いつものように翔さんに後ろから抱き締めてもらいながらテレビを見る。

翔さんは俺の頭に顎を乗せたり、たまに首筋にキスして匂いを嗅いだり。

俺の身体は小さいから翔さんの腕の中にすっぽり納まって
それが翔さんには堪らなくいいらしい。

「カズは柔らかいしね」

柔らかいのが好きならオンナに行けばいいじゃん。
前にそんなことを言ったら長い説明をしてきたからそれ以来言わないことにしてる。

「ねぇねぇ松潤と何話したの?楽しかった?」

・・・また酔ってきたから甘え始めてこの人は。

「別に覚えてないようなことですよ」
「ほんとにぃ?」

「あ、何翔さんヤキモチ?」
ふざけてそう言うと翔さんは図星なのか黙っちゃうから
もうちょっと意地悪したくなって。

「じゃあもし、もし俺が潤くんとなんかあったらどうすんの?」
「えー?どうかな。殴っちゃうかな」
「まじ?どっちを?顔は商品だからやめてよ?」
「ははっそこは俺もプロですから」

翔さんが、また首筋に鼻をこすりつける。

「なんてね」

「・・・ほんとはどっちでもいいんだ」
「え?」

「カズが俺を見てなくてもいいやってたまに思うよ」

翔さんの手がぎゅって俺を強く抱きしめる。
「カズが幸せならそれが俺とじゃなくてもいいやって」

俺は何も言えなくて。
ただただテレビの中で手を叩いて笑う下品なタレントたちを見ていた。

「俺かっこよくね?」
翔さんの声がワントーン明るくなって、俺はハッとする。

「だから他に好きなやつができたら」
なのにまた優しい声で、悲しい声で。

「俺なんか捨てていいんだよ」

翔さんの顔が俺からは見えないから。

どんな表情でそんなこと言ってるの?

そんな人を捨てられるわけないじゃない。
そんな人を裏切れるわけないじゃない。

「あ、何カズ」
翔さんが俺を覗き込む。

「泣きそう?感動しちゃった?」
「泣かねぇよ。翔さんてバカだなって思っただけ」

「なんでよ?俺バカじゃねぇよ」
「バカだよ」

「翔さんは・・・すげぇバカだよ」