1990年代初頭から2000年に掛けてはとにかく雲南省南部、ラオス北部、ベトナム北部の山岳地帯に通っていた。Golden Triangle黄金の三角地帯といわれ1980年ころまではアヘンを作る人も買い取る人もお金になった麻薬栽培地帯である。このあたりは日本からは想像できぬほどの山岳地帯で、山々が前後左右に連なり小さな街がところどころに点在する。(小さな街といっても盛岡ぐらいの人口や規模はある。)鮨詰めに詰め込まれたバス車内で少数民族の体臭とタバコのにおい、そして目に見えるほど巻き上がっている埃とともに数日間掛けてたどり着く。当時は大変骨の折れる地帯だった。
そこへ通う理由は、
昔のヤオ族の布の色合いに魅惑されてしまったからだ。深い藍染の布の上にこげ茶や紺の糸で刺繍が施されている。一瞬真っ黒とも思える布に今まで感じたことのない民族のセンスに「びびびっ」と来てしまった。当時はその布を眺めてはため息をついていた。もっとたくさんの布を見たい。と
中国雲南省の奥地やベトナム北部の山岳地帯そしてラオスの北部にくらすヤオ族の一派ミエン族。人目を忍ぶように町から離れた山の中腹に住む。山の斜面に四五十の集落を作りほぼ一民族で暮らしている。前述のように麻薬地帯と重なり、獣道のような道を何時間も歩いたり、トラクターの荷台に乗って半日かけたり、一回現地に行くと二ヶ月ほどその周辺を国境にかかわらず歩き回って収集した。
僕が集めた布のほとんどは、ヤオ刺し というヤオ族独特の刺繍の施し方の残っているもの。現代のものは収集しない。これが基本。美しい草木で染めた色合い。意味ありげな刺繍のデザイン。不思議な光沢。(この辺は詳しくアーチコレクションのホームページに載せてありますのでご参考ください。)
そうやって軒先を一軒一軒歩いていくと時々、間違ったところにぶつかってしまう。男女の情事くらいならさして気にせず通り過ぎるが、あのやせ細ったアヘン中毒者の喫煙もしくは食中に当たったときだ。日中なのに重く漂ったけだるい雰囲気とこちらにも移って来る倦怠感、幻覚の一部としてこちらを見ているが、もちろん動けないし動かない。あの重々しい暗い気持ちを吹き飛ばして通り過ぎる。
山岳民族にはシャーマン(祈祷師)がいてもちろん天からの指示を得るために儀式には天然薬物を使いトランス状態を作る。そういった人のこのような場面にときどき出くわす。了解の下、葬儀を見学中オピウムを食べさせられてトランス状態になり死者から霊が抜け出し天に舞うのも見た?こともある。何の祭りかは知らぬが(ひょっとして婚約だったか?)モクモクと大麻が炊かれる高床式住宅で三時間、これ以上はやばい!というまで大麻の煙に浸たされて狂乱してしまい、三日ほどわけがわからなくなったこともあった。
話がそれたが、その美しい布は、そうやって彼らと交流し、了解して譲ってもらった布なのだ。
現地の少数民族といわれている人はインドシナ全体では数百に上ると思うが、特にヤオ族の人は他の民族と異にしている。次にはこの辺を記してゆきたい。