「…………早ぇよ」

マンションのエントランスを開けた時点で受け入れる態勢は出来ていたんだけど。
いやもっと言えば電話を取った時点で、なんだけど。

「…来ちゃった」
笑うのを我慢するみたいに、はにかむみたいに唇をはむっと噛んで潤は俺の次の言葉を待ってる。

「『またねー!』ってこんなに早く来るもん?」

あの日LINEで送り合った『またね』を、こうも早く実行してくれることに本当はもっと素直に喜びたいのに
つい呆れたように迷惑かのように迎えてしまう。
好きな子に優しく出来ない小学生みたいだな、俺。

鍵閉めて、って意味で背後を指差すとパァって笑ってすごい速さで鍵をかける。
「もっと早く来たいくらいだったよ?でもほら翔くん忙しいし正月も帰省とか色々あるだろうからこれでも遠慮したんだけど」
急に早口になった潤は、彼にしてはカジュアルなスニーカーを乱暴に脱いで、それでもきちんと揃えて俺のあとをついてくる。

「今日も暇だった訳じゃないよ」
自分でも何の為か分からないけれど
わざとらしくテーブルに広げていた資料や台本を雑に集めてカウンターに置いた。

「そぉ?ゴメンゴメン、じゃ俺のことは気にしないで仕事していいよ」
「帰んないのかよ、ははっ」
とっくに俺の天邪鬼なんて見透かしてるお前はむしろ楽しそうに紙袋から高そうなボトルを出して。
「これ友達と飲んでめっちゃ美味かったやつ。翔くんと飲みたくて取り寄せたの」
更につまみと思われるおしゃれげな缶詰や袋がテーブルに並んでく。

「グラス。出してよ」
……潤のキレイな手に見とれてたのは、内緒。


「はい乾杯、お疲れ様〜」
軽くグラスを掲げると潤は半分くらいクッと流し込んで。
「美味しくないコレ?翔くん好きそうじゃない?」
「ん。うまいよ」

俺が好きなのは、そうやって俺の好きそうな物選んで来てくれるお前だよ。
なんて。

「どうよ毎日。何してんの?」
「色々やってますよ。もちろん休めてるし…でもなんかね、曜日感覚なくなってきたかも」
「いやちゃんと土曜は観てよ嵐背負って頑張ってんだからさぁ」
「はははっそうそう、皆のレギュラーで曜日を知るみたいな」

土曜翔くん、日曜ニノと相葉くん、月曜翔くん…ってブツブツ唱えてる。
「ZERO観たら次の日はジムだ、とかにしとけば?」
「ふふふそれいいね」

空になったグラスにまた酒を注いで、俺にも空けろと勧めてくる。
そして何故か言いづらそうに。

「……去年まではさ、収録の前の日はここに来たりウチに来たり…してた、じゃん?」
「…うん」

いつからか、恒例のように毎週お互いの家で過ごしてた。
気の置けない仲間、とでもいうのだろうか。
お互い意識せずリラックスして、でも仕事へのテンションは上がる気がして。
…………ていうのは建前だけど。


「なんか…最後怖くて聞けなかったんだけど…」
「うん」

「………いい?」
「うん?」
「これからも……来て、いい?」

どきゅん、って音がするくらい心臓にキタ。
なんだこれ。なんだこの可愛さは。
アラフォーで男でこれは反則だろ。

「…当たり前だろ」
なのに何にも動揺してない風な俺。
「毎週だよ?」
「なら曜日分かんなくなるなよ」
こんな事しか言えない俺。

「それなら分かんなくならない」
こんなに潤が嬉しい提案してくれてるのに───

「翔くんと毎週会えるなら…絶対分かんなくならない」


───分かんなくなってもいいよ。

分かんなくなったらさ、その日はとりあえず来たらいいじゃない。
そんで次の日もいたらいいじゃない。

「翔くんに会いたいから。翔くんが好きだから」

毎日毎日。

「………早ぇよ告白。先に言わせろよ」


そばにいたらいいじゃない。





☆翔さんお誕生日おめでとうございまーす!!
どうか大役を務めることになった潤くんを支えてあげてください…っ

そしてお母様、いつも産んでくれてありがとう♡