のアレコレです…!

 

 前回は小屋裏のお話をしました…

日本建築を「和小屋」、洋風建築を「洋小屋」と呼ぶのもわかりました…

 

 ここで面白い話…

小屋裏の中心にあるのが、垂直ににょっきり立っている「束柱(つかばしら)」です…小屋梁の真ん中で一番高い束柱を中心に、少し短い束柱が左右二本で、順次それより短い束柱があります…この束柱を和小屋では特に符丁なく呼びますが、洋小屋では中心になるのがキング・ポスト(柱)で、そこから二番目の左右をクイーン・ポスト、三番目がジャック・ポストです…これ、トランプと同じ表現です…

やっぱり、キング=オトコが頑張らなくちゃ!という程度のオハナシです…

 

 もっとも最近の洋小屋では束柱を使わずに、予め三角形=トラスに組んだものも使うようです…

アメリカやカナダのホームセンターでは各スパンごとに完成品が売られていてびっくりします…!

これを何本もピックアップトラックなんかに積み込んで帰ります…ブ〜ブ〜ガタピシガタピシ…♪

 

 前回も述べましたが、小屋組みは「在来」を完成させる大事な部分です…そのためにも各部材はしっかりと組み合わされます…屋根のように高いところは太陽からの熱だけでなく、雨や雪、風の向きや強弱にさらされるからです…人間と同じで頭が揺らいでは身体全体も安定しません…

 

 実際の小屋裏にはたくさんの構造材があります…例えば「切妻屋根」では、てっぺんの棟木から束、小屋梁、軒桁、母屋(もや)に垂木(たるき)…これらを補強する小屋筋交い、火打梁などを見ることができます…「入母屋」ならこれに、屋根の四隅を支える「隅木(すみき」が入ります…

 

 これらの構造材が木でできている場合は…例えば棟や小屋梁、軒桁などは二本の木を継いで、まるで一本の木のような強度を寸法的に確保します…この継ぎ方は「台持ち継ぎ」「腰掛鎌(かま)継ぎ」あるいは「腰掛蟻(あり」継ぎ」などで出来ています…これを「仕口」と呼び日本伝来の工法です…

でも継ぐ木はそれぞれの生育環境の違いで経年変化も違います…これが「仕口」などを狂わせます…木が生き続けている証拠です…

 

 はじめて古い家の屋根を開けた時の経験です…葺き替えと同時に小屋裏換気も設置した時です…

何年も密室化していた小屋裏は、湿気と温度ですごいことになっていました…木のすべてが痩せ、かすがいなどの金属は錆びています…小屋梁の仕口には隙間ができて、束柱や補強用の小屋筋交い、桁、野地板までが変形しています…家族から見えないところで木は戦っていました…!

 

 

 束柱は「ほぞ」で小屋梁に打ち込まれます…「仕口」や「ほぞ」で一体化されて引っ張りや引き抜きにも強くなります…いわば基礎、土台から始まった「軸組み」という物語の最終章がここで完結します…

 

 それでも長年の疲弊は木を痩せさせてひねったり曲げたり、鉄は錆びてその用を足しません…

呼吸をさせず、生きることをさせなかった「家」が窒息します…小屋裏の密室化の怖い原因です…

「小屋裏換気」の大事さがわかったと思います…

 

 

 「家」にはいろいろな力が常に作用しています…圧縮や膨張、引っ張りに曲げ、引き抜きや緩み、移動や変形…家は建った時からこうした力を自然や家族の暮らし方から、いつも受けています…

見方を変えれば「家」はこんな力から家族を守っています…この大事な仕事を受け持っているのも小屋裏です…

 

 ここが密室化して通風もなく、日夜熱の影響を受ければその影響は構造材にも及びます…築年数が経った「家」の棟が陥没しているのも小屋裏内部の変形が大きいからです…捨てられた「家」は屋根から落ちてゆきます…人さえ住んでいればという思いは、忘れられた「家」の悲しい姿です…!

 

 

 

 切妻屋根の端っこの化粧板を「破風」と言います…英語では Gable です…

女のこなら一度は読んだことのあるモンゴメリの名作「赤毛のアン」の原題は Green Gabel  このままの訳だと「緑の妻屋根」ですが、それを「赤毛のアン」とした花岡花子さんのセンスは大したものです…

きっとプリンスエドワード島では目立った家だったのでしょう…

 現場で、大工さんが「はふ」と言っているのはこれです…「はふいた」なんて言います!

 

切妻屋根の場合です… 

 

入母屋屋根の場合です…通常は鼻隠しは雨樋で見えません…

 

 この「破風」には緩やかなカーブを描いた「唐破風」と直線的な「千鳥破風」があります…

ともに日本では神社仏閣やお城、武家屋敷に利用されました…果ては銭湯の玄関にも使われたのも銭湯が当時の一大娯楽の中心だったからでしょうね…そういえばガキの頃の銭湯には女中さんがいて、お父さんの入浴中は赤ん坊の着替えや遊び相手なんかやってくれてました…この台が男湯にもあったのは子育てが女性だけではなかった証です…シッカロールをポンポン…なんてね!

 

 寺社などの大きな「破風」のてっぺんには「懸魚(けぎょ)」という飾りが付いています…元は火事除けに魚をかけ(懸)た名残だそうです…地方の家や蔵のてっぺんに「水」の文字が書いてあるのも火事除けの意味です…またこの破風もよく見ると本体の屋根に比べて、反って(カーブ)が付いています…凸型に反っているのが「起り(むくり)」で、反対に凹型のような反りを「照り(てり」と呼びます…

僕たちも現場で微妙なカーブを作る時には「矩尺(かねじゃく)」を曲げてカーブを作ったのですが、この「起り」や「照り」の微妙さは墨付けの糸のタルミから得たそうです…今更に宮大工の美意識に驚かされます…話が飛びますが、あのサクラダファミリアで人気のあるガウディ建築の曲線もこの糸のタルミを写し取ったそうです…最近は城郭や寺社を見る女子も多いそうです…この機会にぜひ「破風」と「懸魚」もつぶさに見て古い建築にも興味を持ってくれるとうれしいのですが…!

 

 日本的な「千鳥破風」の後ろの妻壁は、たいてい格子状の飾りです…

「唐破風」の唐というのは漠然と大陸伝来という意味でしょう…屋根瓦の軒先をその形から「唐草(からくさ)」というのもそうかもしれません…

 

城郭や寺社の説明によく出てきます…参考にしてください!
 

 この「破風」に対して軒先の化粧板が「鼻隠し」です…この側には棟から伸びた垂木が見えます…

その先を見栄え良く切りそろえた「端隠し」をあるいは「鼻隠し」と洒落たのかもしれません…!

 

 本格的な数奇屋造りでは雨樋をつけずに垂木を見せる造りがあります…「化粧垂木」とも呼ばれ、太めの垂木で庇(ひさし)の出も深く、雨の落ちる風情を楽しみます…

 

 

 

 ここまで読んでくれて、ありがとうございます! 

 

 次は最後にしつこく、屋根材の話です…!

毎回長々とクドイ話ですが、それだけ「家」には知るべきことがたくさんあるということです…

ここではかなり省略して書いています…! 

これがきっかけで「正しいリノベーター」が育つことを願います!…「家」を理解した若い世代が増えることも…!です…

 

 正しい知識さえあれば、設計士にも施工現場にもニラミを効かせられます…情報を共有してください…

もちろんあなたの「マイホーム計画」が成功することを願います…!