ふつうでいいんだ。

そう考えて凄く楽になった。

デザインとかアートの世界の勉強をしていて、

この世界は、何か特別なものが常に要求される。

ふつうじゃないもの。

非日常的なもの。

派手なもの。

誰もが考え付かないようなこと。

個性を出すことがデザインやアートだと思っていた。

でも、深澤直人の本を読んで180°世界が変わった。

いかに、日常に溶け込むデザインをするか。

彼は、凄くいいふつうをつくる。

派手じゃない、ふつうなデザイン。

でも、凄くいいふつう。

こんな世界もあったんだ!

もちろん、凄くいいふつうをつくるのは、とても大変だ。

でも、すぐには、色あせない力がある。

それは、すごくやりがいのあることじゃない?

色あせないものって、派手さの中にも、ふつうがあるから色あせないのじゃないかな。

ビートルズ。

僕の好きな輪郭がおぼろげに見えてきた。

初めて、一人で外の世界の扉を開いたような気がする。

バロセロナ、イタリア、クロアチア。

一ヶ月間(厳密には三週間と三日間)一人でふらふらしていた。

二週間前に、急に行くと言い出した僕に、母は一通り反対したものの、結局許してくれた。

「自分の人より恵まれた環境を利用して何を引け目に感じているのか」と言ってくれた人がいた。

僕にとってまぶしすぎるその人の言葉は、何か小さくて大きなふっきりを与えてくれた。


人々の不親切な態度。

訳の分からぬ言語。

嘲笑の目、言葉。

吐き気がするくらい、派手な人々。

見知らぬ国で途方にくれた。


言葉が通じないのに親切なおじいさん。

きちんとした態度で接してくれたしてくれた宿のお兄さん。

ぼんやりとした昼過ぎのグエル公園で聞いた淡いジャズ演奏。

本。

燃えるような夕日と、何処までも青い海。

小さいけど、暖かな幸せ。


世界にはなんて無駄が多いのだろう!

真っ白いシーツの寝る場所があって、必要なだけ食べて、美しいものを見る。

人が生きていくのって、とてもシンプル。

そんな暮らしは、今は旅の中でしかできない。

僕には煩悩が多すぎるようだ。


こんな世界があったんだ。

そんなことに気がつかず、目線に怯え、何とか愛されたくて。

うすっぺらの自分がいた。

否定はしない。

それも僕だ。


かっこつけるのが、ちょっとずつでもなくなっていけばいい。

自然体。

自然体が見せれるようになって、はじめてつながる。


とりあえず、

ただいま。