にのは泣き止まないおれをずっと見てた。
たまに「大丈夫だよ」って言ってくれて、その言葉に安心しておれはまた泣くんだ。
「・・・にの」
「なに?」
こんなこと言ったらあなたを困らせてしまうかな。
あなたにも大切なひとがいるのに。
「・・・少しでいいんだ・・・」
「?・・・うん」
「・・・抱きしめて」
わかってる。
おれは翔ちゃんのことがショックで、にのに逃げてるだけなんだ。
いつもおれのそばにいて、絶対おれを傷つけないにのに逃げてるだけなんだ。
こんなこと言ってもきっとあなたは断らない。
「・・・相葉さん」
にのがおれの前に立つ。
涙でにじんでよく見えないけど・・・その手がちかづいてきて。
・・・にのの体はあったかかった。
おれより小さいのに包まれてるとすごく安心した。
「もう大丈夫だから」
おれはずるいよね。
このままにのがおれをすきって言ってくれたらいいなんて思ってる。
リーダーなんか忘れて、翔ちゃんからおれをうばってほしいなんて思ってる。
自分が翔ちゃんから逃げたいために。
「ありがと。・・・にのはやっぱり落ち着く・・・」
これ以上はだめだよね。
わかってる。
にのから離れて、おれはせいいっぱい笑った。
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「今日は仕事は?ごめんね寝る時間ある?」
靴を履くにのに話しかける。
「今日は完全オフです。帰ってゲームするだけですよ」
「そっか。だから昨日は帰らないであそんでたんだ?」
「大野さんとゲームしてただけです」
「へぇ・・・」
そっか。やっぱリーダーといっしょだったんだね。
それなのに・・・じゃましちゃったんだ。
「ほんとごめんね。うちで寝てってもいいよ?そしたらお礼に昼でも夜でもごちそうできるし」
「いいですよ。昨日も奢ってもらったし」
「昨日のはだって・・・」
おれと翔ちゃんが付き合えたお礼。
にのもちょっと困った顔をした。
「とにかく翔さんと話した方がいいですよ。何があったか知らないけど」
「うん・・・でも今はなんか・・・話したくないんだ」
何を言われるかこわいんだ。
聞きたくないことを聞かされそうで。
「翔ちゃんとは・・・話したくない・・・」
「相葉さん・・・」
「落ち着いたらちゃんと話すよ、翔ちゃんと。・・・あ、にのにも」
「うん」
「ありがとね」
「うん」
ドアが閉まる。
疲れた。今日は疲れたよ。
ぜんぶ夢だったらいいのに。
にののぬくもりがなくならないうちにベッドに入ろう。