『昨日はありがとう。
今年も皆のお蔭でいい年になりそうです』

ここにいてもしょうがないと判断してタクシーを拾い、
そんなような内容のメールを旧友たちに送ると目を閉じた。

はぁ。

ため息しか出ない。

潤はどんな気持ちで俺を待ってたんだろう。

数ヶ月か数週間だか前、予約するときはワクワクしてたんだろう。
スイートルームのドアを開けて、俺が驚いて入ってくる姿を想像して笑ってたんだろう。

俺と連絡がつかない数時間を潤はどんな気持ちで過ごしたんだろう。

事故かと思ってマネージャーに連絡したのかもしれない。
俺を疑いたくなったかもしれない。


もう一度携帯を出して、家に戻るからとメールした。


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動き出した街とは逆に俺は家に帰ってく。

あー・・・洗濯しなきゃいけないんだった。
部屋も超汚いわ。
そんな現実も頭に浮かんできて、誕生日だってのに、潤と楽しく
一緒に過ごしてるはずだったのにって余計に気持ちが沈んでく。


エレベーターを降りて重い足を引き摺って。
ドアを開けると・・・明らかに俺のじゃない靴がきちんと揃えられていた。

「じゅ・・・潤?」
急いで靴を脱いでリビングに向かうと―――
テーブルの上に空のワインボトルが2本、綺麗に並べられた食器には何も乗ってなくて。
・・・すぐ横にソファで丸くなって寝てる潤がいた。

「・・・潤」
そばに寄って髪を撫でる。

涙が乾いた痕がなかったのにちょっとガッカリしたりして。

「潤?」
頬を撫でると迷惑そうに眉間に皺を寄せた。

「潤、ごめん。起きて」

怒られるの覚悟でいたのにお前は。

「ん・・・夢・・・?あぁ・・・やっと会えた」
まどろんだ目で笑った。