来てしまった。


何度電話しても雅紀の携帯は繋がらなくて。


メールなんてものに頼りたくなくてきちんと自分の言葉で

伝えないと伝わらない気がして。



雅紀の家まで・・・来てしまった。


「翔さん?」


エントランスで部屋番号を押そうと躊躇してる俺に、中から声がした。

顔をあげるとエレベーターから降りてきた奴が帽子のつばを上げた。


「ニノ・・・」



あんなに会いたいと思ってた人に、こんなところで会うなんて。


なんで?

なんで貴方がここにいるの?

雅紀といたの?

雅紀が呼んだの?

何を聞いてしまったの?


全身の血が引く気がした。


「翔さんアナタ・・・」

「ニノ、俺」

俺たちを隔ててた自動ドアが開いて。


「相葉さんに何をした?・・・俺が口出しすることじゃないけど」


やっと会えた貴方の口から、俺を批難する言葉が吐き出されようとする。


「ニノごめん俺」


やっと貴方に会えたけど・・・俺が会わなきゃいけないのは。


「ニノに説明してる暇ないんだ。俺雅紀と話さなきゃ」


俺が会いたいのは。


「相葉さんは今翔さんとは話したくないそうです」

自動ドアが、閉まる。



「アンタどうして好きな奴泣かせられるんだよ・・・?」


ニノの言葉は俺に突き刺さって。


・・・そんなの・・・。

そんなのわかんねぇよ。

だってようやくわかったんだもん。


好きなのはやっぱり雅紀だったって。

ニノじゃなくて、いつの間にか雅紀が大切だったんだって。

雅紀が俺の本当に求めてる相手だったんだって。



「・・・これ以上相葉さんを傷付けないでください」


報いさえ、中途半端なんだな。