ふと視線を感じて雑誌から目を離す。
「・・・なに?」
目の前に座る潤くんが頬杖を付いて俺をじっと見ていた。
「大野さんさぁ・・・翔くんとつきあってんの?」
「はっ!?」
思わず大きな声が出てしまった。
「ははっ。分かりやすいね。へぇ。いつから?」
他のメンバーが来る前にこの話を終わらせたいのか
潤くんは聞きたいことをさくさくと聞いてくる。
「いつって・・・」
「俺諦めないよ」
俺の雑誌を勝手に閉じる。
その手が伸びてきて、俺は咄嗟に手を引いた。
ふっ、と潤くんは笑った。
「大野さんじゃないよ。俺が好きなのは翔くん」
「え」
「俺と翔くん付き合ってたの。・・・聞いてない?」
どくん、と心臓が跳ねる。
次々と潤くんの口から出る言葉は一回飲み込むのに時間がかかった。
「翔くんと別れた後何人かと付き合ったけどさ、やっぱ翔くん以上の人なんていないんだよね」
飲み込む前にまた詰め込まれる。
「俺、絶対あんたから翔さん奪い返すよ」
さらにその手が伸びて。
「負けないよ。俺が一番翔くんのこと知ってるから」
そして俺の手を取ると握手して、ファンの子を一瞬で墜とすあのアイドルスマイルを見せた。
―――そういえば・・・
俺、翔ちゃんの過去なんてなんにも知らない。
翔ちゃんだっていろんな恋をしてきて当たり前なのになんにも知らなかった。
俺にもあの人がいたように、翔ちゃんにだっているんだよね。
でも関係ないやって、
そんなの今の俺たちには関係ないやって、
どうして思えないんだろう?