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それぞれが午後の授業を終え、人気の少なくなった廊下。トイレの水道から水滴の落ちる音が規則的に聞こえる。あけられた窓から吹き抜ける風すらしっかり耳に届くほどあたりは静まり返っていた。5人はほとんど同時にそこに集まった。それぞれがまた驚いたような顔をしたのもつかの間、いつものようなテンションとは裏腹にトーンの低い声で俊が口を開いた。
C「今日は先生たち少ないな。やりやすそうだぜ」
S「で、俊。どうするか段取りは決めてあるんでしょうね?」
C「え?あ、う~んとだな・・・・」
S「はぁ・・・・これだから熱血バカは・・・・」
C「バ、バカとはなんだバカとは!」
A「し~!俊ちゃん静かに!あんまり大声で話したら先生に聞こえちゃうじゃない!」
C「ああ、悪い・・・・」
R「で、目的は謎のカギがあるだろう校長の机の下を探すんだろ。」
S「それはそうだけど、そのまま言ったら怪しいどころか私たち指導の対象になるかもしれないのよ」
K「だったらこういうのはどうでしょう。二手に分かれて探す組と先生の目を引き付ける組というのは?」
C「そ、そう!俺はそういう風に行こうと思ってたんだよ!さすがは健わかってるじゃないか!」
S「・・・・。まあいいわ。で、どう分かれるの?」
R「俺は探す方に行く。」
A「私も~」
C「じゃあ探す役は二人でいいか。残りの3人がこう、適当に先生の目を引く。だったよな。」
S「じゃあ私は先生に問題の質問でもしてみるわね」
K「僕はちょうど生徒会の先生がいらっしゃるので、そのことで引き付けてみます。」
C「ちょ、ちょっと俺はどうすればいいんだ?」
S「その辺に立ってればいいんじゃない?」
C「どう見ても不自然だろ!」
R「だったら自然な感じでうろついて見張りしといてくれよ」
C「お、龍それグットアイデア!よし、これで決まったな。」
S「私たちもそんなに長くは時間稼げないと思うから、できるだけ早くお願い。俊は終わったと思ったら適当に合図して。」
C「了解了解ー。それじゃあさくっとやりますか~」
S&K「失礼します」
二人が入った後、それぞれが先生についたのを俊が確認し、それに合わせて龍と彩がゆっくりと入って行った。まず彩が身軽に校長室の机の下に潜り込んだ。龍はその机の陰に隠れながら外や引き出しを探し始めた。
A「うえ~なんかここおやじ臭いよ~」
R「静かにしろ。見つかったらただじゃ済まないんだぞ。」
A「わかってるけど~」
そうこうしているうちに3分ほど経過した。と、その時、校長の机の方に一人の先生が歩いてきた。
R「まずい。相模だ。」
担任の相模がこちらに向かって歩いてくる。校長の机の前をとおって自分の席に行くのだろうが、通り過ぎる時には横目でしっかりと龍の姿が確認できるだろう。しかも龍がどけばその陰に隠れた彩も見つかってしまう。
A「やばいよ!どうする龍ちゃん!」
R「あいつが気付かないのを願うしかねえ」
二人は息をのんで丸くなった。しかし非常にも相模は足元の靴ひもを気にしながら徐々に近づいてくる。目線が下を向いているため、もう見つかることは避けられないと思われたその時、ザァー!という紙の音が職員室内に響いた。相模のいるところから校長の机を1つ隔てたあたりに書類らしき紙がバラバラになって散らばっている。そこには困惑した表情の俊がいた。相模は駆け寄って紙を拾い集めながら、同じく妙にこわばった表情の俊に話しかけた。
相「何やってんだお前?職員室なんてめったに来ないだろ?しかもぼーっと歩いて紙を散らばすなんて具合でも悪いのか?」
と皮肉ったような言葉をかけたが、俊にはほとんど届かない。変な間が空いた後に俊は我に返り、
C「え、あ、んーと、た、体育の先生から書類とってくるように頼まれてそれで探してたらこうなったというか・・・・」
必死の受け答えのようだったが、相模は平然とした様子で、
K「ふん。まあいいが。お前が手伝いとは珍しいもんだな。まあ余計に手間をかけないよう頑張れよ。」
いつもなら食って掛かるような皮肉だが、紙を拾い終えた俊の顔は安堵に満ちていた。その後机の前を通り過ぎた相模はしばらく歩いて自分の席に着きコーヒーをすすり始めた。
危うく見つかってしまうかと思ったその時、何とか相模の目をそらそうと見張りをしていた俊は声をかけ用とした。その急な行動に体が無意識に反応し、相模の方に一歩踏み出すと、制服の裾が積まれていた書類をあたりに散らばしてしまった。声を発せなかったことと、その音の衝撃で一瞬気を失いそうになった俊だったが、次に耳に届いた相模の声が自分に対するものだと分かり一安心したのである。
そのやりとりを机越しに聞いていた二人も気が気でなかったであろう。先生を説得している二人も例外ではない。難を乗り越えた5人は引き続き作業を続けようとした。その時、校長の机の上の電話が鳴った。それに反応したのは健が引き留めている生徒会の先生。健に一言かけると、立ち上がりゆっくりと電話に近づいて行った。しかしその時龍は引き出しから妙な光を目に入れた。受話器を取る生徒会の先生。上を見ながら話しているのか、二人には気が付かない。そんな状況にもかかわらず、龍は今見た光の正体を確かめるべく、ゆっくりゆっくりと引き出しを開いていった。そこには真っ白な正方形の箱。ケーキでも入っているかのような。しかしその時、弱い光を一瞬発したと思うと、次の瞬間箱は強い光を放ち、あたりを包み込んだ。思わずそこに居合わせた全員は目を覆ったが、すぐに目を開けた。その数秒の間、龍は職員室の外にいた。正しくは、その光の中、箱を持ちながら職員室の外に走ったのだった。
困惑する3人の先生と2人の生徒健と咲、そして俊と彩。合図がなくとも何かが起こったことをすぐに感じ取った4人は先生を適当にあしらうと足早に職員室の外にいる龍の元へと急いだ。
(K「ええっとじゃあ生徒会の皆さんに聞く機会があれば聞いてみます」)
今4人は玄関前の広いロビーに囲むように座っている。健はその話を簡単に聞いた後、俊からの指令を受けて聞き込みを始めた。
S「俊ったら、何も来てすぐに頼まなくてもいいのに」
C「俺はそんなつもりじゃなかったんだがなぁ。健の使命感には参ったぜ」
A「てか俊!その噂があるのはいいんだけど、その先はどうなってるの?」
C「それがわからないから健に頼んだんじゃないか。担任のあいつまで早く来るってのは何かあるにきまってる」
R「確かになぁ。いつもあの薄い頭を揺らして肩で息しながら来るあいつがな」
S「ってちょっと龍!そこにいるよ!あいつ!」
担任の相模が相変わらずの仏頂面で歩いている。こちらに気付いたようで徐々に近づいてきたが、会話は聞こえてなかったようだ。
相「おうお前ら。どうしたんだそろいもそろって。珍しいじゃないか。」
A「サガミーこそどうしちゃったの?こんなに早くから来ちゃって」
C「本当だよ。いつもギリギリなのに、お前の方が珍しいぜ。何かいいことでもあったのか?それとも何か事件でもあったとか?」
相「じ、事件!?そんなのあるわけないじゃないか!ほ、ほらもう授業始まるぞ。遅刻するなよ~」
A「ちょっ、サガミー!・・・行っちゃった。明らかに怪しくな~い?」
R「あいつは分かりやすいからな・・・」
S「とにかく何かあるってことは分かったみたいね。とりあえず昼休みの健の話を待ちましょう。」
C「そうだな。あー授業かーおっ、一時間目は体育じゃねえか?ラッキー!」
R「お前それしかねえのなー。じゃあな、またあとで」
A「じゃねーりゅうちゃーん!」
この学校ではクラスは同じでも選択の教科が分かれているため別の授業を受けることも多いのだ。話終えた4人はそれぞれの教室へと戻っていった。
先「え~であるからして・・・・じゃあ次は・・・龍!答えてみろ!」
R「・・・はい?」
先「この問題の答えだ」
R「ああ、えーと・・・32x」
先「そ、その通りだ。。。えーつまりこの数式が・・・・」
窓の外をぼーっと眺めていた龍だが、その頭の良さから、不意にあてられても大した問題ではない。だがそんなことより龍の頭にはその問題とやらがなんなのか気になっていた。もちろん俊の話していたことだ。
担任の相模の動揺っぷりは明らかにおかしい。事件?この学校で?普通では到底考えられない。この高校は区内でも大きいだけでなくいろいろなことに取り組んでいる。小学生とのふれあい活動であったり、地域のボランティアにも参加する。いたって平和な学校だ。しかもこんな地方の高校なんかより、都心の方が狙われやすいに決まっている。じゃあ何が起きているのだろうか?
たとえ名探偵でもこれだけのヒントではなかなか正解にはたどりつけないだろう。そうこうしているうちに4時間目の終了を告げるチャイムが鳴った。龍はいつもより足早に教室を後にした。
今日も小学生が来ている。この学校では当たり前の風景だ。一緒にお昼を食べたり遊んだりという光景は見慣れている。季節によっては一緒にいろんなものを作ったりもしている。そんな彼らのはしゃぐ姿を横目に、朝買ったパンを持った龍はロビーに向かった。そこには咲がいた。
S「あら龍。早いのね。」
R「・・・まだ健たちは来てないのか?」
S「来てないみたい。やっぱり気になる?俊の話のこと。」
R「ああ。何かが起きるような学校じゃないだろ。」
S「確かにねぇ。私もすこし考えてみたけど、前に一度だけ会った不審者騒動。あれくらいのものじゃない、この学校で事件と言ったら。しかもこの学校のことだもの、一度あったことには他校よりずっと神経質に対策するんだから。やっぱり何かが起きた何て考えずらいわね。」
R「俺たちには案外関係のない話かもな。先生たちの退職だったり、なにか黒いことでもしてたりとか。」
S「退職はまあ大きい話じゃないけど、黒い話なんて言ったらそれは大問題じゃない!でも汚職なんてするような人たちじゃなさそうだし・・・」
R「ああ。だからこの説も薄いとは思うんだ。俊のオーバーな話で終わればいいんだけどな」
S「全くね。あ、彩が来たわね。」
A「遅くなっちゃったー龍ちゃんももう来てたんだー」
R「ああ」
A「健くんと俊ちゃんは?」
R「まだだ」
A「ふーん、あ、あれ健君じゃない?」
ロビーから見える玄関に健らしき人が見えた。どこか俯き加減な様子に龍と咲は気が付いた。ただ事ではないのか?と。
A「健くーん、こっちこっち!」
K「あ、どうも。」
R「ああ」
S「どう?何かわかった?」
K「そ、それが、会長に聞いたら生徒会室に呼ばれまして・・・」
C「ちょっと待った~~~~!!!」
A「ふえ?あ、俊ちゃん!」
彩は上からの大声に驚き声を上げた。吹き抜けのロビーから見える、俊の姿があった。
C「ちょっと待ってろ!今からすぐに行く!」
S「相変わらず落ち着きがないというか・・・」
C「はぁ、はぁ・・・お待たせ・・・みんなはえーなぁ~。で、健どうなったんだ?」
A「それを話してるのを俊ちゃんが止めたんだよ~!」
C「俺だって聞き逃したくなかったんだよ!で、どうなったんだ?」
K「あ、はい。それで会長と話したんですが・・・」
会長「椎名、お前はこれをどう受け止める?」
K「はい?ど、どうといわれますと?」
会長「もしもこの学校で事件が起きるいや、起きているとしたら。だ。」
K「どうって・・・僕たちに止められることなら全力を尽くしますが」
会長「そうか。まあ人一倍責任感の強いお前だ。話してもいいだろう。お前も先生方の不穏な動きに気付いたのだろう?」
K「あ、いえ。知り合いの先輩方からそういう話というか、噂として聞きまして・・・」
会長「なるほど。まあそれはいい。だがどういう事件とまでは知っていないのだろう?」
K「はい。そのためわざわざ会長にお聞きしたわけでして・・・」
会長「それは分かった。だが今からいうことは私の憶測にすぎんが、それでもいいか?」
K「はい。もちろんです。軽率に言いふらしたりもしません。」
会長「さすがだな椎名。だがあくまで私個人の意見だ。そういうことにして話してもいいぞ。お前が選ぶ人間なら問題あるまい。事の始まりはごく最近、1週間前ほどのことだ。書類を提出しに職員室へ向かったんだが、どうも様子がおかしい。静かに中に入ると全員室にそろっていて校長を中心に何やら話し合っていた。よく見えなかったが何やら箱が前におかれそれに注目がおかれていることが伺えた。だがそれの話を聞く先生方の顔の引きつりよう、汗までかいている先生もいらっしゃった。ただごとではない、と感じた私はその場を後にした。後日担当の先生に軽く示唆したが、飼っているウサギがどうとか表現をぼかした発言をしたんだ。だがあの緊迫感と、先生たちの表情はそんな簡単なことではないと私は思う。何やらあの箱に秘密が隠されているらしい。新種のウイルス化、だれかのいたずらで死体が捨てられていたのか、そこまでは分からないが、それほど大きいものではなかったはずだ。まあ、単なる私の思い過ごしかもしれんがね。」
33 :元エスカル:2011/02/01(火) 10:04:20 ID:lrCF6Als
K「ということでした。僕はそのあと何も言えませんでしたが、皆さんなら何かわかりますかね?この話をしていた会長の顔は妙にこわばっていたというか、緊張した面持ちで、やはりあの箱には妙な感じがあったんだと思います。」
R「箱か・・・パンドラの箱とでも言いたいわけじゃないだろうし・・・」
A「あ!私もそれ、今思った!」
S「彩!今は真剣に話してるところよ!」
A「~~~~!」
C「なんだろうないったい。本当にペットの話で、校長の大事なペットか何かが病気でだれか直してくれ!とでもいったのかもしれねーぜ」
S「会長さんも言ってたでしょう。そんな普通な空気じゃなかったって。」
R「箱か・・・見ればわかるかも知れねえが聞いた話だけじゃあな」
C「・・・それだ!それだよ龍!学校でそういう話を先生たちがしてたってことは、今も学校にある可能性が高くないか?」
R「まあ確かにそうだが・・・探すってことか?」
C「そうだ!放課後静まったころに職員室を拝見しようぜ。5時を過ぎれば1,2人しか残らねえ。誰かがその先生と話をしているすきに校長の机をあさるってのはどうだ?」
A「面白そう~!私やるよ~!」
S「勝手に先生の机を物色するのはどうかと思うけど・・・」
C「だって咲。このままひきさがれねぇだろ?気になってるからこうやって早く来てたんだろうし~」
S「・・・まあ・・・そうだけれど」
C「だったらやろうぜ!お前はやるよな龍!」
R「ああ、このことはなんだか俺も気になるからな」
S「ちょっ、龍まで・・・」
C「よっしゃあ!で?咲はどうするんだ?」
S「みんながやるのに私だけやらないわけにはいかないでしょ!」
C「よし!決まりだな!じゃあ5時に職員室前だ!」
K「ま、待ってください!僕も参加していいでしょうか?」
C「別にいいが、お前がこういうことに参加するとは珍しいな」
K「会長の話を聞いて、ただごとじゃないと思ったんです。あと自分もこの生徒会の一員として、何かできることはというか、知っておくべきだと思ったんです!」
S「健は流石ね」
C「そういうことなら大歓迎だぜ!よしじゃあ5時作戦決行だ!」
5人はうなずき、午後の授業へと戻っていった。