物事をあるがままに受け取る。それを写実主義というのだろうが、科学がそういう分野を扱えるようになったのはそう昔のことではない。複雑系の科学というのがそれである。
例えば、これは蔵本由紀氏の本に書かれている例であるが、木を折ったときどういう形状に折れるのか、ヘリウムの入った風船を空へ飛ばすときどこに飛んでいくか、という問題はいくら1秒間に京回計算するスバコンと言えども計算はできない。
こんな簡単なことができないのかと想うかも知れないが、現にそうなのである。そういう分野を扱うのか複雑系の科学である。複雑なものをモデル化することなく複雑なまま受け取ろうとする。これはまさに写実主義であろう。
モデル化を得意とする数学はこの場合あまり役に立たないのかも知れない。一回一回モデルを作ればできるだろうが、例えば上の2つの例を見ても、どうパターンに押し込むか考えたら、そのパターンは無限にあることが分かるだろう。
こういうとき数学は数学として考えるには向かない。この数学を数学として考えるとは数学の構造の中に現象を押し込むことを意味する。物理学は線形の現象に押し込むことで、うまくこのことを成し遂げた。物理学に限らず数学を扱う学問は多分そういうものだと思う。
でもその段階からもう抜け出しつつある。というのも、複雑系の分野が発展しつつあるからである。