誰もいなくなった教室。

外からは野球部の声。
遠くで吹奏楽部の音。


逆にこの空間が張り詰めるほどの沈黙に包まれていることが如実に表れていた。

潤は前の席に凭れてて。

いつもの馬鹿みたいなテンションではなくずっと俯いたまま。

「あの、さ」

すごく嫌な感じがして口火を切った。

「俺予備校あるし話しがあるなら端的に済ませて欲しいんだけど」

「翔くん」
言いづらそうに潤が口を開く。

「…なんで俺のこと避けんの?」
「は?」
「昼メシ、誰と食べてんの?」

俯いてたのに潤は覚悟を決めたようにすっと俺を見据えた。

その目と、その質問に背徳感を感じて…
「誰とでもいいだろ。お前に関係ねぇじゃん」
開き直るようにそう言った。

「…いつから理科室行ってんの」
「!」

その名詞にドキッとして…うまく誤魔化すどころか明らかに狼狽えてしまう。

「何、お前」
「担任と毎日食ってんの?なんで?」

こんなの俺らしくないと思うのに…

「なんではこっちの台詞だよ。なんなんだよお前。後つけたの?
何してんだよついてくんなよ」
「だって」

つい声を荒げてしまう。
潤も感情的に被せてきて…

「だって翔くんはいつもどんどん行っちゃうじゃん。
うしろなんか、俺なんか見向きもしないで行っちゃうじゃん。
だから俺は追いかけるしかないんだよ」

「隣にいきたいのに」

「俺は翔くんと並んで歩きたいのに
翔くんはいつだって前をどんどん行っちゃうから」

潤の大きな目が、真っ直ぐに俺を捉えている目が真っ赤になって。

声が…震えてる。

「俺翔くんが好きなんだよ」