帰るとリビングから灯りが漏れてる。


…電気つけっぱで出てきちゃったっけ。それとも雅紀が来てる?

中に入ると俺の予想は後者が正解だったようで、
雅紀が買ってきた弁当を広げて食ってる。

「あれ、来てたの?言ってくれれば」
「おっせーよバカッ」

えっ!?

「遅れましたすいませんから入ってくるの」

え?イヤ来るとか聞いてないし仕事だったし。
とりあえず言うとおり何歩か戻ってドアを閉め、もう一度開ける。

「遅れました、すみません…」
「うん、いいよ」

ナニコレ?ちょっと笑っちゃうんだけど。

「お前さ、なんでおれが来てるかわかる?」
「え、なんで…ですか?」

この前の収録の続き?
失敗したから俺でリベンジしてんの?

「お前に会いたいからだろ!?」
「えっ?」

思わず笑っちゃって慌てて口を押さえる。

「笑ってんじゃねーよ!早く帰ってこいよ」
「ふっ、すみません気付かなくて」

あんまり設定を練ってないのか変な間がある。
雅紀らしいというか…。

「…飲む?」
飲みかけのビールをちらちらされて。

「あ、はい」
手を伸ばした瞬間「いいよおれが飲むよ!」って飲まれて。

何これほんとに。笑いを堪えるので精一杯なんだけど!

「ん」
「?」

雅紀は立ち上がると俺の頭を引き寄せて。

「…ん」

重なった唇から、生暖かいビールが流れ込む。

これは…誘ってんの?