どうして仕事を断らないのだろうか | 悪態のプログラマ

悪態のプログラマ

とある職業プログラマの悪態を綴る。
入門書が書かないプログラミングのための知識、会社の研修が教えないシステム開発業界の裏話は、新人プログラマや、これからプログラマを目指す人たちへのメッセージでもある。

仕事を頼まれたら断れない人がいる。傍から見ていて出来そうもないと思うような仕事でも引き受けてしまう。つい横から口を挟みたくなるが、本人が「出来る」と言っているのに、他人が「出来ないだろう」などと言うのも失礼だと思い、黙っている。しかし、案の定、期限が来ても仕事は終わっていない。


もちろん、何らかの理由で仕事が遅れるようなことはよくある。そういう場合は、可能な限り早く「出来そうにない」と言うのが誠実な対応である。しかし、期限が来るまで黙っていて、当日になってから「出来てません」などと言う人もいる。そういう人に限って、「明日までにやります」などと言うが、やはり出来ないのだ。


そういう人がいると、周囲は振り回される。その仕事の依頼者はもちろん、その人に次の仕事を頼もうとしている人にも影響が及ぶ。また、遅れた仕事がクリティカルパス(※)の一部であれば、より大きな仕事のスケジュールがまるごと遅れてしまう。


もちろん、本人も辛いだろう。



どうして出来ないことを引き受けてしまうのだろうか。


自分が「出来ない」と言ったら依頼者が困るだろう、と考えてしまい、ついつい引き受けてしまうのだろうか。実際には、「出来る」と言っておきながら出来なかった場合の方がもっと困るはずなのだが。


あるいは、「出来ません」と言うと怒られると思っているような場合もあるだろう。特に上司からの指示には、萎縮してしまって「出来ない」とは言えないのかもしれない。実際、「出来ない」と言うと怒るような上司もいるだろう。しかし、「出来る」と言っておきながら出来ない時の方がもっと怒られるはずだ。


もしかすると、「出来ません」と言うのが「格好悪い」と思っているような場合もあるかもしれない。



反対に、彼が本当にその仕事を期限内に出来ると思っているケースもある。


例えば、仕事に必要な時間の見積が小さすぎるのかもしれない。その仕事に関する経験が少ない場合はうまく見積もれない。作業が順調に進んだケースしか考えなければ「出来る」と思ってしまう。しかし、実際の仕事をしていると、何かトラブルが発生するものだ。作業時間はある程度のリスクを考えて、多めに見積もるべきである。


逆に、自分が使える時間の見積が大きすぎる場合もあるだろう。自分が他にも色々と仕事を抱えているということを忘れている。または、そうした仕事に対して自分はどれだけの時間を割けるのか、というスケジューリング(時間管理)をしていないような場合だ。


あるいは、自分の能力を過大評価していて、「出来る」と思い込んでしまうこともあるかも知れない。



誰かに仕事を頼むとき、「出来ない」と言われれば、他の人に頼むとか、スケジュールを見直すとか、何かしらの対応が出来る。しかし、「出来る」と言われれば、信頼して待つだけだ。それが、期限の日に「出来なかった」となると、取り返しがつかないこともある。もちろん、依頼者の信頼を裏切ることにもなる。


何か仕事を引き受けるというときには、本当にそれが出来るのか、ということを相当慎重に考えてもらいたいと思う。







※クリティカルパス
その仕事が終わらないと次の仕事が始められない、という関係にある一連の仕事。特にプロジェクト全体の長さを規定するものをいう。



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