誰よりも早く雅紀は楽屋を出て行く。


あの日、何件もの着信履歴が残ってるはずの雅紀から

何も連絡はなく、こうして仕事場で会っても俺を視界に入れようとしない。


当然・・・か。

何度もドタキャンを繰り返した挙句あの暴挙だ。

俺への気持ちがなくなっても不思議じゃない。


せめて一言謝りたいんだよ。

雅紀は悪くないって。


もう元には戻れないだろうけど・・・。

智くん出て行くとニノが続いて立ち上がる。

ああ、やっぱり二人は付き合ってるのかな。

・・・もうどうでもいいな。



「翔くん」


この時を待ってたかのように潤が近付いてきた。


「翔くん相葉さんと別れそうなの?」

潤はからかうわけでもなく、俺の横に座った。


俺はなるべく潤を見ないようにした。

「・・・うるさいよ」

「翔くんはバカだね」


しばらく無言が続く。


「・・・翔くん・・・俺じゃだめ?」


―――まだ・・・

「俺じゃニノの代わりにも、相葉さんの代わりにもなれない?」


まだお前はそんなこと俺に言えるの?

「どうしたら翔くんに好きになってもらえる?」


もうやめろよ。こんなクソみたいな男を、なんで好きでいられるんだよ?


「俺が相葉さんみたくなれば好きになってもらえるの?」


なんでそこまでお前は俺に・・・。


「俺があんな風に笑って、あんな風に真っ直ぐに―――」

「やめろよ!」


潤は泣いてた。


「お前までバカなこと言うなよ・・・」


目をぎゅっと閉じて、声を殺して潤が泣き続ける。


「俺みたいに、バカなこと考えるんじゃねぇよ」



こんな風に真っ直ぐに人を愛せたら。


「お前は・・・お前のままでいいんだよ。俺のためにバカなこと」
「翔くん・・・」


こんな風に強く人を愛することができたら。


「翔くん好きだよ。・・・すげぇ・・・好きなんだよ」


こんな風に自分が決めたことを、決めた人を、最後まで諦めずに求めることができたら。




「しょ・・・翔くん・・・?」


俺は無意識に潤を抱きしめてた。

「・・・ありがとう、潤」


「こんな俺を好きでいてくれて・・・ありがとう」

初めてお前の大きさに気付いたよ。


俺もお前みたく、どんなに拒否されてもどんな言葉を浴びせられようとも

最後まで好きな人を好きって言えるようになりたいよ。


もう誰も傷つけたくない。


好きな人を、愛し続けたい。